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第4章 フィオンティアーナ編

127 フィオンティアーナに入れない

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 どうも、リビングアーマーの俺です。

「お、見えてきたぞ」

 俺たちを乗せて飛んでいるドグラが言ってきた。
 見れば、地平線のあたりに街がある。

 どうやらあれが目指すフィオンティアーナらしい。

 大陸南部の商業都市群の中心都市。
 ラファの手術ができる医者がいるだろう街だ。

「あまり近づくと騒ぎになる。このあたりで降りるぞ」

 ドグラがそう言って下降していく。
 彼女は街道からも逸れて、森の外れに着陸した。

 ドラゴンの姿が消えて、幼女の姿が現れる。
 うーん、何度見ても不思議だ。

 さて、ここからは歩いていくしかない。

 鎧の中にラファを入れた俺。
 人犬族のロロコ。
 エルフのクラクラ。
 ドワーフ嬢のアルメル。
 ドラゴンのドグラ。

 なんか、いつの間にか大所帯になってるなぁ。
 転生したときは一人だったのにな。
 っていうか、バラバラの状態で動くこともできなかったのにな。

 今まで生き延びられて、仲間もできたのは、運が良かったとしか言いようがない。

〈そういや、アルメルはバリガンガルドに戻らなくて良かったのか?〉

 特に確認もせずに連れてきちゃったけど。
 っていうか、それはロロコもなんだけどな。

 アルメルはバリガンガルドで鍛冶屋の仕事があるだろうし。
 ロロコだって故郷の村に戻りたいはずだ。

 しかし、

「私は助けてもらった人を放り出すような薄情な人間じゃありませんよ」
「うんうん」

 と二人は言う。

「置いてくなんて言ったら怒る」

 とロロコ。
 そうか……。
 そうだよな。
 ここまでずっと一緒に旅をしてきたんだ。
 こうなりゃとことん、行きたいところに行き尽くしてやるべきかもしれないな。

「それに、フィオンティアーナは魔術工学の本場です。どんな技術があるのか見学してみたいですし……も、もちろんラファさんの病気が治ったら、時間があったら、ついでにですよ! ついで!」

 ……アルメル、お前ってやつは。

 まあいいさ。
 相変わらず俺は右も左もわからないリビングアーマー。
 仲間は多いほうがありがたい。

 なんて話している間にフィオンティアーナに到着した。

 フィオンティアーナは立派な城壁に囲まれた都市だった。
 バリガンガルドより背の高い城壁がひたすら続いていて、街の中は見えない。
 城壁は真っ直ぐじゃなくて、所々に角があって、ギザギザしてるっぽい。
 函館の五稜郭みたいな形なのかもしれない。

 で、その城壁の入り口の一つに俺たちはたどり着いたわけだけど。

「なにこれ」
「すごい行列ですね」
「うーむ。邪魔くさいの。殺してよいか」

 ドグラは物騒なこと言わない!

「ちょっと訊いてみよう」

 とクラクラが最後尾にいた商人っぽい男に問いかけた。

「失礼。これは何事だ? フィオンティアーナの検問というのはいつもこんなに混んでいるのか?」

「普段はこんなことはないよ。今日は、侵入者があったとかで、普段より検査が厳しいんだ。持ち物検査と身分の証が必要らしい」

「そうだったか。ありがとう」

 ……そりゃマズいな。

 当たり前だが俺たちは身分証なんか持ってない。
 俺はバリガンガルドに入ったときみたいにただの鎧のふりをすればいいけど。
 ラファはどこからどう見てもゴブリンだ。
 ゴブリンはこの世界では人間の敵扱いだ。
 少なくとも、侵入者があったなんてこの状況じゃ入れてくれないだろう。

 どうすればいい?

 考えていると、ドグラが言ってきた。

「フィオンティアーナか……ここの領主はいまだメディシア家なのかの?」

 さっきの商人が変な顔で答える。

「んあ? いまだにもなにも、ここ数百年メディシア家の当主が治めてるぞ」

「なるほど」

 ドグラは頷くと、笑みを浮かべて言った。

「たぶんすぐに入れるぞ」

 うっわー、悪そうな笑顔……。
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