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第4章 フィオンティアーナ編
139 この世界には魔王がいるの?
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どうも、リビングアーマーの俺です。
チェインハルト商会に依頼されて忍者を追っていた俺たち。
ようやく捕まえた忍者のヒナワ(と名乗った)はとんでもない話をしてきた。
フィオンティアーナ郊外に建つ、チェインハルト商会の研究施設。
あの建物の地下には、広大な空間が広がっている。
そしてそこには、巨大な化け物が安置されている、というのだ。
〈化け物? モンスターってことか?〉
「あんなモンスターは見たことがない。そもそも生物なのかどうかもわからなかった。とにかく巨大な、肉の塊だ」
そいつはたくさんの装置に繋がれて、ゆっくりと呼吸していた。
そして、エドはそいつにこう呼びかけていたのだという。
『ご機嫌いかがですか、魔王陛下』
魔王陛下。
魔王!
え、なにそれ!
聞いてないんだけど。
この世界、魔王なんているの?
いや、まあたしかに。
魔法があって。
モンスターがいて。
冒険者ギルドがあって。
獣人がいて。
エルフがいて。
ドワーフがいて。
ドラゴンがいて。
ゴブリンがいて。
魔王がいたって全然おかしくなさそうだけどさ。
じゃあ先に魔族とかも出といてくれよ。
突然魔王とか言われたら驚いちゃうじゃんか。
「なるほど……あの魔力は、そういうわけか」
ドグラはなんだか納得したように頷いている。
そういえば彼女、あの建物に禍々しい魔力を感じるとか言ってたな。
それにエド自身にも危険を感じているみたいだった。
〈なあ、魔王ってなんだ?〉
俺はロロコに問いかける。
「知らない」
え、知らないの。
あ、そうか。
ロロコはそもそも人犬族の村で暮らしてたからな。
その周辺以外のことはよく知らなくてもおかしくない。
「えっと、クラクラなら知ってるか」
「いや、知らんな」
「え? じゃあアルメルは?」
「私も聞いたことはありません」
え、マジで。
じゃあ知ってるのドグラだけってことじゃん。
〈ドグラ、魔王って何者なんだ?〉
俺は問いかける。
魔王――やっぱり魔族の王様とかだろうか。
闇の力を持っていて、この世界を滅ぼそうとしていたのとか。
しかし、ドグラの答えはちょっと違っていた。
「魔王とは、太古に存在したと言われる『魔力の源』じゃ」
……ほう?
「この世界は物質と魔力の二層構造になっておる。そのうち物質は造物主たる神々が生み出した。しかしそれだけでは世界は動き出さなかった。そこで神々は魔王を創り、魔王から生み出される魔力でこの世界を満たしたのじゃ」
……ほうほう?
「世界を魔力で満たした魔王は役目を終え、神々によってどこかに隠された。だが、世界の終わりにはふたたび姿を現し、この世界の魔力を全て飲み込むのだ……とドラゴンの間の古い伝承にある」
……なんか、話が急に壮大になったぞ。
神々とか世界の終わりとか、神話みたいだ。
「むろん、魔王の姿を見たものなどドラゴン族にもおらん。だからこの伝承は信じられておらんし、人間どもの間でも廃れていったのだろう」
なるほど。
「待て」
ん?
ヒナワが妙な表情をしているぞ。
「拙者たちの里に伝わる話とはずいぶん違うぞ」
え、どういうこと?
「ヤマトの里では、魔王とは魔族を率いる王で、原初の魔法使いヘルメスに倒されたと言われている」
ん……こっちはスタンダードな魔王っぽい話だな。
そしてまた出てきたヘルメス。
ほんと色々やってる人だな……。
しかしどういうことなんだろう。
どっちが本当の話なんだ?
なんて検証するのはこの場では無理だろう。
そして、どっちにしろ、エドがヤバいものを持ってるのはたしか。
疑問がいっぱいなのもたしかだ。
ヒナワが見たっていう肉の塊は本当に魔王なのか?
エドはどこでそれを見つけたんだ?
それに、そんなもの研究して、エドはなにをしようってんだ?
これは確かに、あいつの味方なんかして大丈夫か? って気分になってくるな。
話が急にデカくなりすぎて、全員しばらく考え込んでしまう。
そのときだ。
――ごごごごごごごごごごご……。
なんだか不気味な地響きが聞こえてきた。
なんか嫌な予感がするなぁ。
こういう音が聞こえてきたとき、だいたい次のパターンは決まってるんだよなぁ。
〈なんかやばそうだ。とりあえず地上に出よう〉
俺たちは地下水道から梯子を伝って街に出た。
そのとたん、住民の叫び声が耳に飛び込んだ。
「オークだ! オークの群れが襲ってきたぞぉ!」
ほらやっぱり!
チェインハルト商会に依頼されて忍者を追っていた俺たち。
ようやく捕まえた忍者のヒナワ(と名乗った)はとんでもない話をしてきた。
フィオンティアーナ郊外に建つ、チェインハルト商会の研究施設。
あの建物の地下には、広大な空間が広がっている。
そしてそこには、巨大な化け物が安置されている、というのだ。
〈化け物? モンスターってことか?〉
「あんなモンスターは見たことがない。そもそも生物なのかどうかもわからなかった。とにかく巨大な、肉の塊だ」
そいつはたくさんの装置に繋がれて、ゆっくりと呼吸していた。
そして、エドはそいつにこう呼びかけていたのだという。
『ご機嫌いかがですか、魔王陛下』
魔王陛下。
魔王!
え、なにそれ!
聞いてないんだけど。
この世界、魔王なんているの?
いや、まあたしかに。
魔法があって。
モンスターがいて。
冒険者ギルドがあって。
獣人がいて。
エルフがいて。
ドワーフがいて。
ドラゴンがいて。
ゴブリンがいて。
魔王がいたって全然おかしくなさそうだけどさ。
じゃあ先に魔族とかも出といてくれよ。
突然魔王とか言われたら驚いちゃうじゃんか。
「なるほど……あの魔力は、そういうわけか」
ドグラはなんだか納得したように頷いている。
そういえば彼女、あの建物に禍々しい魔力を感じるとか言ってたな。
それにエド自身にも危険を感じているみたいだった。
〈なあ、魔王ってなんだ?〉
俺はロロコに問いかける。
「知らない」
え、知らないの。
あ、そうか。
ロロコはそもそも人犬族の村で暮らしてたからな。
その周辺以外のことはよく知らなくてもおかしくない。
「えっと、クラクラなら知ってるか」
「いや、知らんな」
「え? じゃあアルメルは?」
「私も聞いたことはありません」
え、マジで。
じゃあ知ってるのドグラだけってことじゃん。
〈ドグラ、魔王って何者なんだ?〉
俺は問いかける。
魔王――やっぱり魔族の王様とかだろうか。
闇の力を持っていて、この世界を滅ぼそうとしていたのとか。
しかし、ドグラの答えはちょっと違っていた。
「魔王とは、太古に存在したと言われる『魔力の源』じゃ」
……ほう?
「この世界は物質と魔力の二層構造になっておる。そのうち物質は造物主たる神々が生み出した。しかしそれだけでは世界は動き出さなかった。そこで神々は魔王を創り、魔王から生み出される魔力でこの世界を満たしたのじゃ」
……ほうほう?
「世界を魔力で満たした魔王は役目を終え、神々によってどこかに隠された。だが、世界の終わりにはふたたび姿を現し、この世界の魔力を全て飲み込むのだ……とドラゴンの間の古い伝承にある」
……なんか、話が急に壮大になったぞ。
神々とか世界の終わりとか、神話みたいだ。
「むろん、魔王の姿を見たものなどドラゴン族にもおらん。だからこの伝承は信じられておらんし、人間どもの間でも廃れていったのだろう」
なるほど。
「待て」
ん?
ヒナワが妙な表情をしているぞ。
「拙者たちの里に伝わる話とはずいぶん違うぞ」
え、どういうこと?
「ヤマトの里では、魔王とは魔族を率いる王で、原初の魔法使いヘルメスに倒されたと言われている」
ん……こっちはスタンダードな魔王っぽい話だな。
そしてまた出てきたヘルメス。
ほんと色々やってる人だな……。
しかしどういうことなんだろう。
どっちが本当の話なんだ?
なんて検証するのはこの場では無理だろう。
そして、どっちにしろ、エドがヤバいものを持ってるのはたしか。
疑問がいっぱいなのもたしかだ。
ヒナワが見たっていう肉の塊は本当に魔王なのか?
エドはどこでそれを見つけたんだ?
それに、そんなもの研究して、エドはなにをしようってんだ?
これは確かに、あいつの味方なんかして大丈夫か? って気分になってくるな。
話が急にデカくなりすぎて、全員しばらく考え込んでしまう。
そのときだ。
――ごごごごごごごごごごご……。
なんだか不気味な地響きが聞こえてきた。
なんか嫌な予感がするなぁ。
こういう音が聞こえてきたとき、だいたい次のパターンは決まってるんだよなぁ。
〈なんかやばそうだ。とりあえず地上に出よう〉
俺たちは地下水道から梯子を伝って街に出た。
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「オークだ! オークの群れが襲ってきたぞぉ!」
ほらやっぱり!
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