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第3章 絶海の孤島ダンジョン編

107 トカゲウオさんの本気

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 どうも、リビングアーマーのおれぎょわあああ!

 ――ボロボロボロボロ!

 ゴオオオオ!

 なに今のでっかい火の玉!

「ね、本気出してきたでしょ」

 ラファさん!
 落ち着いた声で言ってる場合じゃねえよ!?

 ロロコとアルメルと合流するため、絶海の孤島ダンジョンを進む俺たち。
 第三の難関であるマギ・リザード・フィッシュの狩場を抜けようとしているところ。
 ……なんだけど。

 こいつら、水から上がれないし。
 魔法っつっても鼻先に火がついてるだけだし。
 頑丈な歯にさえ気をつければ楽勝だな、と。

 舐めかかっていたところに今の巨大火の玉ですよ!

〈え? なに? 今のこいつらの魔法?〉

「そうだよ。マギ・リザード・フィッシュは放出系の魔法を使ってくるからね。特に仲間が攻撃を受けると、反射的に複数の個体が魔力を融合させて、協力な攻撃を放ってくるんだ」

〈先に言って!〉

 いや、想定外すぎる。
 ロロコだってあんなでかい魔法放てなかったでしょ。

 なんでトカゲと魚の中間みたいな奴があんなの使えるの。
 進化の流れおかしくない?

 なんて文句を言っても相手は待ってくれない。

 ――ボロボロボロボロ!

 ガキンガキン! と食いついてくるトカゲウオたち。
 それをかわしたところに、

 ゴオオオオ!

 巨大火の玉が迫る。
 うわああああ!

 すぐ間近を通過した。
 めっちゃ熱い。
 ああ、ヤバいね。
 これは下手すると鎧が溶けるかもね。

〈なあラファ! こいつら、なんか弱点とかないのか?〉

「……ぐー」

 え、うそ!?
 寝てるの!?
 この状況で!?

 いや、しかしここまでけっこうな時間経ってるっちゃ経ってるか。
 俺はリビングアーマーなので眠くならないけど。
 普通の生物であるラファは疲れてたのかもしれない。
 パーティで行動してるときはちゃんと気遣わないとダメだな。

 ……それにしたって今寝れるのはすげえと思うけどな!

 ともかくトカゲウオだ。
 飛びつき攻撃と巨大火の玉。
 どっちもかわして、倒さないといけない。

 じゃあ、こういうのはどうだ?

 ――ボロボロボロボロ!

 一匹がまた俺に飛びかかってきた。
 俺はそれをかわす。

 ゴオオオオ!

 そこへまた迫る火の玉。
 それをさらにかわす。

 ――ボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロ!

 すると、周りの水面からトカゲウオが五匹、俺を取り囲むように一斉に飛び上がった。

 それを待ってたんだ!

 俺は胴体から兜パーツと左右の腕パーツ、左右の脚パーツを分離させる。
 そして分離させたそれぞれでトカゲウオにタックルをかける。

 おりゃ! おりゃ! おりゃ! おりゃ! おりゃ!

 ――ボロボロボロボロ!?
 ――ボロボロボロボロ!?
 ――ボロボロボロボロ!?
 ――ボロボロボロボロ!?
 ――ボロボロボロボロ!?

 五匹のトカゲウオは驚きの声を上げて吹っ飛んだ。
 陸に落ちてビタンバタンと暴れるやつ。
 水に落ちた後、プカーと浮いてくるやつ。
 よし、三匹は倒せたな。
 残り二匹はまだ息があるけど、ダメージは受けてるようだ。

 うん、わかってきたぞ。

 こいつら、火の玉で獲物を翻弄して、頑丈な歯で食いついて仕留めていくんだ。
 基本は水の中にいるので、獲物からはなかなか手が出せない。
 どこからいつ飛び出してくるか予測がつかないから、かわすのが大変。
 このパターンが使えるから、ここを狩場にしているんだろう。

 けど、大洞窟ダンジョンにいたトカゲウオと違って、こいつらは陸に上がれない。
 だから、水から出ているときが一番の弱点。
 突くならそのときだ。

 予測不能な攻撃なら、バラバラになれる俺だって負けてないぜ!

 というわけで、ここからは反撃開始だぜ!

 ――ボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロ!

 ……えーと。
 なに、なんか、めっちゃ怒ってる?

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

 ちょ、え? 待って待って!
 なにその超巨大火の玉!

 この空間全部埋まるレベルじゃん!
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