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第一部
小鬼
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―――雑談をしたり、御鈴や令と遊んだり。山霧家でのんびりとした時間を過ごした
俺は、そろそろ帰るよと立ち上がる。
流石にお昼までご馳走になるのは申し訳ないしと思いつつ、まだ遊び足りないと
いった顔をしている御鈴と令を連れて玄関を出る。
・・・その時、ゾワリと寒気がした。まさかと思い、辺りを見回す。楓華と圭梧が
首を傾げると、晴樹さんがハッとした顔で言った。
「戻って!」
慌てて御鈴の手を取り家の中へ戻る。その瞬間、先程まで御鈴が立っていた場所に
槍が刺さった。そしてその上に、緑色をした小鬼が乗る。
「何故こんな時まで・・・」
御鈴が忌々しそうに言う。晴樹さんが何か知ってるの?と聞くと、御鈴は申し訳
なさそうな顔をして言った。
「あ奴の狙いは妾じゃろう。・・・すまんの、巻き込んでしもうた」
御鈴は俺から手を離し、数歩下がって俺を見る。俺が頷くと、楓華が言った。
「手伝うよ」
「え、あ、ありがとう・・・?」
楓華も戦えるのかと思っていると、晴樹さんがいつの間にか手に持っていた二丁の
拳銃を楓華に見せながら言った。
「どっち使う?」
「・・・じゃあ、こっち」
楓華はそう言って桜の模様が描かれた銃を受け取る。
「守るのは任せろ!」
そう言いながら圭梧が御鈴の隣へ行く。令はボクもこっちと言いながら、御鈴の
肩の上に飛び乗った。
「蒼汰、武器は?もしかして拳?」
楓華が銃を構えながら聞いてきたので、俺は首を横に振って手を前に突き出した。
この前と同じ要領で、胸の辺りが温かくなるのを感じながら口を開く。
『柏木』
俺がそう言った瞬間、手元に長い棒が出現する。それを掴み、楓華に当たらない
ように気を付けつつ持ちやすいようにクルリと回す。
それを見た楓華、圭梧、晴樹さんは驚きの声を上げた。
「凄いね、神様みたいだ」
晴樹さんはそう言いながら、外へ飛び出す。
それに続くように俺と楓華も外へ飛び出し、小鬼と対峙する。
「キシッ」
小鬼は声を上げると、地面から槍を引き抜き俺に向かって襲い掛かってくる。
それを躱し、棒を回して小鬼を地面に叩きつけた。
それと同時に、発砲音が響く。放たれた銃弾は小鬼の眉間を正確に撃ち抜いて
おり、小鬼は一瞬で動かなくなった。
「え、すっご・・・」
俺がそう呟くと、晴樹さんは照れ笑いを浮かべる。どうやら、さっきの発砲は
晴樹さんによるものだったらしい。
「まだくるよ」
楓華がそう言って屋根の上を見る。俺もそちらを見ると、そこには先程の小鬼と
同じような奴らが十数体居た。
「多すぎるだろ・・・」
思わずそう呟く。楓華と晴樹さんは無言で銃口を屋根に向けた。
五体の小鬼が一度に襲い掛かってきた。俺達は攻撃を避け、そいつらを見る。
「キシャッ」
小鬼の一体が声を上げると、他の四体も同時に動く。
素早く動く小鬼達を避けると、発砲音が聞こえる。
そちらを見ると、晴樹さんが小鬼の胸を撃ち抜いていた。どうなってるんだその
射撃精度と思いながら、俺も小鬼の一体を地面に叩きつける。
再び発砲音が聞こえ、また晴樹さんかと思いながらそちらを見る。そこには、
凍った小鬼が倒れていた。
「よし、当たった」
楓華がそう言って少し嬉しそうな顔をする。俺の視線に気付いた楓華は、小鬼の
攻撃を避けながら言った。
「私、異能力者なの。というか、家族全員異能力者なんだ」
由紀の家と一緒。そう言って、楓華は再び発砲する。
凍った小鬼に再び弾が当たると、小鬼はバラバラに砕け散った。
もう俺要らないんじゃ・・・なんて思いつつ、襲ってきた小鬼を棒で思いっきり
殴る。少し痛そうにしつつも普通に動き続ける小鬼にどうなってんだと思っている
と、玄関の奥から令が言った。
「蒼汰、力を込めて叩けって!にゃんで普通に殴ってるんだ」
この前も言われたその言葉に、普通にって何だよと思いながら俺は言った。
「力入れてぶん殴ってるだろ、これ以上ってどうやるんだ」
「はあ?にゃに言ってるんだお前。全然力籠ってないだろ」
令の言っている意味が分からず、困惑しながら小鬼の攻撃を防ぐ。
すると、令は呆れたような声で御鈴に言った。
「御鈴様、やっぱりあいつ命令しなきゃ戦えないんじゃないか?」
「命令はしたくない、蒼汰はそんなことしなくても戦えるはずじゃ!・・・多分」
自信なさげな御鈴の声に、何だか申し訳なくなる。
小鬼を地面に叩き付けながら、どうしようかと考える。攻撃を避け、棒で突き
飛ばす。
「なあ蒼汰、御鈴から神様の力貰ってるんだろ?それ使って殴れって意味だと思うん
だが」
ふと、圭梧が言う。
「え、あっ、そういうこと?」
なるほどと思いながら、棒を振り回す。
棒を避けた小鬼の一体を、楓華が撃ち抜く。
下に居るのはあと・・・二体か。俺は棒に意識を集中させる。やり方なんて分から
ないが、今まで通り直感でどうにかならないだろうか。
胸の辺りが温かくなるのを感じる。何となくだが、いける気がする。
「キシャアア!」
小鬼が二体同時に襲い掛かってくる。
「蒼汰!」
楓華が慌てたように言う。・・・大丈夫、やれる。
俺は棒をグルリと回し、小鬼の攻撃を受け流す。そして小鬼の一体を棒で跳ね
上げ、もう一体も巻き込んで同時に地面に叩きつけた。
ゴシャッと音がする。先程まであれだけ地面に叩きつけてもビクともしなかった
小鬼が、潰れたように動かなくなった。
「にゃんだ、できるじゃないか」
令が言う。
ふと銃声が聞こえ晴樹さんの方を見ると、屋根の上に居た残りの小鬼が全滅して
いた。
「これで全部かな?」
晴樹さんがそう言って御鈴を見る。
御鈴が頷くと、晴樹さんは楓華と俺を見て言った。
「お疲れ様、よく頑張ったね」
その言葉に緊張がほぐれたのか、どっと疲れが押し寄せてくる。主に神通力を
使った所為なのだろうが、ここまで疲れるとは。
疲れが顔に出ていたのか、大丈夫?と晴樹さんが聞いてくる。
大丈夫ですと答えると、御鈴が駆け寄ってきて俺に抱き着きながら言った。
「蒼汰、守ってもらっておいて言うのもあれじゃが・・・一度に力を消耗させ過ぎ
じゃ。体に無理をさせ過ぎると早死にするぞ」
「そんなこと言われても・・・」
俺がそう言うと、御鈴は頬を膨らませる。
「・・・まあ良い、今は休め。話は後じゃ」
御鈴はそう言って俺の手を取り帰ろうとする。
「じゃあなー!」
圭梧が笑顔でブンブンと手を振る。
「また来てね」
楓華がそう言ってひらひらと手を振る。
「お、お邪魔しました!」
御鈴に引きずられるようにして歩きながら言うと、晴樹さんが小さく笑って
言った。
「お大事に」
俺は、そろそろ帰るよと立ち上がる。
流石にお昼までご馳走になるのは申し訳ないしと思いつつ、まだ遊び足りないと
いった顔をしている御鈴と令を連れて玄関を出る。
・・・その時、ゾワリと寒気がした。まさかと思い、辺りを見回す。楓華と圭梧が
首を傾げると、晴樹さんがハッとした顔で言った。
「戻って!」
慌てて御鈴の手を取り家の中へ戻る。その瞬間、先程まで御鈴が立っていた場所に
槍が刺さった。そしてその上に、緑色をした小鬼が乗る。
「何故こんな時まで・・・」
御鈴が忌々しそうに言う。晴樹さんが何か知ってるの?と聞くと、御鈴は申し訳
なさそうな顔をして言った。
「あ奴の狙いは妾じゃろう。・・・すまんの、巻き込んでしもうた」
御鈴は俺から手を離し、数歩下がって俺を見る。俺が頷くと、楓華が言った。
「手伝うよ」
「え、あ、ありがとう・・・?」
楓華も戦えるのかと思っていると、晴樹さんがいつの間にか手に持っていた二丁の
拳銃を楓華に見せながら言った。
「どっち使う?」
「・・・じゃあ、こっち」
楓華はそう言って桜の模様が描かれた銃を受け取る。
「守るのは任せろ!」
そう言いながら圭梧が御鈴の隣へ行く。令はボクもこっちと言いながら、御鈴の
肩の上に飛び乗った。
「蒼汰、武器は?もしかして拳?」
楓華が銃を構えながら聞いてきたので、俺は首を横に振って手を前に突き出した。
この前と同じ要領で、胸の辺りが温かくなるのを感じながら口を開く。
『柏木』
俺がそう言った瞬間、手元に長い棒が出現する。それを掴み、楓華に当たらない
ように気を付けつつ持ちやすいようにクルリと回す。
それを見た楓華、圭梧、晴樹さんは驚きの声を上げた。
「凄いね、神様みたいだ」
晴樹さんはそう言いながら、外へ飛び出す。
それに続くように俺と楓華も外へ飛び出し、小鬼と対峙する。
「キシッ」
小鬼は声を上げると、地面から槍を引き抜き俺に向かって襲い掛かってくる。
それを躱し、棒を回して小鬼を地面に叩きつけた。
それと同時に、発砲音が響く。放たれた銃弾は小鬼の眉間を正確に撃ち抜いて
おり、小鬼は一瞬で動かなくなった。
「え、すっご・・・」
俺がそう呟くと、晴樹さんは照れ笑いを浮かべる。どうやら、さっきの発砲は
晴樹さんによるものだったらしい。
「まだくるよ」
楓華がそう言って屋根の上を見る。俺もそちらを見ると、そこには先程の小鬼と
同じような奴らが十数体居た。
「多すぎるだろ・・・」
思わずそう呟く。楓華と晴樹さんは無言で銃口を屋根に向けた。
五体の小鬼が一度に襲い掛かってきた。俺達は攻撃を避け、そいつらを見る。
「キシャッ」
小鬼の一体が声を上げると、他の四体も同時に動く。
素早く動く小鬼達を避けると、発砲音が聞こえる。
そちらを見ると、晴樹さんが小鬼の胸を撃ち抜いていた。どうなってるんだその
射撃精度と思いながら、俺も小鬼の一体を地面に叩きつける。
再び発砲音が聞こえ、また晴樹さんかと思いながらそちらを見る。そこには、
凍った小鬼が倒れていた。
「よし、当たった」
楓華がそう言って少し嬉しそうな顔をする。俺の視線に気付いた楓華は、小鬼の
攻撃を避けながら言った。
「私、異能力者なの。というか、家族全員異能力者なんだ」
由紀の家と一緒。そう言って、楓華は再び発砲する。
凍った小鬼に再び弾が当たると、小鬼はバラバラに砕け散った。
もう俺要らないんじゃ・・・なんて思いつつ、襲ってきた小鬼を棒で思いっきり
殴る。少し痛そうにしつつも普通に動き続ける小鬼にどうなってんだと思っている
と、玄関の奥から令が言った。
「蒼汰、力を込めて叩けって!にゃんで普通に殴ってるんだ」
この前も言われたその言葉に、普通にって何だよと思いながら俺は言った。
「力入れてぶん殴ってるだろ、これ以上ってどうやるんだ」
「はあ?にゃに言ってるんだお前。全然力籠ってないだろ」
令の言っている意味が分からず、困惑しながら小鬼の攻撃を防ぐ。
すると、令は呆れたような声で御鈴に言った。
「御鈴様、やっぱりあいつ命令しなきゃ戦えないんじゃないか?」
「命令はしたくない、蒼汰はそんなことしなくても戦えるはずじゃ!・・・多分」
自信なさげな御鈴の声に、何だか申し訳なくなる。
小鬼を地面に叩き付けながら、どうしようかと考える。攻撃を避け、棒で突き
飛ばす。
「なあ蒼汰、御鈴から神様の力貰ってるんだろ?それ使って殴れって意味だと思うん
だが」
ふと、圭梧が言う。
「え、あっ、そういうこと?」
なるほどと思いながら、棒を振り回す。
棒を避けた小鬼の一体を、楓華が撃ち抜く。
下に居るのはあと・・・二体か。俺は棒に意識を集中させる。やり方なんて分から
ないが、今まで通り直感でどうにかならないだろうか。
胸の辺りが温かくなるのを感じる。何となくだが、いける気がする。
「キシャアア!」
小鬼が二体同時に襲い掛かってくる。
「蒼汰!」
楓華が慌てたように言う。・・・大丈夫、やれる。
俺は棒をグルリと回し、小鬼の攻撃を受け流す。そして小鬼の一体を棒で跳ね
上げ、もう一体も巻き込んで同時に地面に叩きつけた。
ゴシャッと音がする。先程まであれだけ地面に叩きつけてもビクともしなかった
小鬼が、潰れたように動かなくなった。
「にゃんだ、できるじゃないか」
令が言う。
ふと銃声が聞こえ晴樹さんの方を見ると、屋根の上に居た残りの小鬼が全滅して
いた。
「これで全部かな?」
晴樹さんがそう言って御鈴を見る。
御鈴が頷くと、晴樹さんは楓華と俺を見て言った。
「お疲れ様、よく頑張ったね」
その言葉に緊張がほぐれたのか、どっと疲れが押し寄せてくる。主に神通力を
使った所為なのだろうが、ここまで疲れるとは。
疲れが顔に出ていたのか、大丈夫?と晴樹さんが聞いてくる。
大丈夫ですと答えると、御鈴が駆け寄ってきて俺に抱き着きながら言った。
「蒼汰、守ってもらっておいて言うのもあれじゃが・・・一度に力を消耗させ過ぎ
じゃ。体に無理をさせ過ぎると早死にするぞ」
「そんなこと言われても・・・」
俺がそう言うと、御鈴は頬を膨らませる。
「・・・まあ良い、今は休め。話は後じゃ」
御鈴はそう言って俺の手を取り帰ろうとする。
「じゃあなー!」
圭梧が笑顔でブンブンと手を振る。
「また来てね」
楓華がそう言ってひらひらと手を振る。
「お、お邪魔しました!」
御鈴に引きずられるようにして歩きながら言うと、晴樹さんが小さく笑って
言った。
「お大事に」
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