神と従者

彩茸

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第三部

進路

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―――あの日から時は経ち、もうすぐ夏休み。進路について同級生達が話し合う声を
聞きつつ、自分の進路のことも考えなければと思う。
大学生活は順当にいけばあと一年あるとして、その後はどうしよう。就職・・・は、
厳しいだろうか?仕事中ずっと変化していなければいけないのはキツイし、何より
御鈴を守る余裕がなくなる気がする。

「はあ・・・」

 進路が決まらないまま迎えてしまった夏休み。思わず出た溜息に、隣で人形を
 縫っていた糸繰が手を止めて首を傾げる。

「ああいや、気にしないでくれ」

〈そう言われると気になるだろ。〉

「進路って言っても糸繰には分かんねえだろー・・・」

 そう言うと、糸繰は困ったような顔で頷いた。

「進路か・・・人間は大変じゃのう」

 何故か俺の家で寛いでいた狗神が、アイスキャンディーを噛み砕きながら言う。
 御鈴もそれに同意するように頷くと、令が言った。

「いっそのこと、卒業すると同時に失踪すれば良いんじゃないか?」

「はあ??」

 何を言っているんだ、令は。そう思っていると、カップアイスを食べていた御鈴が
 口を開く。

「神隠しということにして、妾の生まれた山に移り住むのも良いかもしれぬな。
 妾が言って良いことではないのかもしれぬが・・・人間社会で生きていくには
 不便じゃろう?その体は」

「いやまあ、変化しないと殆ど認識されないって時点で不便ではあるけどさ・・・。
 糸繰も何か言ってくれよ」

 そう言いながら糸繰を見ると、彼は悩む様子を見せる。やがてメモにペンを
 走らせると、小さく笑みを浮かべてメモを渡してきた。

〈オレは、蒼汰と一緒にいられるならそれで良い。この家でも、御鈴様の生まれた
 山でも、蒼汰の好きなようにすれば良いと思う。〉

「好きなようにって言ってもさあ・・・」

 俺は再び溜息を吐く。何か間違ったことを言っただろうかと言いたげな顔で糸繰が
 俺を見ると、狗神が言った。

「まあワシの孫も神社を継ぐまでは自由にしろと言ったら、そんなこと言われ
 ても・・・と困っておったしの。今は友人の手伝いで祓い屋の仕事に精を
 出しているようじゃが」

「誠さんも祓い屋なんですね」

「祓い屋を養成する学園に通っておったからの。山霧や日野くん達と同学年じゃよ」

 そうだったのかと驚く。道理で仲が良い訳だ。

「卒業まで、まだ一年以上ある。それまでに決めれば良かろう」

 空になったカップをゴミ箱に捨てながら御鈴は言うと、この家もただ放っておく訳
 にもいかぬしのと笑みを浮かべた。
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