神と従者

彩茸

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第四部

迎え

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―――それから時が経ち、春休み初日。
忘れられたと思っていたが、圭梧や晴樹さんはちゃんと連絡してくれていた
らしい。

「久しぶりー!」

 そう言って笑った天春は、眠そうに欠伸をしている晴樹さんを見る。

「眠そうだね、はる

「当たり前じゃん、夜通し妖探してたんだよ・・・?」

 天春の言葉にそう答えた晴樹さん。それに対し天春が見つかったの?と聞くと、
 晴樹さんはゆるゆると首を横に振って答えた。

「駄目だった。静兄しずにいと手分けして探してたけど、痕跡もさっぱり。落魅にも頼もう
 かと思ってたけど・・・」

 そこまで言うと、晴樹さんは耐えきれなかったように大きく欠伸をする。

「流石に、一回寝る・・・」

 明らかに眠そうな顔でそう言った晴樹さんは、俺達を見た。

「落魅、ちょっと素直じゃないけど良い奴だから。仲良くしてあげて」

 そう言った晴樹さんは、先に失礼するね・・・とフラフラした足取りで家に帰って
 いく。

「あの、ありがとうございました!」

 晴樹さんの背中に向かって大きめの声で言う。振り返った晴樹さんは、優しい
 笑みで手を振り去っていった。
 ・・・晴樹さんの姿が見えなくなると、心配そうな顔をしていた天春は俺達を見て
 笑みを浮かべる。

「よし、いこっか!」

 天春の言葉に頷き、俺達は彼の傍に寄る。突如吹いた暴風に目を閉じると、
 ふわりとした浮遊感の後に到着!という声が聞こえた。
 目を開けると、目の前にはお堂が。周りを見ると霧が立ち込めており、ここが
 霧ヶ山のお堂かと思う。

「一瞬じゃったの!」

「あの浮遊感、ボクは苦手だ・・・」

 テンションの上がっている御鈴に、嫌そうな顔をしている令。糸繰はどうだろうと
 見ると、俯いて俺の服の裾をぎゅっと掴んでいた。

〈ちょっと、酔った。〉

「ええ・・・」

 糸繰の渡してきたメモを見てそう言うと、メモを覗き込んできた天春が苦笑いを
 浮かべる。

「ごめんね糸繰、もうちょっと優しくすれば良かったかも」

 天春の言葉に〈気にしないで良い。〉と書いたメモを渡した糸繰は、早く行こうと
 言いたげにお堂を指さして俺を見る。

「鬼が何の用ダ」

 そんな時、後ろから男性の声が聞こえて振り返る。そこに居たのは目も口も鼻も
 ない、着物を着た妖だった。

「あ、のっぺらぼう。おかえり~」

 天春がそう言って笑みをうかべる。のっぺらぼう・・・ああ、本で見たやつだ。
 そう思いながらのっぺらぼうを見ていると、彼は俺を見る。
 何だか睨まれている気がして目を逸らすと、天春が言った。

「ほら、この前話したでしょ?僕が巡回中に偶然会った神様達。それがこの子達
 だよ!」

「ああ、あノ・・・」

 のっぺらぼうは何処か納得した様子で俺達の横を通り抜け、お堂の扉を開けて
 中へ入る。

「僕達も入ろうか」

 そう言った天春の後ろについて、俺達もお堂の中へ足を踏み入れた。
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