上 下
8 / 8

利用と暗闇と

しおりを挟む
「懐中電灯の電池無くなるなんて聞いて
    ませんよ~」

洞窟の中に、麗奈の声が響く。
今回の討伐対象は洞窟に住みついていた妖。
懐中電灯で作った影で武が妖の動きを止め、
麗奈と弥琴が討伐をした。
浩太は風邪を引き熱を出したらしく、今回の
実践授業には参加していなかった。

「...どうします?山霧先輩」

遂に懐中電灯の光が消えて先が見えなく
なってしまい、弥琴が困ったように言う。

「浩太が居りゃ、飛び回ってるコウモリに
    でも道を聞けたんだけどなあ...」

武はそう言いながら、悩む様子を見せる。
生憎地面は濡れている。弥琴の式神に匂いを
辿らせることは不可能なこの状況、遭難確定
かに思えた。

「あ、そうだ」

ふと、武が何かを思いついたように声を
上げる。

「先輩?」

弥琴が首を傾げると、武は携帯電話を取り
出す。

「先輩携帯持ってきてたんですね、ライト
    使いましょ!」

そう麗奈が言った時、武が思いもよらない
行動に出た。

「もしもーし。ちょっと困っててさあ、
    来てくんね?」

誰かに電話を掛ける武。
いや、ライト...と弥琴が呟く。
数秒後、パチッという音がして、何者かの
気配が武達の後ろに現れた。

「んだよ大将、急に呼び出してよォ」

その声に驚き、麗奈と弥琴は振り返る。
そこには、ぼんやりと光る金髪金目の男性が
立っていた。

「いやー、悪い悪い。懐中電灯使えなく
    なってさあ」

振り返った武が悪いと思っていないような
笑顔で言う。

「どちら様ですか...?」

困惑気味に聞いた弥琴に、武はサラリと言った。

「ん?ああ、こいつは雷獣らいじゅう。俺の仲間の
    妖だよ」

「妖?!」

弥琴が驚いた声を上げる。

「マジでよォ、大妖怪顎で使うの大将くらい
    だぜェ?」

「大妖怪?!」

雷獣の言葉に、麗奈が驚いた声を上げる。
雷獣の発する光でぼんやりと明るくなった
視界の中、麗奈と弥琴はどういうことだと
言いたげな目で武を見る。

「夏休みに遊びに行った先で悪さしてた
    から、ぶん殴って仲間にした」

「ちょっと何言ってるか分からないん
    ですが…」

武の説明に、弥琴は更に困惑した表情を浮か
べる。麗奈も困惑した表情を浮かべ、弥琴に
同意するようにコクコクと頷いた。
その様子を見ていた雷獣は、大将~説明は
ちゃんとしろよォと呟いた後言った。

「大将がオレより強かったから、オレは
    下についた。妖ってのはそういうもん
    だからなァ」

「そういうもの、なんだ...」

麗奈が理解を諦めたような顔で呟く。
雷獣はうんうんと頷くと、武達の進んでいた
方向に向かって歩き出した。

「出口だろォ?こっちだ、案内してやるよ」

武達は雷獣の後ろに付いて歩き出す。
やがて見えてきた出口に麗奈と弥琴がほっと
して顔を見合せ笑っていると、いつの間にか
雷獣は姿を消していた。



この雷獣、武が初めて自分の力で仲間にした
妖である。
後に実家の電力源にされるなど、この時の
雷獣は思ってもみなかった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

処理中です...