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第一部
冬休み
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―――自分のベッドで目を覚まし、いつもよりも温かい体にあれ?と思う。布団を
捲ると、俺に抱き着くようにして御鈴が眠っていた。
驚きつつも何処か安心感を覚えていると、御鈴はモゾリと体を動かして目を開けた。
「おはよう、蒼汰。よく眠れたか?」
優しい笑みを浮かべる御鈴に、昨夜のことを思い出す。
・・・御鈴を暫く抱きしめ、気持ちが大分落ち着いた頃。お礼を言って部屋に
戻ろうとすると、御鈴が付いてきた。一緒に寝ようと言われ、二人でベッドに
潜り込んだんだっけか。
「おはよう。・・・ありがとな」
そう言って御鈴の頭を撫でると、御鈴は嬉しそうに笑う。
起き上がり、時計を見る。今日の授業は午後からだし、こんなに早く起きなくても
良かったかなんて思う。外は雨、これじゃあランニングもできないな。
「のう蒼汰、妾の我儘を聞いてくれぬか?」
ふと、起き上がった御鈴が言う。ん?と首を傾げると、御鈴は俺に寄り掛かった。
「妾も、蒼汰の傍にいたいんじゃ。だからな、朝食の時間までこのまま妾とお喋りを
してくれぬか」
「ああ、分かった」
・・・それから、御鈴と色んな話をした。
主と従者の関係じゃ、隠し事は無しにしよう。御鈴はそう言って、俺と出会う
までの事や俺が学校へ行っている間に普段何をしているのかを教えてくれた。
俺も学校での話や御鈴と出会う前の自分の話などをする。
こんなこと家族にだって話すことがなかったのに、何だか御鈴には全て話しても
良い気がしていた。
「何じゃろうなあ・・・お主、かなり難儀な生活を送っておったんじゃの」
「金はあるんだけど、両親が滅多にいないからな・・・。まあ、俺にとっちゃそれが
普通なんだけどさ」
「今更じゃが、妾はこの家にいて邪魔になってはいないかの?」
「まさか。むしろ、御鈴と出会ってから毎日が楽しいよ」
「そうか、なら良かった」
そんな会話をしていると、俺と御鈴の腹が同時に鳴る。顔を見合わせた俺達は、
クスクスと笑いながら一緒に部屋を出た。
―――あれから、御鈴との距離が近くなった気がする。・・・いや、前から近かった
のだが、今までよりも更に心の距離が縮まった気がしていた。それと同時に、御鈴の
傍にいる時間が増えたように思う。
変な夢を見ることもなく、いつも通り学生としての生活と従者としての生活を送る。
テスト期間中は集中しようと御鈴から離れていたのだが、御鈴の言っていたことが
よく分かった。近くに居るのに離れていると思うと、どうにも寂しくなってくる。
テストが終わり家に帰るなり御鈴に抱き着いてしまったのは、今思い返しても相当
ヤバい奴だったと思う。
「蒼汰、稲荷の狐の所に遊びに行こう!」
冬休みが始まり、家に籠っていたある日。御鈴が朝食を食べながらそう言った。
「え、勝手に行って良いもんなのか?」
俺が首を傾げると、令が言った。
「稲荷の狐・・・って、御鈴様が前に言ってた一緒に遊んだっていう?」
御鈴は頷くと、な?と俺を見る。
「あそこ、何神社だっけ」
「確か、夜宮神社だったはずじゃ!」
俺の言葉に御鈴はそう言って味噌汁を飲む。あのときは由紀の異能力で繋がった
扉から行き来していたが、普通に行ける距離なんだろうか。
朝食を食べ終わり、携帯で夜宮神社の場所を調べる。・・・なるほど、行こうと
思えば行ける距離だな。
「バス乗り継いで・・・今から行けば昼前には着くな」
「よし行こう!令も来るじゃろう?」
俺の言葉に御鈴は嬉しそうに言って、令を見る。
「にゃんか嫌な予感がするけど・・・まあ、御鈴様と蒼汰が行くならボクも行く」
令はそう言うと、空になった皿を俺の前に置いた。
捲ると、俺に抱き着くようにして御鈴が眠っていた。
驚きつつも何処か安心感を覚えていると、御鈴はモゾリと体を動かして目を開けた。
「おはよう、蒼汰。よく眠れたか?」
優しい笑みを浮かべる御鈴に、昨夜のことを思い出す。
・・・御鈴を暫く抱きしめ、気持ちが大分落ち着いた頃。お礼を言って部屋に
戻ろうとすると、御鈴が付いてきた。一緒に寝ようと言われ、二人でベッドに
潜り込んだんだっけか。
「おはよう。・・・ありがとな」
そう言って御鈴の頭を撫でると、御鈴は嬉しそうに笑う。
起き上がり、時計を見る。今日の授業は午後からだし、こんなに早く起きなくても
良かったかなんて思う。外は雨、これじゃあランニングもできないな。
「のう蒼汰、妾の我儘を聞いてくれぬか?」
ふと、起き上がった御鈴が言う。ん?と首を傾げると、御鈴は俺に寄り掛かった。
「妾も、蒼汰の傍にいたいんじゃ。だからな、朝食の時間までこのまま妾とお喋りを
してくれぬか」
「ああ、分かった」
・・・それから、御鈴と色んな話をした。
主と従者の関係じゃ、隠し事は無しにしよう。御鈴はそう言って、俺と出会う
までの事や俺が学校へ行っている間に普段何をしているのかを教えてくれた。
俺も学校での話や御鈴と出会う前の自分の話などをする。
こんなこと家族にだって話すことがなかったのに、何だか御鈴には全て話しても
良い気がしていた。
「何じゃろうなあ・・・お主、かなり難儀な生活を送っておったんじゃの」
「金はあるんだけど、両親が滅多にいないからな・・・。まあ、俺にとっちゃそれが
普通なんだけどさ」
「今更じゃが、妾はこの家にいて邪魔になってはいないかの?」
「まさか。むしろ、御鈴と出会ってから毎日が楽しいよ」
「そうか、なら良かった」
そんな会話をしていると、俺と御鈴の腹が同時に鳴る。顔を見合わせた俺達は、
クスクスと笑いながら一緒に部屋を出た。
―――あれから、御鈴との距離が近くなった気がする。・・・いや、前から近かった
のだが、今までよりも更に心の距離が縮まった気がしていた。それと同時に、御鈴の
傍にいる時間が増えたように思う。
変な夢を見ることもなく、いつも通り学生としての生活と従者としての生活を送る。
テスト期間中は集中しようと御鈴から離れていたのだが、御鈴の言っていたことが
よく分かった。近くに居るのに離れていると思うと、どうにも寂しくなってくる。
テストが終わり家に帰るなり御鈴に抱き着いてしまったのは、今思い返しても相当
ヤバい奴だったと思う。
「蒼汰、稲荷の狐の所に遊びに行こう!」
冬休みが始まり、家に籠っていたある日。御鈴が朝食を食べながらそう言った。
「え、勝手に行って良いもんなのか?」
俺が首を傾げると、令が言った。
「稲荷の狐・・・って、御鈴様が前に言ってた一緒に遊んだっていう?」
御鈴は頷くと、な?と俺を見る。
「あそこ、何神社だっけ」
「確か、夜宮神社だったはずじゃ!」
俺の言葉に御鈴はそう言って味噌汁を飲む。あのときは由紀の異能力で繋がった
扉から行き来していたが、普通に行ける距離なんだろうか。
朝食を食べ終わり、携帯で夜宮神社の場所を調べる。・・・なるほど、行こうと
思えば行ける距離だな。
「バス乗り継いで・・・今から行けば昼前には着くな」
「よし行こう!令も来るじゃろう?」
俺の言葉に御鈴は嬉しそうに言って、令を見る。
「にゃんか嫌な予感がするけど・・・まあ、御鈴様と蒼汰が行くならボクも行く」
令はそう言うと、空になった皿を俺の前に置いた。
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