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第6章 ガルアシラ・ヴォルフォンシアガルド編
220 エドの目的
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ロロコを治療し終えた俺は、エドと向き合った。
エドの背後には怪しく脈動する肉塊がある。
あれが魔王の肉片だろう。
「素晴らしい!」
エドは場違いに明るい声で言ってくる。
「世界中の魔力と接続し、あらゆる術式を体得し、回帰魔法も実現させた。これであなたは名実ともに、魔王の再来となった」
〈なに言ってんだ?〉
回帰魔法?
魔王の再来?
いや、そんな単語の訳のわからなさよりも。
エドの、余裕な態度が不快だった。
まるで全てを自分が仕組んでいるかのような。
全てが自分の手のひらの上であるかのような。
そんな態度だ。
「そうですよ。あれほどの傷を、今ほどの短時間で治すなど、通常の回復魔法で行うなど不可能です。あなたは大切な彼女を治すために最適な術式を、自分が知りうる中から選び出して使った。それは回復魔法ではなく、回帰魔法――因果をねじ曲げ状況そのものを前段階へと回帰させる魔法です」
ほーん……?
〈ま、なんでもいいよ。ロロコが助かったんなら〉
それに、あんたをぶっ飛ばすことにも変わりはないんだし。
「そうですか? 回帰魔法を扱うことができるのは魔王だけだとしても?」
〈…………〉
魔王の再来ってのはそういう意味か。
〈だとしても知ったことじゃないな。俺は魔族の王様になんてなる気はない。魔王と同じような体質になったからって、魔王と同じように生きなきゃいけない理由なんてないだろ〉
「もちろんです。僕もそんなことは望んじゃいませんよ。僕の目的はもっと有益なことです」
〈この世界をこんなに引っ掻き回しといて、有益もないもんだと思うけど〉
「そんなことはありません。僕と、それにあなたにとっても」
俺にとっても?
なに言ってるんだ、こいつは?
そりゃ元々は俺にとってこの世界は縁もゆかりもない。
ただの転生先だ。
家族もいなけりゃ友達もいない。
どこもかしこも馴染みのない異世界だった。
けど、今はもう違う。
多くの仲間ができて。
顔馴染みができて。
一緒に戦ったり。
一緒に笑ったり。
生死を共にしてきた。
その世界をこんなメチャクチャにしておいて。
それでもやるべきことなんて俺には思いつかない。
けど。
エドはあくまで笑みを浮かべたまま。
両腕を左右に広げ、まるで聖者のように。
自分の目的を告げた。
「これであなたと僕は、魔王の力を有したまま元の世界に帰ることができるのです」
エドの背後には怪しく脈動する肉塊がある。
あれが魔王の肉片だろう。
「素晴らしい!」
エドは場違いに明るい声で言ってくる。
「世界中の魔力と接続し、あらゆる術式を体得し、回帰魔法も実現させた。これであなたは名実ともに、魔王の再来となった」
〈なに言ってんだ?〉
回帰魔法?
魔王の再来?
いや、そんな単語の訳のわからなさよりも。
エドの、余裕な態度が不快だった。
まるで全てを自分が仕組んでいるかのような。
全てが自分の手のひらの上であるかのような。
そんな態度だ。
「そうですよ。あれほどの傷を、今ほどの短時間で治すなど、通常の回復魔法で行うなど不可能です。あなたは大切な彼女を治すために最適な術式を、自分が知りうる中から選び出して使った。それは回復魔法ではなく、回帰魔法――因果をねじ曲げ状況そのものを前段階へと回帰させる魔法です」
ほーん……?
〈ま、なんでもいいよ。ロロコが助かったんなら〉
それに、あんたをぶっ飛ばすことにも変わりはないんだし。
「そうですか? 回帰魔法を扱うことができるのは魔王だけだとしても?」
〈…………〉
魔王の再来ってのはそういう意味か。
〈だとしても知ったことじゃないな。俺は魔族の王様になんてなる気はない。魔王と同じような体質になったからって、魔王と同じように生きなきゃいけない理由なんてないだろ〉
「もちろんです。僕もそんなことは望んじゃいませんよ。僕の目的はもっと有益なことです」
〈この世界をこんなに引っ掻き回しといて、有益もないもんだと思うけど〉
「そんなことはありません。僕と、それにあなたにとっても」
俺にとっても?
なに言ってるんだ、こいつは?
そりゃ元々は俺にとってこの世界は縁もゆかりもない。
ただの転生先だ。
家族もいなけりゃ友達もいない。
どこもかしこも馴染みのない異世界だった。
けど、今はもう違う。
多くの仲間ができて。
顔馴染みができて。
一緒に戦ったり。
一緒に笑ったり。
生死を共にしてきた。
その世界をこんなメチャクチャにしておいて。
それでもやるべきことなんて俺には思いつかない。
けど。
エドはあくまで笑みを浮かべたまま。
両腕を左右に広げ、まるで聖者のように。
自分の目的を告げた。
「これであなたと僕は、魔王の力を有したまま元の世界に帰ることができるのです」
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