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第二部
帰郷
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―――あれから少し経ち、もうすぐ五月というある日の夜。寝ようとしていると
御鈴が部屋に入ってきた。
「御鈴?寝たんじゃなかったのか」
「蒼汰、明日休みじゃろう?ちょっと言っておかねばならぬことがあっての」
御鈴はベッドに上がると俺に寄り掛かるようにして座る。
何だ何だと思っていると、御鈴は口を開いた。
「前、神は年一で神事と呼ばれる大仕事があるという話を聞いたのを覚えておる
かの。・・・それがな、明日なんじゃ」
「晩春にやるって言ってたっけ」
俺の言葉に御鈴は頷く。それでのと俺を見た御鈴は、少し遠慮がちに言った。
「できれば・・・で良いんじゃが、蒼汰にも来てほしくての。妾の信者に蒼汰の事も
紹介せねばならぬし・・・」
「御鈴が来てほしいなら、勿論行くけど」
そう答えると、本当か?!と御鈴は嬉しそうな顔をする。
「じゃあ明日の朝、日が昇る頃に出発するぞ!」
「出発って・・・何処に?」
御鈴の言葉にそう聞くと、御鈴は俺に抱き着きながら言った。
「妾の生まれた山じゃ!」
―――次の日、いつもより少しだけ早く起きる。朝食を食べ、御鈴に連れられて俺と
御鈴が出会った山へ。てっきりここが御鈴の生まれた山なのだと思っていたが、
どうやら違ったらしい。
御鈴の信者だという大きな鳥のような妖の背に乗せてもらい、空を飛ぶ。安全装置も
何もない空の旅は少し怖かったが、何事もなく家から遠く離れた山へと降り立った。
「ここが妾の生まれた山じゃ!妾の信者の大半がここに住んでおる」
御鈴がピョンピョンと跳ねると、俺の肩の上に乗っていた令が言った。
「にゃんか妖気が濃いな、この山」
その言葉に、俺達を乗せてくれた鳥の妖がピッと鳴く。まるで同意しているかの
ようなその鳴き声に、思わず笑ってしまった。
「御鈴様、お戻りになられましたか!」
突然後ろから声が聞こえ、驚いて振り返る。そこには顔が蛇、体が人間の妖が
立っており、御鈴はその妖を見て言った。
「おお、昨年ぶりじゃの史蛇!」
妖・・史蛇は俺を見ると、目を細めて舌をチョロチョロと出す。
「・・・誰です?この人間とも神ともつかないニオイの輩は」
「こ奴は蒼汰、妾の従者になった者じゃ」
史蛇の問いに御鈴が答えると、史蛇は俺に近付いてくる。
何となく嫌な予感がして一歩下がった瞬間、史蛇が俺に向かって襲い掛かって
きた。
『柏木!』
慌てて柏木を出し、史蛇の攻撃を受け止める。史蛇はほう・・・と感心したような
声を上げると、俺から離れて言った。
「人間のくせに良い瞬発力だ。・・・蒼汰といったな、我は史蛇。御鈴様が不在の
間、この山の管理を任されている者だ」
「史蛇は妾の信者の中でも1、2を争う実力者での。普段はこの山に住む妾の信者の
まとめ役になってくれておる」
御鈴がそう言うと、史蛇は頷く。
「・・・思ったんだけど、神って自分の領域とかあるんだろ?ここがその領域なら、
御鈴は領域を放置してるってことにならないか?」
「貴様、御鈴様を呼び捨てにするなど・・・!」
俺の言葉に史蛇はそう言って俺を睨む。
妾が許可しておると御鈴は史蛇を宥めると、苦笑いを浮かべて言った。
「自分で言うのもあれだが、妾は好奇心旺盛での。領域外の事も知りたいと、自ら
飛び出したのじゃ。そのおかげで蒼汰と出会い、楽しい日々を送ることができて
おる!」
「御鈴様に留守を頼まれたからには、全身全霊を掛けてこの山にいる信者を守って
みせましょう」
史蛇はそう言うと、御鈴に向けてニッコリと笑う。
「・・・蒼汰より従者っぽいな」
令がそんな史蛇を見て、ボソリと呟いていた。
御鈴が部屋に入ってきた。
「御鈴?寝たんじゃなかったのか」
「蒼汰、明日休みじゃろう?ちょっと言っておかねばならぬことがあっての」
御鈴はベッドに上がると俺に寄り掛かるようにして座る。
何だ何だと思っていると、御鈴は口を開いた。
「前、神は年一で神事と呼ばれる大仕事があるという話を聞いたのを覚えておる
かの。・・・それがな、明日なんじゃ」
「晩春にやるって言ってたっけ」
俺の言葉に御鈴は頷く。それでのと俺を見た御鈴は、少し遠慮がちに言った。
「できれば・・・で良いんじゃが、蒼汰にも来てほしくての。妾の信者に蒼汰の事も
紹介せねばならぬし・・・」
「御鈴が来てほしいなら、勿論行くけど」
そう答えると、本当か?!と御鈴は嬉しそうな顔をする。
「じゃあ明日の朝、日が昇る頃に出発するぞ!」
「出発って・・・何処に?」
御鈴の言葉にそう聞くと、御鈴は俺に抱き着きながら言った。
「妾の生まれた山じゃ!」
―――次の日、いつもより少しだけ早く起きる。朝食を食べ、御鈴に連れられて俺と
御鈴が出会った山へ。てっきりここが御鈴の生まれた山なのだと思っていたが、
どうやら違ったらしい。
御鈴の信者だという大きな鳥のような妖の背に乗せてもらい、空を飛ぶ。安全装置も
何もない空の旅は少し怖かったが、何事もなく家から遠く離れた山へと降り立った。
「ここが妾の生まれた山じゃ!妾の信者の大半がここに住んでおる」
御鈴がピョンピョンと跳ねると、俺の肩の上に乗っていた令が言った。
「にゃんか妖気が濃いな、この山」
その言葉に、俺達を乗せてくれた鳥の妖がピッと鳴く。まるで同意しているかの
ようなその鳴き声に、思わず笑ってしまった。
「御鈴様、お戻りになられましたか!」
突然後ろから声が聞こえ、驚いて振り返る。そこには顔が蛇、体が人間の妖が
立っており、御鈴はその妖を見て言った。
「おお、昨年ぶりじゃの史蛇!」
妖・・史蛇は俺を見ると、目を細めて舌をチョロチョロと出す。
「・・・誰です?この人間とも神ともつかないニオイの輩は」
「こ奴は蒼汰、妾の従者になった者じゃ」
史蛇の問いに御鈴が答えると、史蛇は俺に近付いてくる。
何となく嫌な予感がして一歩下がった瞬間、史蛇が俺に向かって襲い掛かって
きた。
『柏木!』
慌てて柏木を出し、史蛇の攻撃を受け止める。史蛇はほう・・・と感心したような
声を上げると、俺から離れて言った。
「人間のくせに良い瞬発力だ。・・・蒼汰といったな、我は史蛇。御鈴様が不在の
間、この山の管理を任されている者だ」
「史蛇は妾の信者の中でも1、2を争う実力者での。普段はこの山に住む妾の信者の
まとめ役になってくれておる」
御鈴がそう言うと、史蛇は頷く。
「・・・思ったんだけど、神って自分の領域とかあるんだろ?ここがその領域なら、
御鈴は領域を放置してるってことにならないか?」
「貴様、御鈴様を呼び捨てにするなど・・・!」
俺の言葉に史蛇はそう言って俺を睨む。
妾が許可しておると御鈴は史蛇を宥めると、苦笑いを浮かべて言った。
「自分で言うのもあれだが、妾は好奇心旺盛での。領域外の事も知りたいと、自ら
飛び出したのじゃ。そのおかげで蒼汰と出会い、楽しい日々を送ることができて
おる!」
「御鈴様に留守を頼まれたからには、全身全霊を掛けてこの山にいる信者を守って
みせましょう」
史蛇はそう言うと、御鈴に向けてニッコリと笑う。
「・・・蒼汰より従者っぽいな」
令がそんな史蛇を見て、ボソリと呟いていた。
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