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信念と友人と
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白崎 浩太という男は、クソが付くほど
真面目な、武のペアであり友人であった。
そして、学園の生徒の中で最も山霧 武を
理解している人間でもあった。
そこまでは学年中に知れ渡っている彼だが、
どうして性格が真逆と言っても過言では無い
武と友人になったのかを知っている者は
いない。
それもそのはず、浩太と武が友人となった
切っ掛けは、二人が働いた悪事だったから
である。
時は遡り、二人がまだ3年生だった頃。
1年から飛び級で3年に上がった武は、良くも
悪くも様々な噂を流されていた。そのせいか
孤立していた武と実践授業の班を組もうと
する人などおらず、担任の計らいで学級
委員長をしていた浩太と組むことになった。
暇そうにしていた4年生を捕まえどうにか
班を作った二人は、早速妖討伐に向かう。
...そう、そこまでは良かった。
「山霧、お前何をしているんだ」
浩太がそう言って地面を掘る武を見る。
『対象の妖を討伐した後、4年生がたまたま
飛び出してきた妖を殺した。』
この頃、異能力者なら当たり前と思われて
いたその行為。妖は悪であり、肩を持つなど
言語道断だった。
しかし、武はあろうことか妖の死骸を埋葬
しようとし始めたのだ。
「おい3年、置いてくぞ」
4年生がそう言って歩き出す。
「山霧、そんなもの放っておけ。置いて
いかれるぞ」
浩太がそう言うが、武は地面を掘る手を
止めない。
4年生の姿が見えなくなった後、武は
ボソリと言った。
「妖にだって、良い奴はいるんだよ」
浩太は、何を言っているんだという顔をして
武を見る。
「だが、俺達は妖を退治するためにこの学園
で学んでいるんだろう」
そう言った浩太に武は手を止めると、浩太を
見て言った。
「…そうだよ。だけどなあ、悪意のない妖
まで殺すのは絶対に間違ってる!」
「そんなことを言っていると、周りから
白い目で見られるぞ」
そう言ったのは、浩太なりの親切心だった。
武は立ち上がり、浩太の胸ぐらを掴む。
そして、浩太の顔を見て叫ぶように言った。
「知るかよそんなこと!どう思われようと、
これだけは絶対に譲らない。勿論、お前に
だってな!!」
浩太は目を見開いて武を見る。
信じられないと思うと同時に、何て強い目を
しているんだと思った。
何か文句でもあんのかと言いたげな顔をした
武の手を、浩太は静かに退ける。
「…分かった。後で怒られても知らない
からな」
浩太はそう言うとしゃがみ、武が掘っていた
部分を掘り始めた。
武は嬉しそうな顔をすると、自分もしゃがみ
浩太と地面を掘る。
「その時はお前も共犯な、白崎!」
笑顔で言った武に、浩太は困ったように
笑って言った。
「……浩太で良い」
「そっか、じゃあ俺のことも武で良いぞ!」
そう言った武に、浩太は頷いて言った。
「武、お前優しいんだな」
「別に。俺は、俺が正しいと思うことを
してるだけさ」
武は優しい笑みを浮かべ、そう言った。
武と浩太は妖を埋葬し、手を合わせる。
「悪いことしたはずなのに、何かスッキリ
したよ」
「...傍から見りゃ悪いことなんだろうな」
浩太の言葉に武はそう言うと、立ち上がって
言った。
「帰ろうぜ、浩太」
「ああ」
土だらけの手を払い、二人はそれぞれの
武器を持って歩き出す。
このことがバレないように、二人で先生への
言い訳を考えながら学園へと戻るのだった。
こうして武と浩太の間に友情が芽生えた。
彼らは後に、歴代最強のペアと呼ばれる。
適当な性格と真面目な性格。
才能による強さと努力による強さ。
認めさせたい者と認められたい者。
...正反対の彼らは、とある共通の考えを
持っていた。
『害のない妖とは仲良く』、それは後の
世代にも繋がっていくこととなる。
真面目な、武のペアであり友人であった。
そして、学園の生徒の中で最も山霧 武を
理解している人間でもあった。
そこまでは学年中に知れ渡っている彼だが、
どうして性格が真逆と言っても過言では無い
武と友人になったのかを知っている者は
いない。
それもそのはず、浩太と武が友人となった
切っ掛けは、二人が働いた悪事だったから
である。
時は遡り、二人がまだ3年生だった頃。
1年から飛び級で3年に上がった武は、良くも
悪くも様々な噂を流されていた。そのせいか
孤立していた武と実践授業の班を組もうと
する人などおらず、担任の計らいで学級
委員長をしていた浩太と組むことになった。
暇そうにしていた4年生を捕まえどうにか
班を作った二人は、早速妖討伐に向かう。
...そう、そこまでは良かった。
「山霧、お前何をしているんだ」
浩太がそう言って地面を掘る武を見る。
『対象の妖を討伐した後、4年生がたまたま
飛び出してきた妖を殺した。』
この頃、異能力者なら当たり前と思われて
いたその行為。妖は悪であり、肩を持つなど
言語道断だった。
しかし、武はあろうことか妖の死骸を埋葬
しようとし始めたのだ。
「おい3年、置いてくぞ」
4年生がそう言って歩き出す。
「山霧、そんなもの放っておけ。置いて
いかれるぞ」
浩太がそう言うが、武は地面を掘る手を
止めない。
4年生の姿が見えなくなった後、武は
ボソリと言った。
「妖にだって、良い奴はいるんだよ」
浩太は、何を言っているんだという顔をして
武を見る。
「だが、俺達は妖を退治するためにこの学園
で学んでいるんだろう」
そう言った浩太に武は手を止めると、浩太を
見て言った。
「…そうだよ。だけどなあ、悪意のない妖
まで殺すのは絶対に間違ってる!」
「そんなことを言っていると、周りから
白い目で見られるぞ」
そう言ったのは、浩太なりの親切心だった。
武は立ち上がり、浩太の胸ぐらを掴む。
そして、浩太の顔を見て叫ぶように言った。
「知るかよそんなこと!どう思われようと、
これだけは絶対に譲らない。勿論、お前に
だってな!!」
浩太は目を見開いて武を見る。
信じられないと思うと同時に、何て強い目を
しているんだと思った。
何か文句でもあんのかと言いたげな顔をした
武の手を、浩太は静かに退ける。
「…分かった。後で怒られても知らない
からな」
浩太はそう言うとしゃがみ、武が掘っていた
部分を掘り始めた。
武は嬉しそうな顔をすると、自分もしゃがみ
浩太と地面を掘る。
「その時はお前も共犯な、白崎!」
笑顔で言った武に、浩太は困ったように
笑って言った。
「……浩太で良い」
「そっか、じゃあ俺のことも武で良いぞ!」
そう言った武に、浩太は頷いて言った。
「武、お前優しいんだな」
「別に。俺は、俺が正しいと思うことを
してるだけさ」
武は優しい笑みを浮かべ、そう言った。
武と浩太は妖を埋葬し、手を合わせる。
「悪いことしたはずなのに、何かスッキリ
したよ」
「...傍から見りゃ悪いことなんだろうな」
浩太の言葉に武はそう言うと、立ち上がって
言った。
「帰ろうぜ、浩太」
「ああ」
土だらけの手を払い、二人はそれぞれの
武器を持って歩き出す。
このことがバレないように、二人で先生への
言い訳を考えながら学園へと戻るのだった。
こうして武と浩太の間に友情が芽生えた。
彼らは後に、歴代最強のペアと呼ばれる。
適当な性格と真面目な性格。
才能による強さと努力による強さ。
認めさせたい者と認められたい者。
...正反対の彼らは、とある共通の考えを
持っていた。
『害のない妖とは仲良く』、それは後の
世代にも繋がっていくこととなる。
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