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第一部
不仲
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―――雪華に付いて歩き、部屋へ入る。扉を閉めた雪華は、苦笑いを浮かべて
言った。
「申し遅れました、雨谷様の従者の雪華と申します。先程は主が失礼致しました、
雨谷様は利斧様の事がお嫌いでして・・・」
以前いらっしゃった際にも・・・と察してくれと言わんばかりの表情で言った
雪華に、大変そうだな・・・と思う。
「あんな利斧、初めて見たぞ。何処か楽しんでいるようじゃったし・・・」
御鈴がそう言うと、雪華は何処か諦めたような表情で言った。
「利斧様は、雨谷様の反応が興味深いそうでして。あの方は興味の有無で行動される
ことがあると、雨谷様から聞いております」
利斧がわざと雨谷の怒るようなことを言っていたと考えると、雨谷の言った通り
彼は性格が悪いのだろう。御鈴も利斧のそんな一面を知らなかったようで、若干
引いたような顔をしていた。
「お茶をお持ちしますね」
雪華がそう言って部屋を出て行く。部屋に残された俺と御鈴は、首を傾げながら
顔を見合わせていた。
―――少しして戻ってきた雪華とお茶を飲みながら、何気ない会話をする。
話の流れで狗神や狼昂の名前を出すと雪華の知り合いでもあったらしく、世間って
狭いですねなんて笑い合った。
・・・暫くして、利斧と雨谷が部屋に入ってくる。
先程とは違い雨谷は少し嬉しそうな顔をしており、利斧は嫌そうな顔をしていた。
「何があったんじゃ・・・」
座った二人に御鈴が言うと、利斧が不服そうな声で言った。
「雨谷がぼったくってきたんです・・・」
「文句があるなら他の奴に頼めば~?」
「・・・貴方が一番良い腕してるんですよ、他の方に頼める訳がないでしょう」
雨谷の言葉に利斧がそう言うと、雨谷は御贔屓にどうも~と笑う。
「雨谷様、一体いくら請求されたのです?」
雪華が聞くと、雨谷はニコニコと笑いながら雪華に耳打ちする。えっ?!と驚いた
声を上げ深い溜息を吐いた雪華に、相当な金額だったのかと思う。
「ちゃんと仕事受けてあげただけ良いと思わない?」
「断るつもりだったんですか?」
雨谷の言葉に俺が言うと、雨谷はあたりまえじゃんと頷く。
「何が好きでこんな奴の、しかもオイラの管轄外の武器を研いだりしなきゃいけない
のさ。利斧が君達を連れてこなかったら、力づくで追い返してるよ」
君達の事気に入ったから、特別。そう言ってクスリと笑った雨谷に、利斧は呆れた
ような顔をして言った。
「彼は、自分が気に入るかどうかで対応を変えてきますからね。客ありきの商売
なのに、いかがなものなのかとは思いますが」
そういえば昨日、刀鍛冶をしていると利斧が言っていたな。
このご時世に刀なんて欲しがる人はいるんだろうか。そんなことを考えながら
雨谷を見ると、目が合った。雨谷は俺をじっと見ると、口を開く。
「普通の刀の需要はかなり減ったけど、妖刀の需要はまだ結構あるんだよ~」
「えっ」
雨谷の言葉に、思考を読まれたのかと驚いて声を上げる。まさかと思い雨谷を見る
が、彼は何も言わずヘラヘラと笑っていた。
言った。
「申し遅れました、雨谷様の従者の雪華と申します。先程は主が失礼致しました、
雨谷様は利斧様の事がお嫌いでして・・・」
以前いらっしゃった際にも・・・と察してくれと言わんばかりの表情で言った
雪華に、大変そうだな・・・と思う。
「あんな利斧、初めて見たぞ。何処か楽しんでいるようじゃったし・・・」
御鈴がそう言うと、雪華は何処か諦めたような表情で言った。
「利斧様は、雨谷様の反応が興味深いそうでして。あの方は興味の有無で行動される
ことがあると、雨谷様から聞いております」
利斧がわざと雨谷の怒るようなことを言っていたと考えると、雨谷の言った通り
彼は性格が悪いのだろう。御鈴も利斧のそんな一面を知らなかったようで、若干
引いたような顔をしていた。
「お茶をお持ちしますね」
雪華がそう言って部屋を出て行く。部屋に残された俺と御鈴は、首を傾げながら
顔を見合わせていた。
―――少しして戻ってきた雪華とお茶を飲みながら、何気ない会話をする。
話の流れで狗神や狼昂の名前を出すと雪華の知り合いでもあったらしく、世間って
狭いですねなんて笑い合った。
・・・暫くして、利斧と雨谷が部屋に入ってくる。
先程とは違い雨谷は少し嬉しそうな顔をしており、利斧は嫌そうな顔をしていた。
「何があったんじゃ・・・」
座った二人に御鈴が言うと、利斧が不服そうな声で言った。
「雨谷がぼったくってきたんです・・・」
「文句があるなら他の奴に頼めば~?」
「・・・貴方が一番良い腕してるんですよ、他の方に頼める訳がないでしょう」
雨谷の言葉に利斧がそう言うと、雨谷は御贔屓にどうも~と笑う。
「雨谷様、一体いくら請求されたのです?」
雪華が聞くと、雨谷はニコニコと笑いながら雪華に耳打ちする。えっ?!と驚いた
声を上げ深い溜息を吐いた雪華に、相当な金額だったのかと思う。
「ちゃんと仕事受けてあげただけ良いと思わない?」
「断るつもりだったんですか?」
雨谷の言葉に俺が言うと、雨谷はあたりまえじゃんと頷く。
「何が好きでこんな奴の、しかもオイラの管轄外の武器を研いだりしなきゃいけない
のさ。利斧が君達を連れてこなかったら、力づくで追い返してるよ」
君達の事気に入ったから、特別。そう言ってクスリと笑った雨谷に、利斧は呆れた
ような顔をして言った。
「彼は、自分が気に入るかどうかで対応を変えてきますからね。客ありきの商売
なのに、いかがなものなのかとは思いますが」
そういえば昨日、刀鍛冶をしていると利斧が言っていたな。
このご時世に刀なんて欲しがる人はいるんだろうか。そんなことを考えながら
雨谷を見ると、目が合った。雨谷は俺をじっと見ると、口を開く。
「普通の刀の需要はかなり減ったけど、妖刀の需要はまだ結構あるんだよ~」
「えっ」
雨谷の言葉に、思考を読まれたのかと驚いて声を上げる。まさかと思い雨谷を見る
が、彼は何も言わずヘラヘラと笑っていた。
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