上 下
172 / 286
第4章 フィオンティアーナ編

146 オークには勝てなかったよ……(船が)

しおりを挟む
 どうも、リビングアーマーの俺です。

 ヴェティアンの大商人アントンさんに頼まれ、荷物を運んでいる途中。
 船でポローナニアに上陸しようとしたんだけど。
 ポローナニアの岸はオークで埋め尽くされていた。

 しかも突然積荷が爆発!
 中の水が噴き出してしまう。
 船は大破? 中破?
 船底に穴は空いてないらしいけど、見た目的にはいつ沈んでもおかしくなさそう。

 しかもオークたちが泳いで船に迫ってくる。
 積荷から噴き出した水に、オークが好きな臭いを混ぜ込んであるらしい。

〈どういうことだ? たまたまそういう品をアントンさんは帝国に依頼されてたのか?〉

「たぶん、違うでしょうね」

 だよねー。

 だってさっき、案内役の男の人が海に飛び込んで逃げてったけどさ。
 そのとき『悪いなー!』って叫んでたもんね。
 もう確信犯だよね。

 あ、確信犯ってこの使い方間違ってるんだっけ?
 いやそんなことはどうでもいい。

 今はそれよりオークだ。

「イイニオイガスル」
「メシカ? メスカ?」
「トニカクウバエ!」

 うわわわ!
 乗り込んできたぞ!

「おいあんた! 危ないぞ!」

 船員が叫ぶ。
 見れば、クラクラが剣も抜かずオークの方へフラフラ歩いていく。

 そうだった。
 エルフにはオークの催淫効果が発動してしまうんだった。

〈アルメル、クラクラを頼む!〉

「は、はい」

 よし、これで大丈夫。
 さてと。

 俺は船の側面へ走っていき、乗り込んでこようとするオークを殴り飛ばす。

「グオ!」

 悲鳴を上げて落ちていくオーク。

「ファイア!」

「アヂイ!」

 ロロコの炎魔法が海面を走る。
 あぶられたオークたちが慌てて引き返す。

 シュンシュンシュン!

「グワ! ナンダ!」

 ヒナワが音もなく飛び回り、オークたちに手裏剣を投げつける。
 オークたちは腕を押さえながら落ちていく。

 ……ん?
 あれ?
 ドグラはどうした?

「ドグラさん、どうしました?」

 アルメルの声に目を向けると、ドグラが苦しそうにうずくまっていた。

「すまぬ……この臭い……すごく苦手なのじゃ……」

 どういうことだ?
 オークは好きな臭い。
 ドラゴンにとっては嫌いな臭いってことか?

「だめ、だ……人化が解けてしまう……我は一旦、去るぞ……」

 そう言うと、ドグラは光を放ちながら宙へ飛ぶ。
 次の瞬間、船の上空で彼女はドラゴンの姿に戻っていった。

「ぎゃー! 突然エンシェント・ドラゴンが出現したー!」
「もうダメだー! 俺たちここで死ぬんだー!」

 パニックになる船員たち。
 まあそりゃそうだ。

〈あの、安心してください。あのドラゴンは味方です〉

「嘘つけ! ドラゴンが人間の味方なわけあるか!」

 一斉に叫ぶ船員たち。
 気持ちはわかる。

 けど、ドグラは具合が悪そうにフラフラ陸地へ飛んでいった。
 ついでにしっぽで、岸にいるオークたちを薙ぎ払ってくれた。

 しかしオークはなかなか怯んでくれない。
 どんどんどんどん船に取り付いてきて、こっちの手が足りなくなってきた。

 そして。

 バキバキバキ!

 下の方で不吉な音が聞こえてきた。

「おい! オークが下から船底を破壊してきてるぞ!」

 うわ!
 マジかよ!

「くそ! もうダメだ! 全員海に飛び込め!」

 船員たちは即座に判断し、海に飛び込んでいく。

「ほら、あんたも鎧なんか脱いで早く逃げろ!」

〈いや、俺は……〉

 脱いだら中身ないんだよ!
 しかしここで正体をバラしたら、この人たちますますパニックになるだろう。

 仕方ないな……。

〈俺は、みんなが逃げるまでオークを食い止めます。この鎧はすぐに脱げるんで大丈夫です〉

「そうか……? そういうことなら頼るけど、逃げ遅れるなよ?」

〈はい、ありがとうございます〉

 俺は頷きながらオークに右ストレート。

 船員は海に飛び込んでいく。

〈えーと、この中で泳げないやつっていたっけ?〉

 ロロコ、アルメル、ヒナワは大丈夫っぽい。

「クラクラさんはわかりませんけど、この調子だと……」

 そうだった……。
 クラクラは「オーク、オーク……」と呟きながらはあはあしてる。
 俺の話聞いてない。

 だんだん症状が重くなってないか?

〈よし、じゃあクラクラは俺が水面を飛んで運ぶ。みんな、ついてきてくれ〉

 みんな頷く。
 よし、じゃあ行こう。
 
 俺たちは海に飛び込む。

 その直後、船は大量のオークに取り付かれ、あっけなく沈んでいった。

 あーあ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...