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1章:城塞都市フランセーズ編
ギルドにて
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アリアとウィリアムの二人がギルドについた時、太陽は沈む寸前だった。
ギルドは酒場を併設している。そこでは酒を飲み陽気に歌う大男、自信の冒険譚を自信満々に謳う少年、すでに寝こけているドワーフの男、さまざまなものが集う。脛に傷を抱えていようとここでは等しくギルド員として扱われる。それは博愛精神を由来するのではなく、その日の享楽を是とする組織こそギルドだから。
「城塞都市フランセーズには始めてくるが辺境のギルドはどこも変わらんな」
「そうね。この酔っ払い共のどんちゃん騒ぎがギルドであることを実感させてくれるわよね」
ギルドの前で二人は安堵のため息をつく。
最後の最後、オークに襲われてしまい、気持ちが静まりきらなかったのだ。
ウィリアムがドアを引き、ドアベルが鳴る。
冒険者はそれぞれウィリアムとアリアを流し目で確認する。新参者ではあるが、冒険者であることを確認してそれぞれの卓に戻ろうとする。
背中の少女に既視感を覚えながら。
ウィリアムは喧騒を横目に受付までずんずん進み、受付のカウンターに身を乗り出し背中の少女が見えるようにする。その際、少女の赤色の髪が少しこぼれた。
ウィリアムはその赤い髪を見てひとりの女性を思い出した。赤の髪がとても似合う意志の強い女性だった。幼いころのウィリアムとアリアを連れまわし、いつも呵々と豪胆に笑う女性を。
過去の記憶に封を閉じ、受付の青年に話しかける。
「よう好青年。初めまして、だ」
「ええ。初めまして。私はギルバート。今回は何の御用ですか?」
「ああ。俺はウィリアム。後ろのがアリア。んで、今俺が背負ってる少女を保護してほしい」
「ギルドは子供を預かる施設では……」
ウィリアムが背負っている少女を見ながらギルバートは続けようとしていた苦言がしりすぼみになる。既視感どころかその少女のことを十全に知っていたから。
「リ、リーナさん!?」
その驚愕の声はギルドによく響いた。「リーナだって?」「今日はゴブリン討伐のはずだろ」「あいつの腕ならボブリン程度なら苦戦しないだろ」「しかしな。リーナと懇意にしているギルバートが間違えるか?」「そりゃ、ねえだろ」「ってことは——」
「そうか。こいつの名前はリーナって言うのか」
「え、ええ。しかし、なぜウィリアムさんがリーナさんを?」
「オークに襲われていた。それもこの都市にバリスタがあることを知っている奴だ」
「オ、オーク!?リーナさんが相手したら確実に死ぬじゃないですか!?リーナさんは生きてるんですか!?」
“生きているか”。その言葉はぬるりと冒険者たちの耳に入り込んできた。それは生死のはざまで生きている人間の習性といえるかもしれない。明日は我が身だと思うと、自然と耳に入り込んでくる。そして、それが凶報ならば心の隅にとれない膿としてこびりつく。
先ほどまでの喧騒が嘘だったかのように冒険者たちの口は自然と閉じる。
「生きてる」
だからかウィリアムのその言葉は良く響いた。
「後ろで今にも寝そうな俺の連れがオークを足止めしてくれたからな」
アリアは目を閉じて直立していた。これが滝の下や道場中であれば修行をしているのではないかと思ってしまうほど集中した、声のかけにくそうな雰囲気を出している。
だが、ウィリアムは気づいていた。面倒くさいから話しかけづらそうな雰囲気を出して手続きをウィリアムに押し付けようとしていることに。それに、人助けをしたから感謝されということを厭う気持ちもわかるから。人助けは偽善だ、エゴだと思春期をこじらせたことを考えているのではない。単純に面倒くさいのだ。助けられた側からすれば恩人なのかもしれないが、助けた側からすれば赤の他人であることに変わりはない。
自由を愛し、自由に行動したいから根無し草で生活が安定しなくても冒険者なんて職業についている。人助けの感謝で自由を侵害されるのはまっぴらである。
ウィリアムとアリアにとって人助けは胸糞悪くなるから助けているだけだ。目の前で自殺しようとしている人がいたらとりあえず止めるのと同じ心理だ。
「しかし、オークですか……」
「ああ、この弱さでオークだ」
吐き捨てるような雰囲気でウィリアムは話す。
「死んでたぞ。俺たちがあの場にいなければ」
「でしょね。リーナさんは光るものこそあれ、現状はまだゴブリンが精々といった有様ですからね」
ゴブリンとオーク。性欲が高い、意思疎通をする知能を持つなど似ている要素は数知れず。
けれど、質量という点で圧倒的な差がある。
体積で換算すれば軽く60倍は差を持つ。オークの拳は数メートルの石壁ならやすやすと壊す。ゴブリンでは50センチの壁すら壊せないというのに。
「けれど、オークにリーナさんが襲われていることは不自然なんです」
「なに?あれは蛮勇の類ではないのか?」
「ええ。今日の朝もゴブリンを討伐しに行くとはっきり言っていましたし」
「なら、森の外延部にオークが出張ってきた?それはそれでおかしくないか」
オーク。巨大な獣。絶大な破壊力を持つオークは基本的な森では生態系の上位に位置する。
生態系上位種が生存領域である森を捨ててまで逃げる異変。
「不自然ではあるが調査はギルドが行うか」
「ええ。責任をもって」
「ところで、いつになったらこの少女を医務室まで運んでくれるんだ?」
いつものウィリアムであれば背中に60キロもない少女を背負っていることに負担は感じない。だが、疲れているときに重くのしかかる重みはつらかった。
「すいません。気が回らなくて」
謝罪ののちに一拍。
「それと、フランセーズギルドを代表してありがとうございます。一人の有望な少女の命を長らえさせてくれたことを」
律儀にもギルバートは直立し、深々と頭を下げた。
その律義さにウィリアムは苦笑しながら手を振る。当たり前のことに感謝されてもといった雰囲気を身に宿しながら。
「ガキを助けるのは大人の役目だろ」
その言葉にギルバートはあっけにとられ、もう一度感謝の言葉をかけようと思ったころにはすでに背を向けていた。
「おい、アリア。寝てないで起きろ。これから地獄の宿探しだ」「……おいてって。それで、見つかったら呼びに来て」「……お前がやれ」「……いやよ。疲れるじゃない」「俺も疲れてるんだが?」「お姉さん権限よ。探しに行きなさい」「いつからお前は俺の姉になったんだ。俺に妹はいても姉はいねえ」「……シスコン」「いつも言っているが、シスコンじゃねえ」「なら、おんぶしなさいよ。さっきまでしてたでしょ」「……いやだよ……」
そんな気の抜けた会話を繰り広げながら外に歩いていく。
ののしり、たたき、それでも仲がいいことが伝わってしまう二人組。
ぶー垂れながらアリアを背負ったウィリアムは、ドアに手をかけた直前、少しの逡巡ののち顔だけギルバートのほうに向け伝言を頼む。
「リーナっつったか。その嬢ちゃんにオークに襲われた状況を聞きたいから3日後の夕時にギルドにいるように伝えてくれ」
◇
「ねえ、ウィル。何のつもり」
眉間にしわを寄せたアリアは相棒の幼馴染に問うた。
「ここ辺境都市フランセーズに来たのは未来視があったからよね」
「炎上する町と巨悪に対峙する少女、だ」
「ええ。それは聞いたわ。だからこそ、この都市に来たの」
アリアは木造の机をコツコツとたたきながらウィリアムとすり合わせをする。
気になった事があったから。
「なら、なんであのオークのこと、もっと言えばあのリーナとかいう少女に気を遣うの?普段ならギルドから話を聞くことはあるけど当人から話を聞くことは嫌がってたはずよ」
「まあ、今でも当人から話を聞くことは嫌さ」
感謝ですめばいい方で時にはなんでもっと早く来てくれなかったなどの理不尽な罵倒を受けるケースすらあったから。
「だが、今回は当人から話を聞かなければいけないと思ったんだ」
「ギルドからではなく、当人から?何でよ」
「勘だ。だが、あの少女と話せばわかると思う」
その堂々とした態度にアリアはあっけにとられため息を吐いてつぶやく。
「……そんなんだからウィルは知らない人を怒らせるのよ……」
「だが、巨悪に関係することは確かだと思う」
アリアは無言でウィリアムの脛を蹴った。
初めからそう言えと思いながら。
「……!……!…………!!」
ウィリアムは痛みで口をパクパクさせたる顔を赤くしたり青くしたりしながら言葉を探す。
「……もしかしたら、未来視で見えた少女かもしれないんだ」
「共起、ね」
共起。未来視で登場した人物と関係のある人あるいは本人と出会うとぼやけた輪郭があらわになる。
そして、今回ぼやけているのは巨悪とそれに立ち向かう少女。
「ああ。まあ、かもしれないという話だがこと未来視の話ならば可能性の段階でも知らなければならない」
「最悪は避けたいものね。未来視で見えたならこの都市の人々が全員殺されてもおかしくないもの」
巡査した後、ウィリアムはアリアに聞こえない程度の清涼でぽつりとつぶやいた。
「あと、少し、な」
最悪のカギとなるかもしれない少女。
ウィリアムとアリアにとって因縁のある人と関係があるかもしれない少女。
彼女がなぜオークに追われていたのか。
そして、あの歴戦のオークが巨悪なのか。
それはまだ誰も知らない。
ギルドは酒場を併設している。そこでは酒を飲み陽気に歌う大男、自信の冒険譚を自信満々に謳う少年、すでに寝こけているドワーフの男、さまざまなものが集う。脛に傷を抱えていようとここでは等しくギルド員として扱われる。それは博愛精神を由来するのではなく、その日の享楽を是とする組織こそギルドだから。
「城塞都市フランセーズには始めてくるが辺境のギルドはどこも変わらんな」
「そうね。この酔っ払い共のどんちゃん騒ぎがギルドであることを実感させてくれるわよね」
ギルドの前で二人は安堵のため息をつく。
最後の最後、オークに襲われてしまい、気持ちが静まりきらなかったのだ。
ウィリアムがドアを引き、ドアベルが鳴る。
冒険者はそれぞれウィリアムとアリアを流し目で確認する。新参者ではあるが、冒険者であることを確認してそれぞれの卓に戻ろうとする。
背中の少女に既視感を覚えながら。
ウィリアムは喧騒を横目に受付までずんずん進み、受付のカウンターに身を乗り出し背中の少女が見えるようにする。その際、少女の赤色の髪が少しこぼれた。
ウィリアムはその赤い髪を見てひとりの女性を思い出した。赤の髪がとても似合う意志の強い女性だった。幼いころのウィリアムとアリアを連れまわし、いつも呵々と豪胆に笑う女性を。
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「よう好青年。初めまして、だ」
「ええ。初めまして。私はギルバート。今回は何の御用ですか?」
「ああ。俺はウィリアム。後ろのがアリア。んで、今俺が背負ってる少女を保護してほしい」
「ギルドは子供を預かる施設では……」
ウィリアムが背負っている少女を見ながらギルバートは続けようとしていた苦言がしりすぼみになる。既視感どころかその少女のことを十全に知っていたから。
「リ、リーナさん!?」
その驚愕の声はギルドによく響いた。「リーナだって?」「今日はゴブリン討伐のはずだろ」「あいつの腕ならボブリン程度なら苦戦しないだろ」「しかしな。リーナと懇意にしているギルバートが間違えるか?」「そりゃ、ねえだろ」「ってことは——」
「そうか。こいつの名前はリーナって言うのか」
「え、ええ。しかし、なぜウィリアムさんがリーナさんを?」
「オークに襲われていた。それもこの都市にバリスタがあることを知っている奴だ」
「オ、オーク!?リーナさんが相手したら確実に死ぬじゃないですか!?リーナさんは生きてるんですか!?」
“生きているか”。その言葉はぬるりと冒険者たちの耳に入り込んできた。それは生死のはざまで生きている人間の習性といえるかもしれない。明日は我が身だと思うと、自然と耳に入り込んでくる。そして、それが凶報ならば心の隅にとれない膿としてこびりつく。
先ほどまでの喧騒が嘘だったかのように冒険者たちの口は自然と閉じる。
「生きてる」
だからかウィリアムのその言葉は良く響いた。
「後ろで今にも寝そうな俺の連れがオークを足止めしてくれたからな」
アリアは目を閉じて直立していた。これが滝の下や道場中であれば修行をしているのではないかと思ってしまうほど集中した、声のかけにくそうな雰囲気を出している。
だが、ウィリアムは気づいていた。面倒くさいから話しかけづらそうな雰囲気を出して手続きをウィリアムに押し付けようとしていることに。それに、人助けをしたから感謝されということを厭う気持ちもわかるから。人助けは偽善だ、エゴだと思春期をこじらせたことを考えているのではない。単純に面倒くさいのだ。助けられた側からすれば恩人なのかもしれないが、助けた側からすれば赤の他人であることに変わりはない。
自由を愛し、自由に行動したいから根無し草で生活が安定しなくても冒険者なんて職業についている。人助けの感謝で自由を侵害されるのはまっぴらである。
ウィリアムとアリアにとって人助けは胸糞悪くなるから助けているだけだ。目の前で自殺しようとしている人がいたらとりあえず止めるのと同じ心理だ。
「しかし、オークですか……」
「ああ、この弱さでオークだ」
吐き捨てるような雰囲気でウィリアムは話す。
「死んでたぞ。俺たちがあの場にいなければ」
「でしょね。リーナさんは光るものこそあれ、現状はまだゴブリンが精々といった有様ですからね」
ゴブリンとオーク。性欲が高い、意思疎通をする知能を持つなど似ている要素は数知れず。
けれど、質量という点で圧倒的な差がある。
体積で換算すれば軽く60倍は差を持つ。オークの拳は数メートルの石壁ならやすやすと壊す。ゴブリンでは50センチの壁すら壊せないというのに。
「けれど、オークにリーナさんが襲われていることは不自然なんです」
「なに?あれは蛮勇の類ではないのか?」
「ええ。今日の朝もゴブリンを討伐しに行くとはっきり言っていましたし」
「なら、森の外延部にオークが出張ってきた?それはそれでおかしくないか」
オーク。巨大な獣。絶大な破壊力を持つオークは基本的な森では生態系の上位に位置する。
生態系上位種が生存領域である森を捨ててまで逃げる異変。
「不自然ではあるが調査はギルドが行うか」
「ええ。責任をもって」
「ところで、いつになったらこの少女を医務室まで運んでくれるんだ?」
いつものウィリアムであれば背中に60キロもない少女を背負っていることに負担は感じない。だが、疲れているときに重くのしかかる重みはつらかった。
「すいません。気が回らなくて」
謝罪ののちに一拍。
「それと、フランセーズギルドを代表してありがとうございます。一人の有望な少女の命を長らえさせてくれたことを」
律儀にもギルバートは直立し、深々と頭を下げた。
その律義さにウィリアムは苦笑しながら手を振る。当たり前のことに感謝されてもといった雰囲気を身に宿しながら。
「ガキを助けるのは大人の役目だろ」
その言葉にギルバートはあっけにとられ、もう一度感謝の言葉をかけようと思ったころにはすでに背を向けていた。
「おい、アリア。寝てないで起きろ。これから地獄の宿探しだ」「……おいてって。それで、見つかったら呼びに来て」「……お前がやれ」「……いやよ。疲れるじゃない」「俺も疲れてるんだが?」「お姉さん権限よ。探しに行きなさい」「いつからお前は俺の姉になったんだ。俺に妹はいても姉はいねえ」「……シスコン」「いつも言っているが、シスコンじゃねえ」「なら、おんぶしなさいよ。さっきまでしてたでしょ」「……いやだよ……」
そんな気の抜けた会話を繰り広げながら外に歩いていく。
ののしり、たたき、それでも仲がいいことが伝わってしまう二人組。
ぶー垂れながらアリアを背負ったウィリアムは、ドアに手をかけた直前、少しの逡巡ののち顔だけギルバートのほうに向け伝言を頼む。
「リーナっつったか。その嬢ちゃんにオークに襲われた状況を聞きたいから3日後の夕時にギルドにいるように伝えてくれ」
◇
「ねえ、ウィル。何のつもり」
眉間にしわを寄せたアリアは相棒の幼馴染に問うた。
「ここ辺境都市フランセーズに来たのは未来視があったからよね」
「炎上する町と巨悪に対峙する少女、だ」
「ええ。それは聞いたわ。だからこそ、この都市に来たの」
アリアは木造の机をコツコツとたたきながらウィリアムとすり合わせをする。
気になった事があったから。
「なら、なんであのオークのこと、もっと言えばあのリーナとかいう少女に気を遣うの?普段ならギルドから話を聞くことはあるけど当人から話を聞くことは嫌がってたはずよ」
「まあ、今でも当人から話を聞くことは嫌さ」
感謝ですめばいい方で時にはなんでもっと早く来てくれなかったなどの理不尽な罵倒を受けるケースすらあったから。
「だが、今回は当人から話を聞かなければいけないと思ったんだ」
「ギルドからではなく、当人から?何でよ」
「勘だ。だが、あの少女と話せばわかると思う」
その堂々とした態度にアリアはあっけにとられため息を吐いてつぶやく。
「……そんなんだからウィルは知らない人を怒らせるのよ……」
「だが、巨悪に関係することは確かだと思う」
アリアは無言でウィリアムの脛を蹴った。
初めからそう言えと思いながら。
「……!……!…………!!」
ウィリアムは痛みで口をパクパクさせたる顔を赤くしたり青くしたりしながら言葉を探す。
「……もしかしたら、未来視で見えた少女かもしれないんだ」
「共起、ね」
共起。未来視で登場した人物と関係のある人あるいは本人と出会うとぼやけた輪郭があらわになる。
そして、今回ぼやけているのは巨悪とそれに立ち向かう少女。
「ああ。まあ、かもしれないという話だがこと未来視の話ならば可能性の段階でも知らなければならない」
「最悪は避けたいものね。未来視で見えたならこの都市の人々が全員殺されてもおかしくないもの」
巡査した後、ウィリアムはアリアに聞こえない程度の清涼でぽつりとつぶやいた。
「あと、少し、な」
最悪のカギとなるかもしれない少女。
ウィリアムとアリアにとって因縁のある人と関係があるかもしれない少女。
彼女がなぜオークに追われていたのか。
そして、あの歴戦のオークが巨悪なのか。
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