神と従者

彩茸

文字の大きさ
上 下
15 / 159
第一部

冬休み

しおりを挟む
―――自分のベッドで目を覚まし、いつもよりも温かい体にあれ?と思う。布団を
捲ると、俺に抱き着くようにして御鈴が眠っていた。
驚きつつも何処か安心感を覚えていると、御鈴はモゾリと体を動かして目を開けた。

「おはよう、蒼汰。よく眠れたか?」

 優しい笑みを浮かべる御鈴に、昨夜のことを思い出す。
 ・・・御鈴を暫く抱きしめ、気持ちが大分落ち着いた頃。お礼を言って部屋に
 戻ろうとすると、御鈴が付いてきた。一緒に寝ようと言われ、二人でベッドに
 潜り込んだんだっけか。

「おはよう。・・・ありがとな」

 そう言って御鈴の頭を撫でると、御鈴は嬉しそうに笑う。
 起き上がり、時計を見る。今日の授業は午後からだし、こんなに早く起きなくても
 良かったかなんて思う。外は雨、これじゃあランニングもできないな。

「のう蒼汰、妾の我儘を聞いてくれぬか?」

 ふと、起き上がった御鈴が言う。ん?と首を傾げると、御鈴は俺に寄り掛かった。

「妾も、蒼汰の傍にいたいんじゃ。だからな、朝食の時間までこのまま妾とお喋りを
 してくれぬか」

「ああ、分かった」

 ・・・それから、御鈴と色んな話をした。
 主と従者の関係じゃ、隠し事は無しにしよう。御鈴はそう言って、俺と出会う
 までの事や俺が学校へ行っている間に普段何をしているのかを教えてくれた。
 俺も学校での話や御鈴と出会う前の自分の話などをする。
 こんなこと家族にだって話すことがなかったのに、何だか御鈴には全て話しても
 良い気がしていた。

「何じゃろうなあ・・・お主、かなり難儀な生活を送っておったんじゃの」

「金はあるんだけど、両親が滅多にいないからな・・・。まあ、俺にとっちゃそれが
 なんだけどさ」

「今更じゃが、妾はこの家にいて邪魔になってはいないかの?」

「まさか。むしろ、御鈴と出会ってから毎日が楽しいよ」

「そうか、なら良かった」

 そんな会話をしていると、俺と御鈴の腹が同時に鳴る。顔を見合わせた俺達は、
 クスクスと笑いながら一緒に部屋を出た。



―――あれから、御鈴との距離が近くなった気がする。・・・いや、前から近かった
のだが、今までよりも更に心の距離が縮まった気がしていた。それと同時に、御鈴の
傍にいる時間が増えたように思う。
変な夢を見ることもなく、いつも通り学生としての生活と従者としての生活を送る。
テスト期間中は集中しようと御鈴から離れていたのだが、御鈴の言っていたことが
よく分かった。近くに居るのに離れていると思うと、どうにも寂しくなってくる。
テストが終わり家に帰るなり御鈴に抱き着いてしまったのは、今思い返しても相当
ヤバい奴だったと思う。

「蒼汰、稲荷の狐の所に遊びに行こう!」

 冬休みが始まり、家に籠っていたある日。御鈴が朝食を食べながらそう言った。

「え、勝手に行って良いもんなのか?」

 俺が首を傾げると、令が言った。

「稲荷の狐・・・って、御鈴様が前に言ってた一緒に遊んだっていう?」

 御鈴は頷くと、な?と俺を見る。

「あそこ、何神社だっけ」

「確か、夜宮やぐう神社だったはずじゃ!」

 俺の言葉に御鈴はそう言って味噌汁を飲む。あのときは由紀の異能力で繋がった
 扉から行き来していたが、普通に行ける距離なんだろうか。
 朝食を食べ終わり、携帯で夜宮神社の場所を調べる。・・・なるほど、行こうと
 思えば行ける距離だな。

「バス乗り継いで・・・今から行けば昼前には着くな」

「よし行こう!令も来るじゃろう?」

 俺の言葉に御鈴は嬉しそうに言って、令を見る。

「にゃんか嫌な予感がするけど・・・まあ、御鈴様と蒼汰が行くならボクも行く」

 令はそう言うと、空になった皿を俺の前に置いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)

料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている 酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚

白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼
ファンタジー
20年ほど前。この世界に『白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー』という能力が出現した。 その能力は様々だったが、能力を宿すことができるのは、思春期の少年少女のみ。 そしてのちにその力は、当たり前のように世界に存在することとなる。 —―しかし当たり前になったその力は、世界の至る場所で事件や事故を引き起こしていった。 ある時には、大切な家族を傷つけ、またある時には、大事なものを失う…。 事件の度に、傷つく人間が数多く存在していたことが報告された。 そんな人々を救うために、能力者を管理する施設が誕生することとなった。 これは、この施設を中心に送る、一人の男性教師・三谷暁と能力に人生を狂わされた子供たちとの成長と絆を描いた青春物語である。

異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】

ちっき
ファンタジー
【書籍化決定しました!】 異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く異世界での日常を全力で楽しむ女子高生の物語。 暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

戦力より戦略。

haruhi8128
ファンタジー
【毎日更新!】 引きこもりニートが異世界に飛ばされてしまった!? とりあえず周りを見学していると自分に不都合なことばかり判明! 知識をもってどうにかしなきゃ!! ゲームの世界にとばされてしまった主人公は、周りを見学しているうちにある子と出会う。なしくずし的にパーティーを組むのだが、その正体は…!? 感想頂けると嬉しいです!   横書きのほうが見やすいかもです!(結構数字使ってるので…) 「ツギクル」のバナーになります。良ければ是非。 <a href="https://www.tugikuru.jp/colink/link?cid=40118" target="_blank"><img src="https://www.tugikuru.jp/colink?cid=40118&size=l" alt="ツギクルバナー"></a>

夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。

Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。 それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。 そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。 しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。 命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...