神と従者

彩茸

文字の大きさ
上 下
103 / 156
第三部

遊び

しおりを挟む
―――数日後、俺達は御鈴の生まれた山で沢山の妖に囲まれていた。何だ何だと
思っていると、妖の一人が口を開く。

「御鈴様、この鬼ですよね?史蛇さんを負かしたの!」

「そうじゃが・・・」

 御鈴の声に、集まっていた妖達・・・御鈴の信者は歓声を上げる。状況が飲み
 込めていない俺達に信者達の後ろから声が掛かった。
 聞き覚えのある声にそちらを見ると、そこには一つ目の少女・・・芽々が立って
 いた。

「蒼汰さん、令くん、久しぶり!」

「あ、芽々。この前来た時会わなかったもんな、久しぶり」

 芽々の言葉にそう返すと、糸繰が首を傾げる。御鈴が糸繰に芽々を紹介すると、
 彼女はニッコリと笑みを浮かべた。

「初めまして!史蛇さんから聞いたよ、糸繰くんだよね?」

〈そうだけど、何か用か?〉

 訝しげな顔をしてそう返した糸繰に、芽々は首を横に振ると笑顔で言った。

「ちょっとお話してみたかっただけ!・・・御鈴様が神事の準備をしている間、
 一緒に遊ばない?御鈴様が良ければ、蒼汰さんと令くんも一緒に遊ぼうよ」

「妾は別に構わぬぞ。糸繰にも見せてやりたいから、神事には遅れぬようにな」

「ありがとうございます!じゃあ早速行こー!」

 御鈴の言葉に嬉しそうに言った芽々は、俺と糸繰の手を引く。俺達は顔を見合わせ
 ると、手を振る御鈴に小さく手を振り返しながら芽々に連れられて歩き出した。



―――糸繰が声を出せないと芽々は事前に知っていたらしく、声を出さずに楽しめる
遊びをずっと考えていたのだと言っていた。

「糸繰くん、体を動かすのは好き?」

 芽々のそんな問いに、糸繰は悩む素振りを見せる。

〈どの程度かによる。激しい運動は好きじゃない、体調悪くなりやすいから。〉

 少ししてそう書いたメモを渡した糸繰に、芽々はそっかあ・・・と何やら考え
 始めた。

「じゃあ鬼ごっこは良くないよね・・・うーん、そうだなあ」

〈別に、オレのことは考えなくて良いぞ?蒼汰達が楽しめれば、オレは〉

「良くないの!糸繰くんも楽しんでくれなきゃ楽しくないもん!!」

 糸繰の書きかけのメモを取り上げた芽々は、そう言って頬を膨らませる。困った
 ような顔で俺と令を見る糸繰。何か良い案はないかと考えていると、令が言った。

「水切りとかどうだ?走ったりしないし、確か近くに大きな池があっただろ」

 それだ!と芽々は声を上げる。そして付いて来て!と言うと、令と共に駆け
 出した。

「ちょっ・・・突然走るなよ!」

 俺はそう言いながら糸繰の腕を掴んで同じく駆け出す。

「・・・!!」

 口をパクパクと動かしながら慌てて足を踏み出した糸繰は、俺を見て何処か
 嬉しげな笑みを浮かべていて。
 何が嬉しいのか分からないが、糸繰が嬉しいなら良いか・・・なんて考えながら、
 木々の間から見える池を視界に入れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

僕たちは正義の味方

八洲博士
ファンタジー
都内のお手軽な行楽スポット、天狗山。そこで僕たちは神様から「義を正すための力」を託される。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

月は夜をかき抱く ―Alkaid―

深山瀬怜
ライト文芸
地球に七つの隕石が降り注いでから半世紀。隕石の影響で生まれた特殊能力の持ち主たち《ブルーム》と、特殊能力を持たない無能力者《ノーマ》たちは衝突を繰り返しながらも日常生活を送っていた。喫茶〈アルカイド〉は表向きは喫茶店だが、能力者絡みの事件を解決する調停者《トラブルシューター》の仕事もしていた。 アルカイドに新人バイトとしてやってきた瀧口星音は、そこでさまざまな事情を抱えた人たちに出会う。

木の実と少年

B.Branch
ファンタジー
木の実に転生した女の子と村の少年と愉快な仲間達のお話です。 《木の実の自己紹介》 黄金の実という万能で希少な木の実に転生。 魔力多めですが、所詮は木の実なので不自由なことだらけです。 いつか美味しいご飯を口から食べるのが夢です。 《少年の自己紹介》 父は村で自警団の隊長をしています。すごく格好いいので憧れです。 平凡に生きていたはずが、なぜか騒々しい面々と出会い平凡とは程遠くなってきました。 普通の日々を送るのが夢です。 ※楽しいお話を目指していますが、から滑り気味です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...