上 下
190 / 286
第4章 フィオンティアーナ編

162 原初魔法(ヤバい)

しおりを挟む
 苔モンスター、マースモースが体内に入ってしまって、苦しそうに転げ回るドグラ。

 ドラゴン態のままだもんだからえらいことになってる。

〈うぉっ! わ!〉

 危ねえ!

 巨体に潰されるところだった。

 俺はロロコとクラクラを抱えて高速移動する。
 ラファもアルメルを背負って退避する。

「うおおおお! ぐおおおお! ぬおおおおお!」

 上げる声はどこか間抜けだが、ドグラは本当に苦しそうだ。

 周囲の建物にぶつかって、ガラガラと破壊しながらのたうち回る。

 頭が教会堂みたいな建物に突っ込んで穴を開け。
 尻尾が背の高い時計塔を真ん中でへし折って。

 さっき炎で破壊されなかったところをどんどん壊していく。

「わ、うわ!」

 ん、どうしたラファ?

〈わわ、わっ!〉

 苔!

 ドグラの攻撃から生き残ったマースモースの一部がまた増殖してる!

 マジかよ……。

「ドグラを狙ってる?」

 ロロコの言葉に見ればそのとおりだ。

 苔はさっきみたいに無鉄砲に広がっているわけじゃなかった。
 はっきりとドグラの方を目指して増殖している。

「ドグラの膨大な魔力を取り込もうとしているのか……」

 クラクラが呻く。

「ドラゴンの炎でさえ生き残って、その魔力まで奪ってしまうんですか……これは本当にマズいんじゃ……」

 アルメルがつぶやく。

 どうする?
 このままじゃ本当にこの苔が世界を埋め尽くしてしまうかもしれない。

 せっかく転生して。
 ボロッボロの鎧だったけどなんとか生き延びて。

 ロロコやクラクラやアルメルやラファやドグラ。
 いろいろな人と知り合って。

 なんかこの世界もいいなって思えてきたところだってのに。

 それはないだろ。

 ああ、ないない。

 だったら……。

〈ロロコ、クラクラ、ちょっと降りてくれ〉

「なにするの、リビたん」

〈ちょっと思いついたことがある。なんとかできるかもしれない〉

「……なにするの」

 さすがロロコ。
 察しがいい。

 けど、やめるつもりはない。

〈ラファ! 二人を頼む!〉

 そう叫んで、俺は二人を下ろすと、増殖する苔の方へ向かう。

 そして、手のひらに魔力を集中し、それを撃ち出す。

 前に最小の力を放って洞窟の壁に大穴を開けちゃったからな。
 今回は全力の半分くらいのイメージで。

 ——ヒュィン。

 目も眩むような閃光が走ったかと思うと。

 ——ドゴオオオオオン!!!!

 え、あれ?

 やっべ、思ったよりずっと威力が大きいぞ?

 俺のイメージでは。

 ドグラに向いている苔の興味を俺のほうに惹きつけるつもりだったのだ。
 そのために魔法ビームを放った。

 そうすれば苔は魔力を求めて俺のほうに群がってくる。
 俺の身体に取りついた苔なら、俺のリビングアーマーとしての能力でなんとかできる。

 なんとかできなくても、最悪、苔を鎧ごと消滅させる。
 そのために、俺の元に苔を集める。

 そう考えたのだ。

 けど……。

 ぜんっぜん、そんなこと考える必要なかったっぽいね。

 全力の半分の攻撃で。
 フィオンティアーナの一角には巨大なクレーターができて。
 苔は地面ごと、ぜんぶ消失してしまった。

 いや…………ヤバいでしょ、この魔法。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...