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森に放り出されて何日が経っただろうか。サバイバルの技量など一切持ち合わせていない現代日本人である希は、ひいひいしながら森を彷徨っていた。幸か不幸か人の気配を全く感じない手つかずの森であり、精霊に人間が食べられるものを聞きまくったおかげもあって、食料にもギリギリ困らなかった。魔物以外の野生動物に出会わなかったのも大きい。普通の狼などに襲われたら一発でジ・エンドだっただろうが。この森には魔物しかいなかったようだ。いなかったようだ、というのは襲い掛かられた瞬間に希の空気清浄が働くから魔物だと気が付くためだ。中々に生死と隣り合わせであるが、良かったこともある。瘴気を吸い取った精霊のうちの何匹(何人?)かが希の後をついてきてくれるようになったのだ。お話相手もしてくれる。
このまま精霊たちと一緒に森で生活するのも悪くないなー
なんて、鼻歌混じりでスキップしていたのが良くなかった。
足元の悪い森を歩き慣れてきたせいで、注意が疎かになっていた。足首を何かに捕まれ思い切りひっぱられた、と認識した瞬間に、ぐるんと世界が反転した。なにかゴツゴツした硬いものに強かに頭を打ち付けて「ヴぇ」とつぶれたカエルのような声が漏れる。
「いった……」
打ち付けた頭を押さえようとしたら、ギシッ、と腹筋に嫌な負荷がかかったのを感じる。ゆらゆらとした浮遊感は、どうやら頭を打ち付けたからというわけではないらしい。恐る恐る足元を見ると、やはりというべきか、足首を縛られて木に吊るされていた。
獣を捕らえる罠か、それともーー
さぁ、と、血の気が引く。吊るされているから血が昇るという表現が正しいかもしれない。
「助け……」
て、と言い終わる前に気がつく。希にくっついてきていた精霊が姿を消していた。もしかしなくても見捨てられたのだろうか。
わたわたと、どうにか自分を吊るす縄をほどこうと足首に手を伸ばそうとするが、如何せん貧弱な一般社会人。腹筋力が足りずに力尽き、再び木の幹に頭を打ち付けた。再び呻きながら涙目で考える。
頭に血も昇ってきたし、人間ずっと逆さまに吊るされているとどうなるのか分からないが、この状況がまずいことは分かる。それに、これを仕掛けたのが人間だとすると、かなり無防備な状態で知らない人間の前に曝されるということだ。
それは嫌だ。
召喚時の経験から、希は魔物なんかよりもよほど人間に対する恐怖心のほうが勝っていた。
「罠に何かが掛かったと思ったら、人間でしたか」
だから突然聞こえてきた声に、思い切り叫んでしまったことは言うまでもない。
このまま精霊たちと一緒に森で生活するのも悪くないなー
なんて、鼻歌混じりでスキップしていたのが良くなかった。
足元の悪い森を歩き慣れてきたせいで、注意が疎かになっていた。足首を何かに捕まれ思い切りひっぱられた、と認識した瞬間に、ぐるんと世界が反転した。なにかゴツゴツした硬いものに強かに頭を打ち付けて「ヴぇ」とつぶれたカエルのような声が漏れる。
「いった……」
打ち付けた頭を押さえようとしたら、ギシッ、と腹筋に嫌な負荷がかかったのを感じる。ゆらゆらとした浮遊感は、どうやら頭を打ち付けたからというわけではないらしい。恐る恐る足元を見ると、やはりというべきか、足首を縛られて木に吊るされていた。
獣を捕らえる罠か、それともーー
さぁ、と、血の気が引く。吊るされているから血が昇るという表現が正しいかもしれない。
「助け……」
て、と言い終わる前に気がつく。希にくっついてきていた精霊が姿を消していた。もしかしなくても見捨てられたのだろうか。
わたわたと、どうにか自分を吊るす縄をほどこうと足首に手を伸ばそうとするが、如何せん貧弱な一般社会人。腹筋力が足りずに力尽き、再び木の幹に頭を打ち付けた。再び呻きながら涙目で考える。
頭に血も昇ってきたし、人間ずっと逆さまに吊るされているとどうなるのか分からないが、この状況がまずいことは分かる。それに、これを仕掛けたのが人間だとすると、かなり無防備な状態で知らない人間の前に曝されるということだ。
それは嫌だ。
召喚時の経験から、希は魔物なんかよりもよほど人間に対する恐怖心のほうが勝っていた。
「罠に何かが掛かったと思ったら、人間でしたか」
だから突然聞こえてきた声に、思い切り叫んでしまったことは言うまでもない。
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