神と従者

彩茸

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第二部

解熱

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―――目を開ける。ここは・・・俺の部屋か。
びっしょりと汗をかいた体に、ブルリと身を震わせる。部屋の中は薄暗く、窓に
当たる雨の音が聞こえた。

「蒼汰・・・?」

 御鈴の声が聞こえ、そちらに顔を向ける。・・・ああそうだ、思い出した。
 夢の中のあの少女は御鈴だ。
 俺の手を握り心配そうな顔で俺を見る御鈴に、おはようと笑みを向ける。

「やっと起きたか」

 呆れたような声が足元から聞こえ、起き上がってそちらを見る。そこには毛繕いを
 しながら俺を見る、令の姿があった。

うなされておったが・・・大丈夫か?」

 御鈴がそう言いながらベッドに上がってくる。

「大丈夫。・・・ちょっと、変な夢見てさ」

 そう言うと、御鈴は俺の頭を優しく撫でながら言った。

「そうか。・・・食事は作ってあるが、どうする?食べられるか?」

 頷くと、じゃあ持って来るなと御鈴は部屋を出て行く。
 ふと自分の母親の姿が目に浮かぶ。風邪を引いた時にたまたま帰国していた
 母親と、御鈴の姿が何となく重なっていた。

「マジで母親みたいだな・・・」

 そう呟くと、令が言った。

「愛されてるんだろ」

「愛されて・・・そっか、愛されてるのか」

 突然強くなった雨音に、俺のその声はかき消された。



―――次の日、熱は下がっていた。晴樹さんがもう一日は安静にしているようにと
言っていたと御鈴から聞き、学校に休みの連絡を入れる。
味がするようになった朝食に幸せを感じていると、御鈴が言った。

「蒼汰、体調は大丈夫か?」

「ああ、何ともないよ」

 そう返すと、良かった・・・と御鈴は安心したような顔になり、牛乳をゴクゴクと
 飲んで言った。

「晴樹が用意した薬、妖用じゃったからな。即効性はあるが体力がゴリッと削られる
 らしく、普通の人間だと死んでしまうそうじゃ」

「・・・・・・はあ?!!」

 御鈴の言葉に一瞬思考が止まるが、すぐに驚きの声を上げる。なんつーもん飲ま
 されたんだ俺は。

「良かったな蒼汰、人間より体力あって」

 令が暢気にそう言うが、そこじゃないだろう。

「熱下げるのに命懸けって・・・」

「だ、大丈夫じゃ!静也は飲んでも大丈夫だったと晴樹は言っておったし!!」

 俺の言葉に御鈴は慌てて言う。
 ・・・もしかして圭梧が前に言ってた体力と精神力は妖並みって、比喩表現じゃ
 なくて事実・・・?
 改めて静也さんが化け物じみている人間であると実感し、俺は何も言えず深い
 溜息を吐いた。
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