神と従者

彩茸

文字の大きさ
上 下
103 / 151
第三部

遊び

しおりを挟む
―――数日後、俺達は御鈴の生まれた山で沢山の妖に囲まれていた。何だ何だと
思っていると、妖の一人が口を開く。

「御鈴様、この鬼ですよね?史蛇さんを負かしたの!」

「そうじゃが・・・」

 御鈴の声に、集まっていた妖達・・・御鈴の信者は歓声を上げる。状況が飲み
 込めていない俺達に信者達の後ろから声が掛かった。
 聞き覚えのある声にそちらを見ると、そこには一つ目の少女・・・芽々が立って
 いた。

「蒼汰さん、令くん、久しぶり!」

「あ、芽々。この前来た時会わなかったもんな、久しぶり」

 芽々の言葉にそう返すと、糸繰が首を傾げる。御鈴が糸繰に芽々を紹介すると、
 彼女はニッコリと笑みを浮かべた。

「初めまして!史蛇さんから聞いたよ、糸繰くんだよね?」

〈そうだけど、何か用か?〉

 訝しげな顔をしてそう返した糸繰に、芽々は首を横に振ると笑顔で言った。

「ちょっとお話してみたかっただけ!・・・御鈴様が神事の準備をしている間、
 一緒に遊ばない?御鈴様が良ければ、蒼汰さんと令くんも一緒に遊ぼうよ」

「妾は別に構わぬぞ。糸繰にも見せてやりたいから、神事には遅れぬようにな」

「ありがとうございます!じゃあ早速行こー!」

 御鈴の言葉に嬉しそうに言った芽々は、俺と糸繰の手を引く。俺達は顔を見合わせ
 ると、手を振る御鈴に小さく手を振り返しながら芽々に連れられて歩き出した。



―――糸繰が声を出せないと芽々は事前に知っていたらしく、声を出さずに楽しめる
遊びをずっと考えていたのだと言っていた。

「糸繰くん、体を動かすのは好き?」

 芽々のそんな問いに、糸繰は悩む素振りを見せる。

〈どの程度かによる。激しい運動は好きじゃない、体調悪くなりやすいから。〉

 少ししてそう書いたメモを渡した糸繰に、芽々はそっかあ・・・と何やら考え
 始めた。

「じゃあ鬼ごっこは良くないよね・・・うーん、そうだなあ」

〈別に、オレのことは考えなくて良いぞ?蒼汰達が楽しめれば、オレは〉

「良くないの!糸繰くんも楽しんでくれなきゃ楽しくないもん!!」

 糸繰の書きかけのメモを取り上げた芽々は、そう言って頬を膨らませる。困った
 ような顔で俺と令を見る糸繰。何か良い案はないかと考えていると、令が言った。

「水切りとかどうだ?走ったりしないし、確か近くに大きな池があっただろ」

 それだ!と芽々は声を上げる。そして付いて来て!と言うと、令と共に駆け
 出した。

「ちょっ・・・突然走るなよ!」

 俺はそう言いながら糸繰の腕を掴んで同じく駆け出す。

「・・・!!」

 口をパクパクと動かしながら慌てて足を踏み出した糸繰は、俺を見て何処か
 嬉しげな笑みを浮かべていて。
 何が嬉しいのか分からないが、糸繰が嬉しいなら良いか・・・なんて考えながら、
 木々の間から見える池を視界に入れていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...