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第4章 フィオンティアーナ編
155 魔王が消えた?
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どうも、リビングアーマーの俺です。
フィオンティアーナ近郊にあるチェインハルト商会の実験施設。
その地下に向かう階段を俺たちは降りていた。
先頭に立つのは秘書のクーネアさん。
先ほど彼女は、クノイチのヒナワに問い詰められた。
この施設に保管されている謎の肉塊について。
それをエドは『魔王陛下』と呼んでいたらしい。
ドラゴン娘のドグラによれば……。
魔王とは、この世界に満ちている魔力の源のことらしい。
一方ヒナワの出身地ヤマトの里の伝承によれば……。
魔王は、原初の魔法使いヘルメスに倒された、魔族の長のことらしい。
どっちの伝承が正解なのかはよくわからないが……。
どちらにしろ、そんなものを隠し持っている商会は怪しい、というわけだ。
しかしクーネアさんは落ち着いてるな。
まあ、この人はわりといつでもクールな感じだけど。
すでに言い訳を用意してあるのだろうか。
あ、もしかして俺たち全員始末するつもりだったり……!
と思い至ったところで、クーネアさんが立ち止まった。
「ご覧ください」
どうやらすでに到着していたらしい。
俺たちはクーネアさんの示す方向に目を向ける。
巨大な地下空間。
よくわからない機械が大量に置かれている。
職員がそれらを操作して、なにか作業をしている様子だ。
そしてその中央には——
「なにもない……?」
ヒナワが愕然とした様子で呻いた。
「はい、なにもございません」
クーネアさんが淡々と答える。
「ば、バカな……そんなはずはない! 拙者はたしかに見たのだ。巨大な肉塊がここに置かれていて、いくつもの配線で繋がれていて、エドがそれに向かって『魔王陛下』と呼びかけていたのだ!」
「ですが、ないものはないのです」
「…………」
さすがに沈黙するヒナワ。
……いやいや。
いやいやいやいや!
俺もさすがにこれで『ないんじゃん! ヒナワの嘘つき!』とはなりませんよ。
そもそも前にここに来たとき、ドグラがめっちゃ怪しんでたからね。
まあ、彼女が警戒していたのはエド自身だったけど。
それでも、彼がなにか隠しているのは間違いない。
クーネアさんが言ってくる。
「ここである実験をしていたのは事実ですが、それは皆様にお渡しした高純度の魔鉱石を取り外すために、中止いたしました」
〈なんの実験をしてたんですか? 前に、見せてくれるって言ってましたよね?〉
フリエルノーラ国にいたときの話だ。
商業都市群で大規模な計画を進行中とかなんとか。
俺は忘れてないぜ。
「お話ししてもよろしいのですが、長くなってしまいます。よろしいのですか? ラファ様に魔鉱石を届けなくてはいけないのではありませんか?」
〈…………そうですね〉
明らかに話を逸らされた。
けど、クーネアさんの言うとおりだった。
今はラファを助けるのが最優先だ。
俺たちはチェインハルト商会の実験施設を後にした。
ちなみにヒナワは放免ということになった。
俺たちを逃亡者探しに行かせたのは、完全に魔王をどこかに隠すための時間稼ぎだったっぽいな……。
フィオンティアーナ近郊にあるチェインハルト商会の実験施設。
その地下に向かう階段を俺たちは降りていた。
先頭に立つのは秘書のクーネアさん。
先ほど彼女は、クノイチのヒナワに問い詰められた。
この施設に保管されている謎の肉塊について。
それをエドは『魔王陛下』と呼んでいたらしい。
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しかしクーネアさんは落ち着いてるな。
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「ご覧ください」
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よくわからない機械が大量に置かれている。
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そしてその中央には——
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ヒナワが愕然とした様子で呻いた。
「はい、なにもございません」
クーネアさんが淡々と答える。
「ば、バカな……そんなはずはない! 拙者はたしかに見たのだ。巨大な肉塊がここに置かれていて、いくつもの配線で繋がれていて、エドがそれに向かって『魔王陛下』と呼びかけていたのだ!」
「ですが、ないものはないのです」
「…………」
さすがに沈黙するヒナワ。
……いやいや。
いやいやいやいや!
俺もさすがにこれで『ないんじゃん! ヒナワの嘘つき!』とはなりませんよ。
そもそも前にここに来たとき、ドグラがめっちゃ怪しんでたからね。
まあ、彼女が警戒していたのはエド自身だったけど。
それでも、彼がなにか隠しているのは間違いない。
クーネアさんが言ってくる。
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〈なんの実験をしてたんですか? 前に、見せてくれるって言ってましたよね?〉
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〈…………そうですね〉
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けど、クーネアさんの言うとおりだった。
今はラファを助けるのが最優先だ。
俺たちはチェインハルト商会の実験施設を後にした。
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