上 下
213 / 286
第5章 天空塔ダンジョン編

179 両脚とクラクラ・Ⅰ

しおりを挟む
 どうも、リビングアーマーの俺です。
 今回は両脚パーツだけでお送りしております。

 隣を歩いているのはエルフのクラクラ。

 ちなみに腕パーツだけになったときみたいに装着してもらってはいない。
 両脚だけの俺はクラクラの隣を歩くみたいに移動している。

 いや、フヨフヨ浮いて移動するほうが早いんだけどね。
 脚だとどうもこんなふうに動いたほうがしっくりくるのだ。
 
「しかし妙なところだな。ダンジョンの中とは思えん」

 周りを見回しながらそんなことを言うクラクラ。

 たしかにその通りだ。

 苔モンスターに押し合いへし合いされ、バラバラになってしまった俺。
 その一部がクラクラと一緒にこの別フロアにたどり着いた。

 なぜかパーツ同士での意識の共有ができないので、ほかの状況はわからない。

 すごい落ち着かない気分だな。
 前はバラバラになった身体の意識の共有なんてできなかったのに。
 いや、そもそもバラバラになったら死んでたか。

 ともかくそんな感じで今歩いているのは『街』だった。
 建物が立ち並んでいて、道が伸びていて、広場なんかがあるあの街。
 ただし人はいない。
 生活感もしない。
 無人の、嘘くさい街。

 街は城壁で囲まれていて、その外は見えない。
 多分、そこがフロアの壁でもあるんだろう。
 そこまでたどり着いたら、次のフロアにいけるってことかもしれない。

 しかし……。

〈全然城壁に近づけないな……〉

 さっきからずっと歩いてるのに、城壁が近くに迫ってこない。

 まるで知らない間に同じ場所をぐるぐる回らされているみたいだ。

「これは歩いていてはダメなのではないか?」

 うん、俺もそんな気がしてた。

〈仕方ない。クラクラ。ちょっと俺を履いてくれ〉

「わかった」

 うなずき、脚パーツに脚を入れるクラクラ。

〈よし。ゆっくり動くから上手くバランスをとってくれ〉

 そう言って俺は少しずつ宙に浮き上がっていく。

 そう、地上がダメなら空中からってわけだ。

 クラクラは上手にバランスを取っている。
 さすがエルフにして剣士。
 身体能力が高いな。

 やがて俺は周りの建物よりも高い位置へ上る。

 そのまま上昇しつつ、城壁へ近づいていく。

「これなら上手くいきそうだな」

〈ああ……〉

 しかし城壁の向こう側はどんなふうになってるんだ?

 と思っていたら――

 ぐいーーーーーーーーーん!

 と城壁が背伸びをするみたいに俺たちよりもさらに高いところまで大きくなった。

 おいおい、そんなのありかよ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

処理中です...