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利用と暗闇と
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「懐中電灯の電池無くなるなんて聞いて
ませんよ~」
洞窟の中に、麗奈の声が響く。
今回の討伐対象は洞窟に住みついていた妖。
懐中電灯で作った影で武が妖の動きを止め、
麗奈と弥琴が討伐をした。
浩太は風邪を引き熱を出したらしく、今回の
実践授業には参加していなかった。
「...どうします?山霧先輩」
遂に懐中電灯の光が消えて先が見えなく
なってしまい、弥琴が困ったように言う。
「浩太が居りゃ、飛び回ってるコウモリに
でも道を聞けたんだけどなあ...」
武はそう言いながら、悩む様子を見せる。
生憎地面は濡れている。弥琴の式神に匂いを
辿らせることは不可能なこの状況、遭難確定
かに思えた。
「あ、そうだ」
ふと、武が何かを思いついたように声を
上げる。
「先輩?」
弥琴が首を傾げると、武は携帯電話を取り
出す。
「先輩携帯持ってきてたんですね、ライト
使いましょ!」
そう麗奈が言った時、武が思いもよらない
行動に出た。
「もしもーし。ちょっと困っててさあ、
来てくんね?」
誰かに電話を掛ける武。
いや、ライト...と弥琴が呟く。
数秒後、パチッという音がして、何者かの
気配が武達の後ろに現れた。
「んだよ大将、急に呼び出してよォ」
その声に驚き、麗奈と弥琴は振り返る。
そこには、ぼんやりと光る金髪金目の男性が
立っていた。
「いやー、悪い悪い。懐中電灯使えなく
なってさあ」
振り返った武が悪いと思っていないような
笑顔で言う。
「どちら様ですか...?」
困惑気味に聞いた弥琴に、武はサラリと言った。
「ん?ああ、こいつは雷獣。俺の仲間の
妖だよ」
「妖?!」
弥琴が驚いた声を上げる。
「マジでよォ、大妖怪顎で使うの大将くらい
だぜェ?」
「大妖怪?!」
雷獣の言葉に、麗奈が驚いた声を上げる。
雷獣の発する光でぼんやりと明るくなった
視界の中、麗奈と弥琴はどういうことだと
言いたげな目で武を見る。
「夏休みに遊びに行った先で悪さしてた
から、ぶん殴って仲間にした」
「ちょっと何言ってるか分からないん
ですが…」
武の説明に、弥琴は更に困惑した表情を浮か
べる。麗奈も困惑した表情を浮かべ、弥琴に
同意するようにコクコクと頷いた。
その様子を見ていた雷獣は、大将~説明は
ちゃんとしろよォと呟いた後言った。
「大将がオレより強かったから、オレは
下についた。妖ってのはそういうもん
だからなァ」
「そういうもの、なんだ...」
麗奈が理解を諦めたような顔で呟く。
雷獣はうんうんと頷くと、武達の進んでいた
方向に向かって歩き出した。
「出口だろォ?こっちだ、案内してやるよ」
武達は雷獣の後ろに付いて歩き出す。
やがて見えてきた出口に麗奈と弥琴がほっと
して顔を見合せ笑っていると、いつの間にか
雷獣は姿を消していた。
この雷獣、武が初めて自分の力で仲間にした
妖である。
後に実家の電力源にされるなど、この時の
雷獣は思ってもみなかった。
ませんよ~」
洞窟の中に、麗奈の声が響く。
今回の討伐対象は洞窟に住みついていた妖。
懐中電灯で作った影で武が妖の動きを止め、
麗奈と弥琴が討伐をした。
浩太は風邪を引き熱を出したらしく、今回の
実践授業には参加していなかった。
「...どうします?山霧先輩」
遂に懐中電灯の光が消えて先が見えなく
なってしまい、弥琴が困ったように言う。
「浩太が居りゃ、飛び回ってるコウモリに
でも道を聞けたんだけどなあ...」
武はそう言いながら、悩む様子を見せる。
生憎地面は濡れている。弥琴の式神に匂いを
辿らせることは不可能なこの状況、遭難確定
かに思えた。
「あ、そうだ」
ふと、武が何かを思いついたように声を
上げる。
「先輩?」
弥琴が首を傾げると、武は携帯電話を取り
出す。
「先輩携帯持ってきてたんですね、ライト
使いましょ!」
そう麗奈が言った時、武が思いもよらない
行動に出た。
「もしもーし。ちょっと困っててさあ、
来てくんね?」
誰かに電話を掛ける武。
いや、ライト...と弥琴が呟く。
数秒後、パチッという音がして、何者かの
気配が武達の後ろに現れた。
「んだよ大将、急に呼び出してよォ」
その声に驚き、麗奈と弥琴は振り返る。
そこには、ぼんやりと光る金髪金目の男性が
立っていた。
「いやー、悪い悪い。懐中電灯使えなく
なってさあ」
振り返った武が悪いと思っていないような
笑顔で言う。
「どちら様ですか...?」
困惑気味に聞いた弥琴に、武はサラリと言った。
「ん?ああ、こいつは雷獣。俺の仲間の
妖だよ」
「妖?!」
弥琴が驚いた声を上げる。
「マジでよォ、大妖怪顎で使うの大将くらい
だぜェ?」
「大妖怪?!」
雷獣の言葉に、麗奈が驚いた声を上げる。
雷獣の発する光でぼんやりと明るくなった
視界の中、麗奈と弥琴はどういうことだと
言いたげな目で武を見る。
「夏休みに遊びに行った先で悪さしてた
から、ぶん殴って仲間にした」
「ちょっと何言ってるか分からないん
ですが…」
武の説明に、弥琴は更に困惑した表情を浮か
べる。麗奈も困惑した表情を浮かべ、弥琴に
同意するようにコクコクと頷いた。
その様子を見ていた雷獣は、大将~説明は
ちゃんとしろよォと呟いた後言った。
「大将がオレより強かったから、オレは
下についた。妖ってのはそういうもん
だからなァ」
「そういうもの、なんだ...」
麗奈が理解を諦めたような顔で呟く。
雷獣はうんうんと頷くと、武達の進んでいた
方向に向かって歩き出した。
「出口だろォ?こっちだ、案内してやるよ」
武達は雷獣の後ろに付いて歩き出す。
やがて見えてきた出口に麗奈と弥琴がほっと
して顔を見合せ笑っていると、いつの間にか
雷獣は姿を消していた。
この雷獣、武が初めて自分の力で仲間にした
妖である。
後に実家の電力源にされるなど、この時の
雷獣は思ってもみなかった。
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