神と従者

彩茸

文字の大きさ
上 下
64 / 161
第二部

蹂躙

しおりを挟む
「え? 何やそれ。もしかして、彼氏にやられたん?」
「大した事ないんです。彼、カッとなると周りが見えなくなっちゃって。腕掴まれて、たまたまテーブルの角にぶつけて。でもその後ちゃんと謝ってくれて、私の事手当してくれたんです」
「はぁ?」

 莉奈は捲っていた服を元に戻した。

「他の男の事、ニコニコしながら話すなって怒られて。彼氏、今年に入ってから、大学やバイトで忙しくてストレス溜まってるみたいで。私も気を付けてはいるんですけど、どうやったら彼氏の機嫌を損ねずに付き合って行けるのかなーって思って、ちょっと悩んじゃって」
「そういう怪我って、これが初めてなん?」

 莉奈は笑ったまま何も言わなかったから、察した。
 たまたまぶつけたって言ってるけど、これってDVってやつ?
 暴力振る側は、だいたいあとから優しくなってもうしないと言うから、振るわれた方はそれを信じて何度されても許してしまうとネットに書いてあった。
 俺は目を細めて莉奈を見る。

「……その彼氏、莉奈のスマホチェックとかしとるんやないやろうな?」
「してますよ! なんで分かるんですか?」

 俺は無言でアイスコーヒーを啜ってからはっきりと告げた。

「あんなぁ莉奈。そんな彼氏もう別れた方がええで?」

 莉奈はそれを聞いた途端、目を見開いて反論した。

「えっ! な、なんでですか。私凄く好きなんですよ、彼氏の事! たまにキレちゃうのは嫌だなって思う時もありますけど、それ以外は本当に優しくていい人なんですよ! どうやって気を付けていったらいいかのアドバイスをくださいよ」
「気を付けるも何も、いくら恋人でも人のスマホチェックなんかせーへんで? それにそんな怪我、今回が初めてやないんやろ? そんなんおかしいで。気に入らん事あるからって暴力振るう男なんて、ろくな男じゃあらへんよ……」
「ゆきちゃんを悪く言わないでください!」

 莉奈がテーブルを叩くと、その場にいた莉奈以外の人は全員息を呑んだ。
 莉奈はハッとして、恥ずかしそうに背中を丸めてストローに口を付けていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

従者は永遠(とわ)の誓いを立てる

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
グレイス=アフレイドは男爵家の一人娘で、もうすぐ十六歳。 傍にはいつも、小さい頃から仕えてくれていた、フレン=グリーティアという従者がいた。 グレイスは数年前から彼にほんのり恋心を覚えていた。 ある日グレイスは父から、伯爵家の次男・ダージル=オーランジュという人物と婚約を結ぶのだと告げられる。 突然の結婚の話にグレイスは戸惑い悩むが、フレンが「ひとつだけ変わらないことがある」「わたくしはいつでもお嬢様のお傍に」と誓ってくれる。 グレイスの心は恋心と婚約の間で揺れ動いて……。 【第三回 ビーズログ小説大賞】一次選考通過作品 エブリスタにて特集掲載

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

聖獣達に愛された子

颯希
ファンタジー
ある日、漆黒の森の前に子供が捨てられた。 普通の森ならばその子供は死ぬがその森は普通ではなかった。その森は..... 捨て子の生き様を描いています!! 興味を持った人はぜひ読んで見て下さい!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病弱な第四皇子は屈強な皇帝となって、兎耳宮廷薬師に求愛する

藤原 秋
恋愛
大規模な自然災害により絶滅寸前となった兎耳族の生き残りは、大帝国の皇帝の計らいにより宮廷で保護という名目の軟禁下に置かれている。 彼らは宮廷内の仕事に従事しながら、一切の外出を許可されず、婚姻は同族間のみと定義づけられ、宮廷内の籠の鳥と化していた。 そんな中、宮廷薬師となった兎耳族のユーファは、帝国に滅ぼされたアズール王国の王子で今は皇宮の側用人となったスレンツェと共に、生まれつき病弱で両親から次期皇帝候補になることはないと見限られた五歳の第四皇子フラムアーク付きとなり、皇子という地位にありながら冷遇された彼を献身的に支えてきた。 フラムアークはユーファに懐き、スレンツェを慕い、成長と共に少しずつ丈夫になっていく。 だがそれは、彼が現実という名の壁に直面し、自らの境遇に立ち向かっていかねばならないことを意味していた―――。 柔和な性格ながら確たる覚悟を内に秘め、男としての牙を隠す第四皇子と、高潔で侠気に富み、自らの過去と戦いながら彼を補佐する亡国の王子、彼らの心の支えとなり、国の制約と湧き起こる感情の狭間で葛藤する亜人の宮廷薬師。 三者三様の立ち位置にある彼らが手を携え合い、ひとつひとつ困難を乗り越えて掴み取る、思慕と軌跡の逆転劇。

処理中です...