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9話
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国付きの魔法使いの立場がいかほどのものかは分からないが、ひとまず名乗るに値する人間だと判断されたらしい。希はフロウ、と名乗った彼に対してお辞儀を返しながら口を開く。
魔法のある世界で真名を名乗らないというのはアニメではわりと常識のような気がした、が。
「私は……希です。ええと、フロウ様、とお呼びすればよろしいでしょうか? よろしくお願いします……?」
なんか嫌な感じがしてファーストネームをちゃんと名乗った。ぶっちゃけ海外の人の名前を聞いてもそれがファミリーネームかファーストネームかは分からないが、なんとなく日本人の苗字は呼びづらいかと思ったのだ。フロウはにっこりと笑って爆弾を落とす。
「貴女のステータス、名前以外は伏せられているので、本当に何も分かりません。異世界人だからなのか、単純に貴女が私より強いからなのか……ともあれ、不要な嘘を吐かれなくてなによりです」
「……ステータスなんてものが見えて、さらに他人からも丸見えなんて聞いてないです」
「言ってないですもん」
もんじゃないよ。可愛く言ったって騙されないぞ。
希の責めるような視線にフロウは肩をすくめるだけで答えた。不法侵入者には人権もないってか。失礼な人だ。
「ステータスって、自分のものも他人のものも自由に見えるんですか? どうやればいいんですか?」
「自分のものを視るのは簡単で、唱えるだけです。『ステータス』と」
「『ステータス』」
彼のコメントにしたがって、ステータス見えろ~~という念を込めて唱えた。すると薄い画面がふぉん、と浮かび上がってきて自分の情報を写し出した。希はその画面を指差して問う。勢い余って指が突き抜けたが、画面が歪むことはなかった。
「これ、フロウ様にも見えてますか?」
「いいえ。ステータスの閲覧権限は通常自分のみに与えられるので」
「へー。じゃあフロウ様が『鑑定』とか『個人情報覗き見』とかのスキルを持ってるってことなんですかね」
そう言いながら、希は自分のステータスを確認した。名前は希。24歳。種族は人間。職業は『異世界からの来訪者/???』、HP50にMP50。スキル『???』、属性『???』。異世界からの来訪者というか異世界からの拉致被害者なんだけど……という突っ込みはおいておいて、『???』ってなんだろう。スキル不明無職って事だろうか。
うーん。と唸っていると、フロウが朗らかに聞いてくる。
「職業は聖女でしたか?」
ぬるりと聞くじゃないですか。聖女じゃないから捨てられましたって言いませんでしたっけ。希は心のなかで突っ込みを入れて、見えたものをそのまま答える。
「異世界からの来訪者、っていうのは見えたんですが、もう1個あるみたいでそっちは伏せられています」
「貴女の話が本当なら、来訪者というより拉致被害者でしょうに……職業が2つあることはままあります。ただ伏せられているというのは聞いたことがありません。自分にも見えないということは、まだ確定していないか、それとももっと別の理由があるのか……」
希が思ったことと同じことを言って、フロウは首を傾げる。その後、事情聴取が始まった。
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「私は……希です。ええと、フロウ様、とお呼びすればよろしいでしょうか? よろしくお願いします……?」
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「……ステータスなんてものが見えて、さらに他人からも丸見えなんて聞いてないです」
「言ってないですもん」
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「自分のものを視るのは簡単で、唱えるだけです。『ステータス』と」
「『ステータス』」
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「へー。じゃあフロウ様が『鑑定』とか『個人情報覗き見』とかのスキルを持ってるってことなんですかね」
そう言いながら、希は自分のステータスを確認した。名前は希。24歳。種族は人間。職業は『異世界からの来訪者/???』、HP50にMP50。スキル『???』、属性『???』。異世界からの来訪者というか異世界からの拉致被害者なんだけど……という突っ込みはおいておいて、『???』ってなんだろう。スキル不明無職って事だろうか。
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希が思ったことと同じことを言って、フロウは首を傾げる。その後、事情聴取が始まった。
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