169 / 286
第4章 フィオンティアーナ編
143 ヴェティアン脱出大作戦
しおりを挟む
オークの襲撃を受けている水の都ヴェティアン。
市民のみんなは避難所として提供されている大商人の屋敷に逃げ込んでいる。
俺たちも同じだ。
で、あとは雇った傭兵がオークを倒してくれてめでたしめでたし……のはずだった。
「傭兵が全員逃げちまったぞ!」
屋敷に飛び込んできた人がそんなことを言ったもんだから屋敷は大騒ぎだ。
「おいおい、どうするんだ……?」
「オーク倒せるやつなんてこの街にいないだろ……」
「だから自警団を組織しといたほうがいいって言ったんだ!」
「お前だって商売に支障が出るのは困るって言ってただろ!」
しまいには過去のやりとりが原因の喧嘩に発展しそうになる。
ちなみに女性の皆さんはオークの力にあてられて目がハートマーク状態。
なんかえらいことになってるな……。
「皆さん、落ち着いてください」
そこへ落ち着いた重々しい声が響いた。
見れば、上の階に通じる階段を、執事っぽい人を連れた男性が降りてきた。
「アントンさん」
「アントン様」
「旦那!」
いろいろな呼び方で彼を呼ぶ市民たち。
あの人がアントンか。
この屋敷の主人で、ヴェティアン一の商人だって話だ。
アントンさんは皆の興奮を鎮めるようにゆっくりと話す。
「傭兵が逃げてしまったことは私も報告を受けました。どうも、彼らが想像していたよりもオークの数が多かったので、契約と違うとごねたようですね」
「なんて奴らだ!」
「無責任な!」
市民から上がる声をアントンさんは『まあまあ』というように鎮める。
「いなくなってしまった者たちのことを責めても仕方ありません。それより、これからどうするか、ですが……」
アントンさんは市民を見回し、
「今、街に滞在している冒険者や傭兵の方たちに交渉し、オークを退治してくれるよう頼んでいます。そのための費用は我々が出します。あの傭兵たちを選んだ責任は取らなければなりませんからね」
「おお、さすがアントン様!」
「いいぞいいぞ!」
今度はアントン上げコールをする市民たち。
「そういうわけですので、皆さんは安心してこの屋敷でお過ごしください」
よかったよかった助かった……という空気が広がる広間。
俺たちもなんとなくホッとしていると、アントンさんの横にいた執事がすすす……と俺たちのところにやってきた。
「旦那様がお話ししたいことがあるとのことで、お越し願えますでしょうか」
話?
なんだろうね?
って考えるまでもないな。
俺たち一応冒険者だもんな。
◆◇◆◇◆
「お呼び立てして申し訳ありません」
というわけでアントンさんの私室に通された俺たち。
なんか最近は豪華な屋敷を目にする機会が多いな。
ちょっと前まで洞窟だの海底だのダンジョンをさまよってたのに。
〈オーク退治の依頼か?〉
俺が問いかけると、アントンさんは首を振った。
「いえ、皆さんには移送任務をお願いしたいと思いまして」
「移送……なにか大事な荷物があるんですか?」
「ええ。この屋敷にある品を、フィオンティアーナまで運んでいただきたいのです」
アントンさんの話によると、それはヴォルフォニア帝国に注文されていた品らしい。
明日にでもフィオンティアーナに向けて発送する予定だった。
しかしオークの出現でそれが難しくなってしまったというわけだ。
「幸い、この屋敷から船便を出すことができますので、皆さんにはそれに乗って近くの港町へ行き、そこからフィオンティアーナへ馬車で品を運んでいただきたいのです。もちろん案内はおつけしますので」
〈俺たちは構わないが……大丈夫なのか? オーク退治の人手は〉
「そのための数はもう揃いました。運んで欲しい品は納品を遅らせるわけにはいかないものでして」
うーん。
まあ、街が大丈夫なら、俺たちもここに留まっている理由はないしな。
俺たちはアントンさんの依頼を引き受けることにした。
市民のみんなは避難所として提供されている大商人の屋敷に逃げ込んでいる。
俺たちも同じだ。
で、あとは雇った傭兵がオークを倒してくれてめでたしめでたし……のはずだった。
「傭兵が全員逃げちまったぞ!」
屋敷に飛び込んできた人がそんなことを言ったもんだから屋敷は大騒ぎだ。
「おいおい、どうするんだ……?」
「オーク倒せるやつなんてこの街にいないだろ……」
「だから自警団を組織しといたほうがいいって言ったんだ!」
「お前だって商売に支障が出るのは困るって言ってただろ!」
しまいには過去のやりとりが原因の喧嘩に発展しそうになる。
ちなみに女性の皆さんはオークの力にあてられて目がハートマーク状態。
なんかえらいことになってるな……。
「皆さん、落ち着いてください」
そこへ落ち着いた重々しい声が響いた。
見れば、上の階に通じる階段を、執事っぽい人を連れた男性が降りてきた。
「アントンさん」
「アントン様」
「旦那!」
いろいろな呼び方で彼を呼ぶ市民たち。
あの人がアントンか。
この屋敷の主人で、ヴェティアン一の商人だって話だ。
アントンさんは皆の興奮を鎮めるようにゆっくりと話す。
「傭兵が逃げてしまったことは私も報告を受けました。どうも、彼らが想像していたよりもオークの数が多かったので、契約と違うとごねたようですね」
「なんて奴らだ!」
「無責任な!」
市民から上がる声をアントンさんは『まあまあ』というように鎮める。
「いなくなってしまった者たちのことを責めても仕方ありません。それより、これからどうするか、ですが……」
アントンさんは市民を見回し、
「今、街に滞在している冒険者や傭兵の方たちに交渉し、オークを退治してくれるよう頼んでいます。そのための費用は我々が出します。あの傭兵たちを選んだ責任は取らなければなりませんからね」
「おお、さすがアントン様!」
「いいぞいいぞ!」
今度はアントン上げコールをする市民たち。
「そういうわけですので、皆さんは安心してこの屋敷でお過ごしください」
よかったよかった助かった……という空気が広がる広間。
俺たちもなんとなくホッとしていると、アントンさんの横にいた執事がすすす……と俺たちのところにやってきた。
「旦那様がお話ししたいことがあるとのことで、お越し願えますでしょうか」
話?
なんだろうね?
って考えるまでもないな。
俺たち一応冒険者だもんな。
◆◇◆◇◆
「お呼び立てして申し訳ありません」
というわけでアントンさんの私室に通された俺たち。
なんか最近は豪華な屋敷を目にする機会が多いな。
ちょっと前まで洞窟だの海底だのダンジョンをさまよってたのに。
〈オーク退治の依頼か?〉
俺が問いかけると、アントンさんは首を振った。
「いえ、皆さんには移送任務をお願いしたいと思いまして」
「移送……なにか大事な荷物があるんですか?」
「ええ。この屋敷にある品を、フィオンティアーナまで運んでいただきたいのです」
アントンさんの話によると、それはヴォルフォニア帝国に注文されていた品らしい。
明日にでもフィオンティアーナに向けて発送する予定だった。
しかしオークの出現でそれが難しくなってしまったというわけだ。
「幸い、この屋敷から船便を出すことができますので、皆さんにはそれに乗って近くの港町へ行き、そこからフィオンティアーナへ馬車で品を運んでいただきたいのです。もちろん案内はおつけしますので」
〈俺たちは構わないが……大丈夫なのか? オーク退治の人手は〉
「そのための数はもう揃いました。運んで欲しい品は納品を遅らせるわけにはいかないものでして」
うーん。
まあ、街が大丈夫なら、俺たちもここに留まっている理由はないしな。
俺たちはアントンさんの依頼を引き受けることにした。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる