251 / 286
第6章 ガルアシラ・ヴォルフォンシアガルド編
211 魔族と魔物の世界
しおりを挟む
「大変動が起こった時、拙者はちょうどヴェルターネックの森の近くにおりました」
ふと空を見ると、人が宙に浮かんでいたのだそうだ。
「その片方に見覚えがありました。一度だけ帝都で拝謁した、皇帝陛下――フィルシオール十七世陛下です」
そして、その皇帝を抱えて飛んでいたのは、闇色の肌の女性。
「そのときは誰だかわかりませんでしたが、後からそれが魔族として覚醒したライレンシア博士だと知りました」
ライレンシア博士は帝都で魔族として覚醒したらしい。
そこから皇帝を連れて大陸中央部まで飛んできた。
そして大変動を引き起こした……。
〈ライレンシア博士が魔族として覚醒したのはどうしてなんだ?〉
「彼女にはもともと魔族の血が混じっていたようです」
とクーネアさんが言ってくる。
「リビタン様が天空塔ダンジョンの術式を書き換え、世界の魔力の流れが変化しました。そのことで魔族の血統が目覚めやすくなった……ということはあると思います。しかし直接のきっかけはエドです」
エドは自分が体内に取り込んでいた魔王の力を、その魔力の流れに乗せて拡散したのだという。
魔王。
世界の全ての魔力の源。
その濃い闇の力に反応して、魔族の血統の濃い者が魔族として覚醒した。
ヒナワが続ける。
「大変動が起こると、ヴェルターネックの森から一斉に魔物が飛び出してきました。魔族となったライレンシア博士が力を拡散したために、さらに魔王の力の影響が広まったということでしょう」
そしてその直後、大陸が真っ二つに割れた、とのこと。
さらに影響は大陸全土に広まる。
「大陸中で、魔族として覚醒する者が続出したのです」
各地で、闇色の肌に変質した人々が他の人間を襲う。
ある者はその土地で支配者となった。
またある者はモンスターと共にダンジョンに消えた。
そして、多くの者は皇帝とライレンシア博士の元に集ったという。
「皇帝とライレンシア博士はその後、この帝都ではなく、近くの廃都ダンジョンに拠点を置き、魔族を受け入れているそうです」
ってことは、三つの勢力のうちの一つ、ヴォルフォニア帝国は……。
「はい。魔族の国家ということになります」
それでダンジョンが拠点か……。
ベルが言う。
「そんなことが起こったので、エルフを帝都に連れて行こうとしていた騎士団長のガイアンも考えを改めたみたいでした。僕と、クラクラさんとドグラさんと協力して、エルフの皆さんを安全な場所に移送したんです」
なるほどな……。
〈そういえば、そのガイアンはここにはいないのか?〉
「彼は……皇帝を諫めると言って廃都ダンジョンに向かって……それっきりです」
そうか……。
彼だけじゃない。
それだけの大異変だ。
きっと多くの人が犠牲になってる。
でもさ。
それって……。
俺が天空塔ダンジョンの術式を書き換える。
→
世界中の魔力の流れが変化する。
→
エドがその流れに魔王の力を乗せる。
→
ライレンシア博士が魔族として目覚めて、その力で大変動を起こす。
……つまり全ての原因って。
「違うよ、リビたん」
と、ロロコがまるで俺の心を読んだかのようなタイミングで言ってきた。
「リビたんが術式を書き換えなかったら、天空塔ダンジョンは倒壊して、世界はとっくに滅亡してた。それを救ったのはリビたんだよ」
〈ロロコ……〉
くそっ……。
この世界に来てから、この犬耳っ娘には助けられてばかりだな。
「ああ……そうだな」
俺は頷く。
さて、大体の事情はわかってきた。
詳しいことは全然だけどな。
あんまり細かいことをいつまでも聞いてるわけにもいかないだろう。
「で、俺は何をすればいいんだ?」
そのために、目覚めさせたんだろう?
ふと空を見ると、人が宙に浮かんでいたのだそうだ。
「その片方に見覚えがありました。一度だけ帝都で拝謁した、皇帝陛下――フィルシオール十七世陛下です」
そして、その皇帝を抱えて飛んでいたのは、闇色の肌の女性。
「そのときは誰だかわかりませんでしたが、後からそれが魔族として覚醒したライレンシア博士だと知りました」
ライレンシア博士は帝都で魔族として覚醒したらしい。
そこから皇帝を連れて大陸中央部まで飛んできた。
そして大変動を引き起こした……。
〈ライレンシア博士が魔族として覚醒したのはどうしてなんだ?〉
「彼女にはもともと魔族の血が混じっていたようです」
とクーネアさんが言ってくる。
「リビタン様が天空塔ダンジョンの術式を書き換え、世界の魔力の流れが変化しました。そのことで魔族の血統が目覚めやすくなった……ということはあると思います。しかし直接のきっかけはエドです」
エドは自分が体内に取り込んでいた魔王の力を、その魔力の流れに乗せて拡散したのだという。
魔王。
世界の全ての魔力の源。
その濃い闇の力に反応して、魔族の血統の濃い者が魔族として覚醒した。
ヒナワが続ける。
「大変動が起こると、ヴェルターネックの森から一斉に魔物が飛び出してきました。魔族となったライレンシア博士が力を拡散したために、さらに魔王の力の影響が広まったということでしょう」
そしてその直後、大陸が真っ二つに割れた、とのこと。
さらに影響は大陸全土に広まる。
「大陸中で、魔族として覚醒する者が続出したのです」
各地で、闇色の肌に変質した人々が他の人間を襲う。
ある者はその土地で支配者となった。
またある者はモンスターと共にダンジョンに消えた。
そして、多くの者は皇帝とライレンシア博士の元に集ったという。
「皇帝とライレンシア博士はその後、この帝都ではなく、近くの廃都ダンジョンに拠点を置き、魔族を受け入れているそうです」
ってことは、三つの勢力のうちの一つ、ヴォルフォニア帝国は……。
「はい。魔族の国家ということになります」
それでダンジョンが拠点か……。
ベルが言う。
「そんなことが起こったので、エルフを帝都に連れて行こうとしていた騎士団長のガイアンも考えを改めたみたいでした。僕と、クラクラさんとドグラさんと協力して、エルフの皆さんを安全な場所に移送したんです」
なるほどな……。
〈そういえば、そのガイアンはここにはいないのか?〉
「彼は……皇帝を諫めると言って廃都ダンジョンに向かって……それっきりです」
そうか……。
彼だけじゃない。
それだけの大異変だ。
きっと多くの人が犠牲になってる。
でもさ。
それって……。
俺が天空塔ダンジョンの術式を書き換える。
→
世界中の魔力の流れが変化する。
→
エドがその流れに魔王の力を乗せる。
→
ライレンシア博士が魔族として目覚めて、その力で大変動を起こす。
……つまり全ての原因って。
「違うよ、リビたん」
と、ロロコがまるで俺の心を読んだかのようなタイミングで言ってきた。
「リビたんが術式を書き換えなかったら、天空塔ダンジョンは倒壊して、世界はとっくに滅亡してた。それを救ったのはリビたんだよ」
〈ロロコ……〉
くそっ……。
この世界に来てから、この犬耳っ娘には助けられてばかりだな。
「ああ……そうだな」
俺は頷く。
さて、大体の事情はわかってきた。
詳しいことは全然だけどな。
あんまり細かいことをいつまでも聞いてるわけにもいかないだろう。
「で、俺は何をすればいいんだ?」
そのために、目覚めさせたんだろう?
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる