1 / 15
1章:城塞都市フランセーズ編
序章:舞台の幕が上がる
しおりを挟む
町が燃える。木造の商店がごうごうと燃え、道に広がる露店は跡形もなし。
人は惑う。炎から逃げるもの、思い出に逃げるもの、あるいはただ茫然に立ちすくむもの。
空は黒。すすけた灰が空を埋め尽くす。
一人の少女がいた。どこでも買える鋼の剣を両手で持ち、震えた体を叱責し、涙を流しながら巨悪に立ち向かう少女がいた。
少女と巨悪の戦いはあっさりと終わった。
あっけない終わり。
一人の平凡な少女には巨悪なんて倒せないのだから。
一組の男女が草原で目を覚ます。
「また、か……」
黒目黒髪の冒険者ウィルは、見えるが見えないものを見る。
「どうしたの。ウィル」
金髪碧眼の少女アリアは黒髪の冒険者に声をかけた。
「託宣がきた。次の町は辺境都市だ」
「わかった。支度をするね」
「すまない。アリア。また危ない目に合わせることになる」
「いつも言ってるけど謝んなくていいよ。幼馴染でしょ」
二人の冒険者は足を辺境都市の方向へ向ける。
その歩みに惑いなし。
豪華絢爛でありながら、どこかよそよそしい雰囲気を醸し出す建物。
王が住まう城。その一角、謁見の間に軍人が整列していた。
「地方騎士団団長エドワード」
「ここに」
「辺境都市に巨悪の兆しありの予兆が出た。よって、勅令を下す。巨悪を撃て。民から平穏を遠ざけさせるな」
「イエス。マイロード」
ここにひとかどの騎士も立ち上がった。背中に悲劇の業と救済の感謝を背負った騎士がいざ立ち上がる。
向かうは辺境都市。巨悪が芽吹く都市。
舞台袖に役者は勢ぞろい。
無力な少女。未来視の青年。救済の騎士。そして、巨悪。
集うは辺境都市フランセーズ。
これより舞台の幕は開かれた。
人は惑う。炎から逃げるもの、思い出に逃げるもの、あるいはただ茫然に立ちすくむもの。
空は黒。すすけた灰が空を埋め尽くす。
一人の少女がいた。どこでも買える鋼の剣を両手で持ち、震えた体を叱責し、涙を流しながら巨悪に立ち向かう少女がいた。
少女と巨悪の戦いはあっさりと終わった。
あっけない終わり。
一人の平凡な少女には巨悪なんて倒せないのだから。
一組の男女が草原で目を覚ます。
「また、か……」
黒目黒髪の冒険者ウィルは、見えるが見えないものを見る。
「どうしたの。ウィル」
金髪碧眼の少女アリアは黒髪の冒険者に声をかけた。
「託宣がきた。次の町は辺境都市だ」
「わかった。支度をするね」
「すまない。アリア。また危ない目に合わせることになる」
「いつも言ってるけど謝んなくていいよ。幼馴染でしょ」
二人の冒険者は足を辺境都市の方向へ向ける。
その歩みに惑いなし。
豪華絢爛でありながら、どこかよそよそしい雰囲気を醸し出す建物。
王が住まう城。その一角、謁見の間に軍人が整列していた。
「地方騎士団団長エドワード」
「ここに」
「辺境都市に巨悪の兆しありの予兆が出た。よって、勅令を下す。巨悪を撃て。民から平穏を遠ざけさせるな」
「イエス。マイロード」
ここにひとかどの騎士も立ち上がった。背中に悲劇の業と救済の感謝を背負った騎士がいざ立ち上がる。
向かうは辺境都市。巨悪が芽吹く都市。
舞台袖に役者は勢ぞろい。
無力な少女。未来視の青年。救済の騎士。そして、巨悪。
集うは辺境都市フランセーズ。
これより舞台の幕は開かれた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる