神と従者

彩茸

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第一部

約束

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―――あの後更に扉の先から顔を出した晴樹さんのお兄さん・・・静也しずやさんも
交えて、出来事を事細かに伝える。
話を聞き終えた由紀、彩音さん、静也さんは、困ったような顔をした。

「契約、契約かあ・・・」

 静也さんが深い溜息を吐く。

「何かヤバかった感じですか・・・?」

 俺がそう聞くと、静也さんは頷いて言った。

「主従契約ってさ、そう簡単に破棄できるものじゃないんだよ。夏休みの暇つぶし
 程度に考えるには、あまりにも重い。それこそ、一生かけて付き従いますって契約
 だし」

「ええ・・・」

 静也さんの言葉で、事の重大さに気付く。

「まあ、今まで通りの生活は諦めなきゃだね」

 由紀がそう言って苦笑いを浮かべる。

「契約内容、神様の護衛だっけ。なら、それなりに強くならないといけないわね」

 彩音さんが言うと、皆がうんうんと頷く。
 どうしよう・・・と呟くと、晴樹さんが言った。

「契約してまだ一週間でしょ?蒼汰くんから、契約内容を聞いてもまだ従います!
 って言ってないなら、まだ何とかできそうな気もするけど」

 その言葉にいけるかもしれないと思った矢先、思い出す。それと同時に、双子が
 言った。

「さっき守ってやるって言ってたけど」

 皆が無言で頭を抱える。訪れた沈黙が、俺の平凡な人生の終了を確定させた。



―――遊び疲れて眠そうな御鈴を連れ、家に帰る。

「楽しかったか?」

 俺がそう聞くと、御鈴は頷いて言った。

「扉の先での、稲荷の狐と大きな犬の神と遊んだんじゃ。遊びながら、色々と教えて
 もらった。・・・人間は、寿命が短いんじゃの。妾は従者と共にいる神を見て、
 従者が欲しくなった。だから、見かけたお主を従者にした。・・・寿命のこと
 なんて、考えていなかったんじゃ」

 悲しそうに目を伏せる御鈴の頭を、そっと撫でる。

「ずっと守れないのは、悪かったと思ってるよ」

 そう言うと、御鈴は首をブンブンと横に振る。
 そして俺に抱き着くと、声を震わせながら言った。

「妾は、蒼汰が気に入ったんじゃ。だから、ずっと一緒にいたい・・・。守るついで
 で良い、妾の傍にいてくれ・・・!」

 何も言えず、ただ御鈴の頭を撫で続ける。何故だか分からないが、自分まで悲しく
 なってきた。

「・・・せめて早死にしないように、強くなるよ」

「言うたな?約束じゃぞ?」

 俺の言葉に、御鈴は涙目の顔を向ける。頷くと、御鈴は抱き着く腕に力を込めた。

「い、痛い!おい御鈴、痛いって!!」

 成人男性に絞められているような腕力に、思わず叫ぶ。

「ああ、すまんの」

 そう言って離れた御鈴の顔は、何処か嬉しそうだった。
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