神と従者

彩茸

文字の大きさ
上 下
57 / 156
第二部

犬猿

しおりを挟む
―――いつの間にかやって来ていた狗神に、宇迦と御魂が俺の状況を説明する。
由紀が美咲の紹介を済ませた後、狗神は俺を見た。

「お主、会う度にニオイが変わっておるの。まるで別人じゃ」

「令にも似たようなこと言われましたよ・・・」

 そんな言葉を交わした後、狗神は少し悩む様子を見せる。

「変化の方法と言われても、ワシも感覚でやっておるからの・・・。学んで変化
 できるようになった者に聞いた方が分かりやすいじゃろう」

「えっと・・・?」

 狗神の言葉につまりどういうことだろうと思っていると、彼は少し間を置いて
 口を開いた。

「・・・真悟に頼むのが一番じゃろうな」

「なら、早速・・・!」

 目を輝かせた御鈴に、狗神は何とも言えない顔をする。令と御鈴が首を傾げると、
 狗神はボソッと呟いた。

「まあ、手取り足取り教えてくれるとは限らんがの」



―――話は通してやると言った狗神にお礼を言い、いつ行こうかという話になる。
変化は一日やそこらでできるものではないらしく、何度か通うことになりそうだ。
話が大方纏まった頃、男性二人の話し声が聞こえる。一人は静也さんっぽい声なの
だが・・・もう一人は誰だろうか。

「あ、お父さん達帰ってきた!」

 由紀が嬉しそうな顔で言う。

「今日は喧嘩してないかな?」

 美咲がそう言って心配そうな顔をする。
 段々と近付いてくる静也さんともう一人の男性の声は、互いに不機嫌そうで。

「お前、いつになったら突っ込むのやめるんだよ」

「お前もいつになったら周りが見えるようになるんだよ」

 静也さんの言葉に男性がそう返す。

「ほんっと変わんねえな、山霧」

「うるせえ、山野にだけは言われたくねえ」

 男性の言葉に静也さんがそう返す。
 やがて階段を上がってきた静也さんと男性は、互いに頬を怪我していた。

「お父さん、どうしたのその怪我!」

「お父さん、大丈夫?」

 由紀と美咲がそう言いながら静也さんと男性に駆け寄る。
 静也さんは由紀の頭を撫で、男性は美咲の肩に手を置いて同時に言った。

「大丈夫、怪我させてきたのこいつだから」

 一言一句違わず同じ言葉を言った静也さんと男性・・・おそらく山野さんは、
 互いに睨み合う。

「お父さんも美咲ちゃんのお父さんも、何でそんなに仲悪いの・・・」

「私達こんなに仲良いのに・・・」

 由紀と美咲がそう言って呆れた顔をすると、山野さんは言った。

「学生の頃からこいつとは考えが合わないんだよ」

「卒業すれば縁切れると思ったのに、何故かよく一緒に仕事させられるし・・・」

 静也さんがそう言って溜息を吐く。

「でも息ピッタリなんでしょ?学校の先生が、《最強》並みに強い組み合わせって
 言ってたよ」

「あ、確かに言ってた!・・・まあ、頼むとき最初は必ず断られるらしいとも
 言ってたけど」

 由紀と美咲の言葉に、静也さんと山野さんは顔を見合わせる。そして、また同時に
 言った。

「当り前だろ、こいつと仕事したくねえもん」

「あ?」

「んだよ」

 再び睨み合った二人に、由紀と美咲が深い溜息を吐く。

「腐れ縁・・・というやつかの?」

 御鈴が困惑した顔で、小さくボソリと呟いた。



―――美咲を連れ山野さんが帰った後、静也さんが俺を見て苦笑いを浮かべる。

「ごめん、遅れたけど・・・いらっしゃい」

「あ、えっと・・・お邪魔してます」

 静也さんの言葉にそう返し、ペコリと頭を下げる。

「あの山野とかいう男、ワシらが見えておるのか見えておらんのか・・・」

 狗神がそう言うと、静也さんは笑みを浮かべて言った。

「ああ、あいつ見えてるよ。見えてる上で無視してる」

「え、そうだったんですか?」

 一度もこっち見なかったぞ・・・?なんて考えながら俺が言うと、静也さんは
 うんと頷いた。

「関わったら面倒ごとに巻き込んでくるだろ、だってさ。俺の知り合いっぽい奴は、
 妖だろうが神様だろうが全員無視してるらしい」

「全員って・・・」

 令が言うと、由紀が苦笑いを浮かべて言った。

「美咲ちゃんのお父さん、お父さんとか叔父さんの知り合いには悪い奴がいないって
 分かってるみたいで。妖嫌いだけど、その辺は許容してるらしいって美咲ちゃんが
 言ってた」

「それ考えると、大分丸くなってんなあいつ・・・」

 由紀の言葉に、静也さんはそうボソッと呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

月は夜をかき抱く ―Alkaid―

深山瀬怜
ライト文芸
地球に七つの隕石が降り注いでから半世紀。隕石の影響で生まれた特殊能力の持ち主たち《ブルーム》と、特殊能力を持たない無能力者《ノーマ》たちは衝突を繰り返しながらも日常生活を送っていた。喫茶〈アルカイド〉は表向きは喫茶店だが、能力者絡みの事件を解決する調停者《トラブルシューター》の仕事もしていた。 アルカイドに新人バイトとしてやってきた瀧口星音は、そこでさまざまな事情を抱えた人たちに出会う。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...