悪役令嬢(吸血鬼)に転生したけど女の子の血しか吸えないらしい

三門鉄狼

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ルーデシア

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 ジャスティン王子に突然襲われ、私は逃げ回っていた。

 襲われるといっても、ロマンチックな意味はまったくない。
 普通に、本気で、命を狙われていた。

 なにしろ魔法を詠唱して、私に直撃させようとしてきたからね。

 本当に唐突すぎる。

 たしかにこの世界の元ネタ――って言い方でいいのかはわからないけど――である『ロマンス・オブ・ファンタジア』のゲームシナリオでは、シルフィラは彼に殺される。

 でもそれは、シルフィラが彼を手に入れたがって、邪魔なヒロイン=ルーデシアを殺そうとしたからだ。

 それを私は知っていたから、極力二人とは接触しないよう気をつけてたのに。

 なんで突然殺そうとしてくるの!

 ――バン!

 ぎゃーーーーー!

 またしても本気の一撃。
 私のすぐ横の地面に穴が開く。

「待ちたまえ、ブラドフィリア嬢」

 待つわけないでしょ、バカ!

 声だけ優しげだけど、ジャスティン王子の顔は本気だ。
 侮蔑のこもった表情で私を見下ろし、殺意のこもった眼差しで私を睨んでいる。

 うう、逃げたいけど、体力がなくて逃げられない。

 魔力が足りない。
 血が足りない。
 でも、吸えないのだ。

 あ、ヤバい。
 これ詰んだかな。

 ジャスティン王子がすぐ間近で手を掲げ、魔法の詠唱をする。
 この距離じゃ避けられないよ……。

 ああ……せっかく転生したのになぁ。
 もうちょっと生きたかったなぁ。

「誰かいるんですか?」

 と、そのとき、寮のほうから声がした。

「ちっ」

 ジャスティン王子の判断は早かった。
 彼は即座に詠唱を中断し立ち去る。

 た、助かったの、かな……。

「あ、シルフィラさん!」

 誰かが私の名前を呼んで駆け寄ってくる。

 誰だろう。
 声には聞き覚えがある。
 けど、それが誰か確認するより早く、私は気を失ってしまった。
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