上 下
254 / 286
第6章 ガルアシラ・ヴォルフォンシアガルド編

214 リビングアーマー戦記

しおりを挟む
〈ぜんたーい、止まれ!〉

 行進を続けていた6000体のリビングアーマーが一斉に停止する。

〈右向けー、右!〉

 6000体のリビングアーマーが一斉に右を向く。

〈上下分離ー!〉

 6000体のリビングアーマーが腰パーツから上を宙に浮かせる。

 よしよし。
 だいぶいい感じに動かせるようになってきたな。

 ちなみに、実際には言葉を発する必要はない。
 無言でも操作することができる。

〈…………〉

 6000体のリビングアーマーがさらに兜を上に浮かせた。

 ほらね!

 さらに言うなら、操っているという感覚もあまりない。
 自分の身体の一部みたいなもんだからな。
 ただ、まだちょっとだけ違和感はある。
 義手とかを初めて使うときってこんな感じなのかな?

 ともかく、これを完璧に違和感なく動かせるようになる必要がある。
 なにしろ、クーネアさんによれば……。

◆◇◆◇◆

「エドは自分がこもっている洞窟全体に魔力障壁を構築しています」

〈それで攻撃できない、交渉することもできないってわけか〉

「はい。もともと彼が組み立てる術式はかなり独特で、通常の魔法知識では解析することも難しいのです」

 こことは違う世界から来たゆえのセンス。
 それに魔王を発掘して得た知識ってところか。

 まあ、同じ異世界から来た俺は魔法の知識は皆無だけどな!

「しかしわたくしは、長年彼の研究をサポートしてきましたので、解析は可能です」

 おお!

「解析の結果、それを破壊する術はないことがわかりました――少なくとも、普通のやり方では」

〈それで、俺の出番ってわけか〉

「そうです。6000体――1000体はモンスターに破壊された場合の予備となりますので、正確には5000体のマジカルアーマーを洞窟の周囲の所定の位置に配置し、刻まれた術式を発動させることで、障壁を破壊できます」

 クーネアさんは眼鏡を持ち上げながら告げる。

「エドは、洞窟でなにかの作業を行う間邪魔が入らないよう、複雑な障壁を構築したのでしょうが、さすがに6000体のマジカルアーマーを製作されることまでは考えに入れていないでしょう。障壁を破壊できれば、彼の企みがなんであれ、阻止できるはずです」

◆◇◆◇◆

 ……とのことだった。

 というわけで俺は、6000体の鎧の操作訓練を行っているというわけだった。

 なにしろ障壁破壊のためには、ちょっとのずれも許されないみたいだからな。

 目の前にはクーネアさんが用意した洞窟周辺の地図。
 そこに×印で、マジカルアーマーを配置する場所が記されている。

 なんか戦記もののファンタジーみたいでちょっとワクワクするな。

 ……おっといけない。
 訓練に集中集中……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...