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第四部
妖刀
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―――俺達は今、工房の床にずらりと並べられた妖刀を雨谷と共に眺めている。
「ずっと悩んでたんだけどさあ・・・糸繰に合いそうな妖刀、オイラには分から
なくて」
「え、あの・・・使って良いってことですか?」
雨谷の言葉に、糸繰が困惑した表情のまま言う。
「まあ、少し教えた程度であそこまで動けるなら良いんじゃない?ただ問題は、
オイラの作った妖刀の中には糸繰に合う物が無いかもしれないってことさ」
「そんなことあるんです?」
困ったように言った雨谷に、利斧が不思議そうな声を上げる。雨谷は頷くと、
しゃがんで妖刀の一つを手に取りながら言った。
「そもそも妖刀は妖が人間を殺すために作り上げたもので、妖に刃を向けることの
できる妖刀は持ち主を自らの意思で選んでいる。それは絶対覚えておいて欲しいん
だけど・・・妖刀って、気に入らない奴に使われると使用者を意地でも苦しめて
乗っ取ろうとするんだよね~」
雨谷の言葉に、場が凍り付く。
妖刀って、かなり恐ろしいものだったんだな・・・。
「《どっちつかず》だった頃は刀作りの神だったっていうのもあって、刀が何考え
てるか分かってたんだけどね~。妖に堕ちてからは、何となくしか分からなく
なっちゃってさ。気に入らない奴に使わせるのは刀が可哀そうだから、オイラが
選んだやつを渡すようにしてるんだけど・・・さっきも言った通り、今回は合う
刀が分からなくて困ってるって訳」
雨谷がそう言うと、御鈴が首を傾げて口を開く。
「糸繰に合う刀というのは、どういう物なのじゃ?」
「うーん・・・少なくとも、大人しい子達は無理だろうね。前に糸繰の目を見た
感じ、どっちかというと意思が強い子の方が合うかなーとは思うんだけど。
まあ今のオイラでも分かる程、強い意思を持った妖刀なんて・・・・・・」
雨谷はハッとした顔で言葉を止めるが、ゆるゆると首を横に振って売り物の中には
無いからね~と苦笑いを浮かべた。
「という訳で糸繰。一つ一つ手に取って構わないから、これだ!って思うものを
選んでみて。きっと妖刀側から、使ってくれって呼んでくれるはずだから」
雨谷の言葉に、糸繰は頷いて一つ一つ刀を手に取り始める。
・・・暫くして並べてあった全ての刀を手に取った糸繰は、困ったような顔で首を
傾げた。
「ない?」
「・・・すみません、分からないです」
雨谷の問いに糸繰がそう答えると、雨谷はそっか~と少し残念そうに言った。
ふと、糸繰が顔を上げて部屋の隅を見る。
「あの、雨谷様。あの刀は・・・」
糸繰が指さした先には、傘立てのような籠に入れられた刀が一振り。
「あれは非売品」
刀を視界に入れた雨谷は、声のトーンを少し下げて静かな声で言った。
「珍しいですね、貴方が刀をああやって置くなんて。普段はもっと大切に扱って
いますよね?」
利斧がそう言うと、雨谷は何も言わず利斧から顔を逸らす。
「あれも持ってみて良いですか・・・?」
糸繰はその刀がどうしても気になるようで、刀に近付きながら言う。雨谷が何も
言わないままでいると、糸繰は遠慮がちに刀に触れた。
「・・・あ」
糸繰が声を上げる。その瞬間、雨谷が弾かれたように糸繰の元へ飛び出した。
「それはっ、それは駄目なんだ!!」
大きな声で慌てたように言いながら、糸繰の腕を掴む雨谷。彼の顔は、何かに
怯えているようだった。
「落ち着きなさい、雨谷。何が駄目なんです?」
利斧がそう言って、糸繰の腕を掴んで離さない雨谷に近付く。利斧に視線を向けた
雨谷は、震える声で言った。
「だってこれは、いくら折っても、他の刀と混ぜても、ずっと煩くて・・・。
こんなのを使ったら、使用者が壊れる・・・」
「あの、この刀を持ったら凄くしっくりきちゃったんですけど、どうすれば・・・」
不安げな顔で糸繰が言う。それを聞いた雨谷は、目を見開いて糸繰の腕を掴む手を
離した。
真っ赤になった腕を擦りながら、糸繰は俺に助けを求めるような目を向ける。
「えっと・・・取り敢えず、事情だけ聞いても良いですか?」
俺がそう言うと、雨谷は利斧に視線を向ける。
「何です?」
利斧が首を傾げると、雨谷は利斧から数歩離れてボソボソと言った。
「・・・その妖刀、元は《陽煉》っていう妖刀だったんだ。名前を付けてない普通の
刀とか妖刀とかと混ぜたから、今は質も名前も全然違う刀なんだけど。陽煉は、
今のオイラにもはっきりと分かる程の強い意思を持ってて。折っても混ぜても、
意思の強さが変わらなくて・・・」
「何故そんなことをしたんですか、馬鹿刀谷!回収したら捨てるって言ってました
よね?貴方があれだけ恨みを込めて打った妖刀が、その程度でどうにかなるとでも
思っているんですか?!」
いきなり雨谷の胸ぐらを掴んだ利斧が、捲し立てるように言う。
「だっ、て。まだ戦いたい、満足してないって・・・煩くて・・・」
「妖刀の意思に応えたい、と?この扱い、貴方この妖刀を使う気がありませんよね。
自分が何をやったか、本当に分かっているんですか?答えなさい、刀谷」
震える声で紡がれた雨谷の言葉に、利斧が怒気を含んだ声で言う。雨谷は刀谷と
呼ばれたことを否定することなく、ごめん・・・と小さく呟くように言った。
「あの、大きな声が聞こえましたが・・・何かありましたか?」
そう言って、雪華が工房の中に入ってくる。そして雨谷の胸ぐらを掴んでいる
利斧を見ると、慌てて駆け寄ってきた。
「利斧様、何をしていらっしゃるのですか!」
「おや、雪華。私はただ、この馬鹿刀谷に説教をしていただけですよ」
「説教をするだけであれば、胸ぐらを掴む必要はないでしょう。雨谷様の首が
締まってしまいます、手を離してくださいませ」
雪華にそう言われ、利斧は胸ぐらを掴んでいた手を離す。ドサリと床に座り込んだ
雨谷は、ゆっくりと糸繰を見た。
「ごめん、取り乱した・・・。それ、非売品だから。命の保証は一切できないけど、
それで良いの?」
「先に謝っておきます、生意気なこと言ってすみません。これで良い、じゃないん
です。これが良いんです。雨谷様の言っていた通り、妖刀側から使ってくれって
呼ばれている気がするんです」
雨谷の言葉に、刀を手に持った糸繰は真っ直ぐな目でそう返す。
立ち上がった雨谷は、深く溜息を吐くと糸繰の頬に手を当てて目をじっと見た。
「・・・ねえ、糸繰。君は、それを使って何をしたい?」
「蒼汰の役に立ちたいです。残された時間は、自分がやりたいと思った事に
使いたい。オレは強くないけど、蒼汰の傍で、蒼汰を、兄様を最期の時まで
守りたいんです」
雨谷の問いに、糸繰はハッキリとした声で答える。少しの沈黙の後、糸繰から
数歩離れた雨谷がクスクスと笑いだした。
「あーあ、君ってマジで思考が五月蠅いよね~。ほんと・・・ククッ、面白っ・・・
あっはっはっは!!!!」
今まで抱いていた雨谷の印象が変わってしまう程に、豪快に笑う雨谷。
何が面白いのかは分からなかったが、雨谷を見た利斧と雪華は目を見開いていた。
ツボに入ってしまったのか、雨谷は暫くの間豪快に笑い続ける。ひとしきり
笑った後、彼はスッキリとしたような顔で言った。
「そうか、そうだよね、君の妖術は呪いだもんね。それじゃあ、この刀も扱え
そうだ」
「じゃあ・・・」
「うん、良いよ使っても。・・・オイラが妖に堕ちた時の痛みや苦しみ、後悔とか、
全部ごちゃ混ぜになった恨みを込めて作った刀だ。その辺の呪物よりもヤバイ呪物
みたいなものだけど・・・うるさいもの同士、仲良くしなよ~」
雨谷の言葉に、糸繰は嬉しそうな顔でお礼を言って頭を下げる。
ふと視界に入った呆けた顔で固まっている利斧と雪華を見ていると、御鈴が利斧を
つつきながら言った。
「どうした?そんなに呆けて・・・」
ハッとした顔で御鈴を見た利斧は、呆けた顔のままの雪華に声を掛ける。
雪華もハッとした顔をすると、泣きそうな笑みを浮かべて雨谷に言った。
「雨谷様、笑えるようになったのですね」
「数百年ぶりに見ましたよ、貴方の笑う顔」
利斧も続くように言うと、雨谷はきょとんとした顔で首を傾げる。クスクスと笑う
様子やヘラヘラと笑う様子は会う度に見ていた気がするが、それとは別のもの
だろうか。そんなことを考えていると、考える素振りを見せていた雨谷が柔らかな
笑みを浮かべて言った。
「オイラ、初めてここまで自分が馬鹿みたいだなんて思っちゃう奴に会ったよ。
狂ってるのに、どこまでも真っ直ぐで、ひたすらに自分以外の奴のことを
考えている。・・・思い出したくもないのに、あんな奴らとは違うんだなって
思っちゃうよね~」
「・・・貴方、結構根に持つタイプですよね」
「そんなことないよ~?」
「今の発言を思い返しなさい。凄く引き摺ってるじゃないですか、自身の信者の
こと。・・・貴方が感情を閉ざしたくらいだ。信者のこと、相当嫌いなんじゃ
ないですか?」
「大嫌いだよ、当たり前じゃん。もうオイラ神じゃないし、あいつらが死のうが
どうしようが関係ないけど~」
利斧と雨谷の会話を聞いていた糸繰が、雨谷様も信者のこと嫌いなんだ・・・と
呟く。
荒契と同じように雨谷の信者も腐っていたのだろうかなんて考えながら、俺は
ヘラヘラと笑う雨谷を見ていた。
「ずっと悩んでたんだけどさあ・・・糸繰に合いそうな妖刀、オイラには分から
なくて」
「え、あの・・・使って良いってことですか?」
雨谷の言葉に、糸繰が困惑した表情のまま言う。
「まあ、少し教えた程度であそこまで動けるなら良いんじゃない?ただ問題は、
オイラの作った妖刀の中には糸繰に合う物が無いかもしれないってことさ」
「そんなことあるんです?」
困ったように言った雨谷に、利斧が不思議そうな声を上げる。雨谷は頷くと、
しゃがんで妖刀の一つを手に取りながら言った。
「そもそも妖刀は妖が人間を殺すために作り上げたもので、妖に刃を向けることの
できる妖刀は持ち主を自らの意思で選んでいる。それは絶対覚えておいて欲しいん
だけど・・・妖刀って、気に入らない奴に使われると使用者を意地でも苦しめて
乗っ取ろうとするんだよね~」
雨谷の言葉に、場が凍り付く。
妖刀って、かなり恐ろしいものだったんだな・・・。
「《どっちつかず》だった頃は刀作りの神だったっていうのもあって、刀が何考え
てるか分かってたんだけどね~。妖に堕ちてからは、何となくしか分からなく
なっちゃってさ。気に入らない奴に使わせるのは刀が可哀そうだから、オイラが
選んだやつを渡すようにしてるんだけど・・・さっきも言った通り、今回は合う
刀が分からなくて困ってるって訳」
雨谷がそう言うと、御鈴が首を傾げて口を開く。
「糸繰に合う刀というのは、どういう物なのじゃ?」
「うーん・・・少なくとも、大人しい子達は無理だろうね。前に糸繰の目を見た
感じ、どっちかというと意思が強い子の方が合うかなーとは思うんだけど。
まあ今のオイラでも分かる程、強い意思を持った妖刀なんて・・・・・・」
雨谷はハッとした顔で言葉を止めるが、ゆるゆると首を横に振って売り物の中には
無いからね~と苦笑いを浮かべた。
「という訳で糸繰。一つ一つ手に取って構わないから、これだ!って思うものを
選んでみて。きっと妖刀側から、使ってくれって呼んでくれるはずだから」
雨谷の言葉に、糸繰は頷いて一つ一つ刀を手に取り始める。
・・・暫くして並べてあった全ての刀を手に取った糸繰は、困ったような顔で首を
傾げた。
「ない?」
「・・・すみません、分からないです」
雨谷の問いに糸繰がそう答えると、雨谷はそっか~と少し残念そうに言った。
ふと、糸繰が顔を上げて部屋の隅を見る。
「あの、雨谷様。あの刀は・・・」
糸繰が指さした先には、傘立てのような籠に入れられた刀が一振り。
「あれは非売品」
刀を視界に入れた雨谷は、声のトーンを少し下げて静かな声で言った。
「珍しいですね、貴方が刀をああやって置くなんて。普段はもっと大切に扱って
いますよね?」
利斧がそう言うと、雨谷は何も言わず利斧から顔を逸らす。
「あれも持ってみて良いですか・・・?」
糸繰はその刀がどうしても気になるようで、刀に近付きながら言う。雨谷が何も
言わないままでいると、糸繰は遠慮がちに刀に触れた。
「・・・あ」
糸繰が声を上げる。その瞬間、雨谷が弾かれたように糸繰の元へ飛び出した。
「それはっ、それは駄目なんだ!!」
大きな声で慌てたように言いながら、糸繰の腕を掴む雨谷。彼の顔は、何かに
怯えているようだった。
「落ち着きなさい、雨谷。何が駄目なんです?」
利斧がそう言って、糸繰の腕を掴んで離さない雨谷に近付く。利斧に視線を向けた
雨谷は、震える声で言った。
「だってこれは、いくら折っても、他の刀と混ぜても、ずっと煩くて・・・。
こんなのを使ったら、使用者が壊れる・・・」
「あの、この刀を持ったら凄くしっくりきちゃったんですけど、どうすれば・・・」
不安げな顔で糸繰が言う。それを聞いた雨谷は、目を見開いて糸繰の腕を掴む手を
離した。
真っ赤になった腕を擦りながら、糸繰は俺に助けを求めるような目を向ける。
「えっと・・・取り敢えず、事情だけ聞いても良いですか?」
俺がそう言うと、雨谷は利斧に視線を向ける。
「何です?」
利斧が首を傾げると、雨谷は利斧から数歩離れてボソボソと言った。
「・・・その妖刀、元は《陽煉》っていう妖刀だったんだ。名前を付けてない普通の
刀とか妖刀とかと混ぜたから、今は質も名前も全然違う刀なんだけど。陽煉は、
今のオイラにもはっきりと分かる程の強い意思を持ってて。折っても混ぜても、
意思の強さが変わらなくて・・・」
「何故そんなことをしたんですか、馬鹿刀谷!回収したら捨てるって言ってました
よね?貴方があれだけ恨みを込めて打った妖刀が、その程度でどうにかなるとでも
思っているんですか?!」
いきなり雨谷の胸ぐらを掴んだ利斧が、捲し立てるように言う。
「だっ、て。まだ戦いたい、満足してないって・・・煩くて・・・」
「妖刀の意思に応えたい、と?この扱い、貴方この妖刀を使う気がありませんよね。
自分が何をやったか、本当に分かっているんですか?答えなさい、刀谷」
震える声で紡がれた雨谷の言葉に、利斧が怒気を含んだ声で言う。雨谷は刀谷と
呼ばれたことを否定することなく、ごめん・・・と小さく呟くように言った。
「あの、大きな声が聞こえましたが・・・何かありましたか?」
そう言って、雪華が工房の中に入ってくる。そして雨谷の胸ぐらを掴んでいる
利斧を見ると、慌てて駆け寄ってきた。
「利斧様、何をしていらっしゃるのですか!」
「おや、雪華。私はただ、この馬鹿刀谷に説教をしていただけですよ」
「説教をするだけであれば、胸ぐらを掴む必要はないでしょう。雨谷様の首が
締まってしまいます、手を離してくださいませ」
雪華にそう言われ、利斧は胸ぐらを掴んでいた手を離す。ドサリと床に座り込んだ
雨谷は、ゆっくりと糸繰を見た。
「ごめん、取り乱した・・・。それ、非売品だから。命の保証は一切できないけど、
それで良いの?」
「先に謝っておきます、生意気なこと言ってすみません。これで良い、じゃないん
です。これが良いんです。雨谷様の言っていた通り、妖刀側から使ってくれって
呼ばれている気がするんです」
雨谷の言葉に、刀を手に持った糸繰は真っ直ぐな目でそう返す。
立ち上がった雨谷は、深く溜息を吐くと糸繰の頬に手を当てて目をじっと見た。
「・・・ねえ、糸繰。君は、それを使って何をしたい?」
「蒼汰の役に立ちたいです。残された時間は、自分がやりたいと思った事に
使いたい。オレは強くないけど、蒼汰の傍で、蒼汰を、兄様を最期の時まで
守りたいんです」
雨谷の問いに、糸繰はハッキリとした声で答える。少しの沈黙の後、糸繰から
数歩離れた雨谷がクスクスと笑いだした。
「あーあ、君ってマジで思考が五月蠅いよね~。ほんと・・・ククッ、面白っ・・・
あっはっはっは!!!!」
今まで抱いていた雨谷の印象が変わってしまう程に、豪快に笑う雨谷。
何が面白いのかは分からなかったが、雨谷を見た利斧と雪華は目を見開いていた。
ツボに入ってしまったのか、雨谷は暫くの間豪快に笑い続ける。ひとしきり
笑った後、彼はスッキリとしたような顔で言った。
「そうか、そうだよね、君の妖術は呪いだもんね。それじゃあ、この刀も扱え
そうだ」
「じゃあ・・・」
「うん、良いよ使っても。・・・オイラが妖に堕ちた時の痛みや苦しみ、後悔とか、
全部ごちゃ混ぜになった恨みを込めて作った刀だ。その辺の呪物よりもヤバイ呪物
みたいなものだけど・・・うるさいもの同士、仲良くしなよ~」
雨谷の言葉に、糸繰は嬉しそうな顔でお礼を言って頭を下げる。
ふと視界に入った呆けた顔で固まっている利斧と雪華を見ていると、御鈴が利斧を
つつきながら言った。
「どうした?そんなに呆けて・・・」
ハッとした顔で御鈴を見た利斧は、呆けた顔のままの雪華に声を掛ける。
雪華もハッとした顔をすると、泣きそうな笑みを浮かべて雨谷に言った。
「雨谷様、笑えるようになったのですね」
「数百年ぶりに見ましたよ、貴方の笑う顔」
利斧も続くように言うと、雨谷はきょとんとした顔で首を傾げる。クスクスと笑う
様子やヘラヘラと笑う様子は会う度に見ていた気がするが、それとは別のもの
だろうか。そんなことを考えていると、考える素振りを見せていた雨谷が柔らかな
笑みを浮かべて言った。
「オイラ、初めてここまで自分が馬鹿みたいだなんて思っちゃう奴に会ったよ。
狂ってるのに、どこまでも真っ直ぐで、ひたすらに自分以外の奴のことを
考えている。・・・思い出したくもないのに、あんな奴らとは違うんだなって
思っちゃうよね~」
「・・・貴方、結構根に持つタイプですよね」
「そんなことないよ~?」
「今の発言を思い返しなさい。凄く引き摺ってるじゃないですか、自身の信者の
こと。・・・貴方が感情を閉ざしたくらいだ。信者のこと、相当嫌いなんじゃ
ないですか?」
「大嫌いだよ、当たり前じゃん。もうオイラ神じゃないし、あいつらが死のうが
どうしようが関係ないけど~」
利斧と雨谷の会話を聞いていた糸繰が、雨谷様も信者のこと嫌いなんだ・・・と
呟く。
荒契と同じように雨谷の信者も腐っていたのだろうかなんて考えながら、俺は
ヘラヘラと笑う雨谷を見ていた。
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