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第4章 フィオンティアーナ編
131 にんじゃがにげた
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どうも、リビングアーマーの俺です。
こっちは人犬族のロロコ。
エルフのクラクラ。
ドワーフ嬢のアルメル。
ドラゴン娘のドグラ。
俺たちはラフィオンさんと一緒に馬車に乗っていた。
ラフィオンさんはフィオンティアーナの領主な。
馬車はフィオンティアーナの大通りを抜け、城門を出てしまった。
門の外にはいまだにすごい行列。
それを横目に馬車は疾走していく。
目指すは郊外にあるチェインハルト商会の実験施設。
そこに最高純度の魔鉱石があるかもしれない。
それがあればラファの魔力過活性症をなんとかできるはず。
ちなみにラファはラフィオンさんの屋敷で寝ている。
お医者さんがついてくれているので心配ないだろう。
とはいえタイムリミットは約二週間とのこと。
のんびりはしていられない。
「そのチェインハルト商会というのはなんなのだ?」
現代の事情を知らないドグラが訊いてくる。
アルメルが答えた。
「大陸最大の商会ですね。魔鉱石を活用した冒険者向けアイテムの開発と販売で、一代で財をなし、瞬く間に大陸中にその名を知らしめました。代表のエドさんを現代のヘルメスだなんて呼ぶ人もいます」
あの人、そんなにすごい人だったのか……。
なんか有能そうだとは思ってたけど。
ちなみにヘルメスってのは『原初の魔法使い』って呼ばれる大昔の人だな。
ダンジョンの入り口にある館を建てたとか。
ゴーレムを作ったとか。
なんかいろいろな功績があるらしい。
ラフィオンさんが頷く。
「以前はフィオンティアーナを始めとした南部の商業都市が大陸の商業の中心だったのですがな。チェインハルト商会の躍進で、北の国々、特にヴォルフォニア帝国は大きく力を付けました。むろん、冒険者がより安全に、より活発に活動できるようになったのはチェインハルト商会のおかげですし、その結果大陸全体の経済が発展しました。フィオンティアーナもその恩恵を多分に受けています」
ヴォルフォニア帝国が強国になったのもチェインハルト商会きっかけなのか。
〈ん? ヴォルフォニア帝国ってそんな新興国なのか?〉
「そうだな。強国に発展したのは、ここ八十年くらいの話ではないか」
クラクラがそう言う。
……いや、待て待て。
ヴォルフォニア帝国が力を付けたのがここ八十年。
そのきっかけはチェインハルト商会の躍進。
チェインハルト商会は一代で材をなした。
その代表はあのエド……。
エドって何歳なんだよ!?
せいぜい三十代の見た目だったぞ!
「ラッカムさんが言ってた」
とロロコ。
ラッカムさんはロロコの村の近くにある街の自警団長だ。
「領主様が話してたけど、領主様が若いときから、あの人はずっと同じ外見だったって」
領主ってのは、ロロコたち人犬族を虐げてたあのバカ領主のことだろう。
あいつ、けっこうな中年だったよな。
その領主が若いときからあの外見?
それ、若作りなんてレベルじゃないぞ。
「そう驚くこともあるまい」
と、ドグラが言ってくる。
「魔力を適切に扱えば、外見など自由に変えられるぞ」
そりゃあなたレベルならそうでしょうよ……。
でも、まあその可能性くらいしかないのか。
エドはすごい魔力の持ち主で、外見を若く保てるくらい、その魔力を駆使できてる。
そしてそれを活用して、冒険者用のアイテムを生み出している……。
「見えてきましたな」
そこで、ラフィオンさんが言ってきた。
窓から外を眺めると、巨大な建造物が目に飛び込んできた。
なんかすごい違和感……。
石造りなので、この世界に存在してもおかしいってわけじゃないんだけど。
その石の切り出し方があまりに綺麗なのだ。
まるでコンクリート製の建物みたいに見える。
四角い、かっちりとした、灰色の建物。
まさに、俺が元いた世界にありそうな研究施設って感じだった。
「面妖な建物だな……」
クラクラもそう呟いている。
馬車はやがて入り口にたどり着いた。
入り口には、建物とは対照的に、普通に鎧を着た兵士が立っている。
防弾ジャケットの警備員みたいなのはいない。
「ラフィオン様、お待ちしておりました」
事前に連絡が行っていたらしい。
兵士はすぐに身を正してそう告げると、開門するよう声を上げる。
ゆっくりと門が開いていく。
人一人が通れるくらいの隙間ができた。
その瞬間――
――黒い影が門から飛び出して俺たちの横をすり抜けていった。
「なっ!」
「おい、脱走者だ!」
「追え! すぐに知らせろ!」
兵士たちが騒ぎ出す。
おいおい、マジかよ。
俺は驚いていた。
着いたそうそうこんな騒ぎになったことに……じゃない。
今脱走していったやつの外見にだ。
チラッとしか見えなかったけど間違いない。
今の、忍者だ!
こっちは人犬族のロロコ。
エルフのクラクラ。
ドワーフ嬢のアルメル。
ドラゴン娘のドグラ。
俺たちはラフィオンさんと一緒に馬車に乗っていた。
ラフィオンさんはフィオンティアーナの領主な。
馬車はフィオンティアーナの大通りを抜け、城門を出てしまった。
門の外にはいまだにすごい行列。
それを横目に馬車は疾走していく。
目指すは郊外にあるチェインハルト商会の実験施設。
そこに最高純度の魔鉱石があるかもしれない。
それがあればラファの魔力過活性症をなんとかできるはず。
ちなみにラファはラフィオンさんの屋敷で寝ている。
お医者さんがついてくれているので心配ないだろう。
とはいえタイムリミットは約二週間とのこと。
のんびりはしていられない。
「そのチェインハルト商会というのはなんなのだ?」
現代の事情を知らないドグラが訊いてくる。
アルメルが答えた。
「大陸最大の商会ですね。魔鉱石を活用した冒険者向けアイテムの開発と販売で、一代で財をなし、瞬く間に大陸中にその名を知らしめました。代表のエドさんを現代のヘルメスだなんて呼ぶ人もいます」
あの人、そんなにすごい人だったのか……。
なんか有能そうだとは思ってたけど。
ちなみにヘルメスってのは『原初の魔法使い』って呼ばれる大昔の人だな。
ダンジョンの入り口にある館を建てたとか。
ゴーレムを作ったとか。
なんかいろいろな功績があるらしい。
ラフィオンさんが頷く。
「以前はフィオンティアーナを始めとした南部の商業都市が大陸の商業の中心だったのですがな。チェインハルト商会の躍進で、北の国々、特にヴォルフォニア帝国は大きく力を付けました。むろん、冒険者がより安全に、より活発に活動できるようになったのはチェインハルト商会のおかげですし、その結果大陸全体の経済が発展しました。フィオンティアーナもその恩恵を多分に受けています」
ヴォルフォニア帝国が強国になったのもチェインハルト商会きっかけなのか。
〈ん? ヴォルフォニア帝国ってそんな新興国なのか?〉
「そうだな。強国に発展したのは、ここ八十年くらいの話ではないか」
クラクラがそう言う。
……いや、待て待て。
ヴォルフォニア帝国が力を付けたのがここ八十年。
そのきっかけはチェインハルト商会の躍進。
チェインハルト商会は一代で材をなした。
その代表はあのエド……。
エドって何歳なんだよ!?
せいぜい三十代の見た目だったぞ!
「ラッカムさんが言ってた」
とロロコ。
ラッカムさんはロロコの村の近くにある街の自警団長だ。
「領主様が話してたけど、領主様が若いときから、あの人はずっと同じ外見だったって」
領主ってのは、ロロコたち人犬族を虐げてたあのバカ領主のことだろう。
あいつ、けっこうな中年だったよな。
その領主が若いときからあの外見?
それ、若作りなんてレベルじゃないぞ。
「そう驚くこともあるまい」
と、ドグラが言ってくる。
「魔力を適切に扱えば、外見など自由に変えられるぞ」
そりゃあなたレベルならそうでしょうよ……。
でも、まあその可能性くらいしかないのか。
エドはすごい魔力の持ち主で、外見を若く保てるくらい、その魔力を駆使できてる。
そしてそれを活用して、冒険者用のアイテムを生み出している……。
「見えてきましたな」
そこで、ラフィオンさんが言ってきた。
窓から外を眺めると、巨大な建造物が目に飛び込んできた。
なんかすごい違和感……。
石造りなので、この世界に存在してもおかしいってわけじゃないんだけど。
その石の切り出し方があまりに綺麗なのだ。
まるでコンクリート製の建物みたいに見える。
四角い、かっちりとした、灰色の建物。
まさに、俺が元いた世界にありそうな研究施設って感じだった。
「面妖な建物だな……」
クラクラもそう呟いている。
馬車はやがて入り口にたどり着いた。
入り口には、建物とは対照的に、普通に鎧を着た兵士が立っている。
防弾ジャケットの警備員みたいなのはいない。
「ラフィオン様、お待ちしておりました」
事前に連絡が行っていたらしい。
兵士はすぐに身を正してそう告げると、開門するよう声を上げる。
ゆっくりと門が開いていく。
人一人が通れるくらいの隙間ができた。
その瞬間――
――黒い影が門から飛び出して俺たちの横をすり抜けていった。
「なっ!」
「おい、脱走者だ!」
「追え! すぐに知らせろ!」
兵士たちが騒ぎ出す。
おいおい、マジかよ。
俺は驚いていた。
着いたそうそうこんな騒ぎになったことに……じゃない。
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