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第三部
遊び
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―――数日後、俺達は御鈴の生まれた山で沢山の妖に囲まれていた。何だ何だと
思っていると、妖の一人が口を開く。
「御鈴様、この鬼ですよね?史蛇さんを負かしたの!」
「そうじゃが・・・」
御鈴の声に、集まっていた妖達・・・御鈴の信者は歓声を上げる。状況が飲み
込めていない俺達に信者達の後ろから声が掛かった。
聞き覚えのある声にそちらを見ると、そこには一つ目の少女・・・芽々が立って
いた。
「蒼汰さん、令くん、久しぶり!」
「あ、芽々。この前来た時会わなかったもんな、久しぶり」
芽々の言葉にそう返すと、糸繰が首を傾げる。御鈴が糸繰に芽々を紹介すると、
彼女はニッコリと笑みを浮かべた。
「初めまして!史蛇さんから聞いたよ、糸繰くんだよね?」
〈そうだけど、何か用か?〉
訝しげな顔をしてそう返した糸繰に、芽々は首を横に振ると笑顔で言った。
「ちょっとお話してみたかっただけ!・・・御鈴様が神事の準備をしている間、
一緒に遊ばない?御鈴様が良ければ、蒼汰さんと令くんも一緒に遊ぼうよ」
「妾は別に構わぬぞ。糸繰にも見せてやりたいから、神事には遅れぬようにな」
「ありがとうございます!じゃあ早速行こー!」
御鈴の言葉に嬉しそうに言った芽々は、俺と糸繰の手を引く。俺達は顔を見合わせ
ると、手を振る御鈴に小さく手を振り返しながら芽々に連れられて歩き出した。
―――糸繰が声を出せないと芽々は事前に知っていたらしく、声を出さずに楽しめる
遊びをずっと考えていたのだと言っていた。
「糸繰くん、体を動かすのは好き?」
芽々のそんな問いに、糸繰は悩む素振りを見せる。
〈どの程度かによる。激しい運動は好きじゃない、体調悪くなりやすいから。〉
少ししてそう書いたメモを渡した糸繰に、芽々はそっかあ・・・と何やら考え
始めた。
「じゃあ鬼ごっこは良くないよね・・・うーん、そうだなあ」
〈別に、オレのことは考えなくて良いぞ?蒼汰達が楽しめれば、オレは〉
「良くないの!糸繰くんも楽しんでくれなきゃ楽しくないもん!!」
糸繰の書きかけのメモを取り上げた芽々は、そう言って頬を膨らませる。困った
ような顔で俺と令を見る糸繰。何か良い案はないかと考えていると、令が言った。
「水切りとかどうだ?走ったりしないし、確か近くに大きな池があっただろ」
それだ!と芽々は声を上げる。そして付いて来て!と言うと、令と共に駆け
出した。
「ちょっ・・・突然走るなよ!」
俺はそう言いながら糸繰の腕を掴んで同じく駆け出す。
「・・・!!」
口をパクパクと動かしながら慌てて足を踏み出した糸繰は、俺を見て何処か
嬉しげな笑みを浮かべていて。
何が嬉しいのか分からないが、糸繰が嬉しいなら良いか・・・なんて考えながら、
木々の間から見える池を視界に入れていた。
思っていると、妖の一人が口を開く。
「御鈴様、この鬼ですよね?史蛇さんを負かしたの!」
「そうじゃが・・・」
御鈴の声に、集まっていた妖達・・・御鈴の信者は歓声を上げる。状況が飲み
込めていない俺達に信者達の後ろから声が掛かった。
聞き覚えのある声にそちらを見ると、そこには一つ目の少女・・・芽々が立って
いた。
「蒼汰さん、令くん、久しぶり!」
「あ、芽々。この前来た時会わなかったもんな、久しぶり」
芽々の言葉にそう返すと、糸繰が首を傾げる。御鈴が糸繰に芽々を紹介すると、
彼女はニッコリと笑みを浮かべた。
「初めまして!史蛇さんから聞いたよ、糸繰くんだよね?」
〈そうだけど、何か用か?〉
訝しげな顔をしてそう返した糸繰に、芽々は首を横に振ると笑顔で言った。
「ちょっとお話してみたかっただけ!・・・御鈴様が神事の準備をしている間、
一緒に遊ばない?御鈴様が良ければ、蒼汰さんと令くんも一緒に遊ぼうよ」
「妾は別に構わぬぞ。糸繰にも見せてやりたいから、神事には遅れぬようにな」
「ありがとうございます!じゃあ早速行こー!」
御鈴の言葉に嬉しそうに言った芽々は、俺と糸繰の手を引く。俺達は顔を見合わせ
ると、手を振る御鈴に小さく手を振り返しながら芽々に連れられて歩き出した。
―――糸繰が声を出せないと芽々は事前に知っていたらしく、声を出さずに楽しめる
遊びをずっと考えていたのだと言っていた。
「糸繰くん、体を動かすのは好き?」
芽々のそんな問いに、糸繰は悩む素振りを見せる。
〈どの程度かによる。激しい運動は好きじゃない、体調悪くなりやすいから。〉
少ししてそう書いたメモを渡した糸繰に、芽々はそっかあ・・・と何やら考え
始めた。
「じゃあ鬼ごっこは良くないよね・・・うーん、そうだなあ」
〈別に、オレのことは考えなくて良いぞ?蒼汰達が楽しめれば、オレは〉
「良くないの!糸繰くんも楽しんでくれなきゃ楽しくないもん!!」
糸繰の書きかけのメモを取り上げた芽々は、そう言って頬を膨らませる。困った
ような顔で俺と令を見る糸繰。何か良い案はないかと考えていると、令が言った。
「水切りとかどうだ?走ったりしないし、確か近くに大きな池があっただろ」
それだ!と芽々は声を上げる。そして付いて来て!と言うと、令と共に駆け
出した。
「ちょっ・・・突然走るなよ!」
俺はそう言いながら糸繰の腕を掴んで同じく駆け出す。
「・・・!!」
口をパクパクと動かしながら慌てて足を踏み出した糸繰は、俺を見て何処か
嬉しげな笑みを浮かべていて。
何が嬉しいのか分からないが、糸繰が嬉しいなら良いか・・・なんて考えながら、
木々の間から見える池を視界に入れていた。
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