上 下
253 / 286
第6章 ガルアシラ・ヴォルフォンシアガルド編

213 6000体操っても大丈夫!

しおりを挟む
 本拠地の建物から移動した。

 今度は全員じゃなくて、俺とロロコとクーネアさんの三人。

 本拠地の建物は、想像したとおり帝都の役所だった建物らしい。
 そこから裏手に回ると公園がある。
 
 かつては市民の憩いの場だったであろうそこには大量の鎧が置かれていた。

〈これは……〉

 俺は思わず息を呑む。
 さすがに壮観だ。

「6000体すべてが高性能のマジカルアーマーです。クラクラ様とエルフの皆様、アルメル様とドワーフの皆様が共同で術式を開発し、二年間で製造した最強のリビングアーマー旅団です」

 マジか……。
 すごい手間がかかってるんじゃないか、それは?

「普通でしたら、ドワーフの熟練の職人が一年はかけて製造するものです。チェインハルト商会の力を結集して職人を集め、各地の研究施設を流用して工場にし、間に合わせました」

 そうか。
 エドが世界を滅ぼすなんて言い出したから、商会も彼から離れたのか。

〈しかし、リビングアーマー軍団って言っても、中身があるわけじゃないんだな〉

「はい。正確にはリビタン様が制御下に置くことで初めてリビングアーマーになります」

 なるほど。
 しかし6000体か……。

 前に54体までは経験あるけど。
 しかも今回はマジカルアーマーだ。
 制御し切れるかな……。

「でもリビたん、一回は大陸中の魔力を制御してたよ」

〈それは天空塔ダンジョンの術式の補助があったからだろ?〉

 それに今はなんか、感覚が昔に戻ってる感じがあるんだよな。
 転生したばかりの頃の、レベルが低い状態。

「心配いりません。それは、意図的に力を制御されているだけですので」

〈え、そうなの?〉

「その鎧もマジカルアーマーなのですよ。ただし、力を制御する術式が施してあるものですが」

 言われて探ってみると……確かに。
 エッチングによる術式が内側にびっしりだ。

「リビタン様の今の力は強大すぎて、目覚めた際にそのまま力を発揮してしまっては危険ですので、そのようなマジカルアーマーを用意させていただきました。今はもうしっかり覚醒されてらっしゃるようなので、あちらの指揮用マジカルアーマーに移っていただいて、軍団を操ってみても大丈夫かと思います」

 と近くにあった鎧を指し示すクーネアさん。

 そういうことならちょっと試してみるかな。
 力が制御されてるって言われてみると、確かになんだか狭苦しい感じがするし。

 ……よし。

 すっと、意識が移動する。
 感覚としては、意識を二つに分割して、まず、両方の鎧を自分のものにする。
 その後、元いた方の鎧から意識を引き抜く感じ。

 うん、うまくいったな。

〈すごい……力が一気に解放された〉

 これまで目隠しされてたのを急に取られた感じと言うか。
 うーん、例えが難しいな。
 でもとにかく、めちゃくちゃ自由になった気がする。

〈よし、それじゃ……全員、起立!〉

 ――ガシャガシャガシャ!

 とこれまでパーツに崩した状態で置かれていた鎧が一斉に動き出す。

 6000体すべてが一糸乱れず組み上がり、フル装備の状態で整列した。

 おおー。
 これはなかなか気分がいいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...