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第3章 絶海の孤島ダンジョン編

100 なめくじには塩

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 どうも、リビングアーマーの俺です。
 こっちはゴブリン娘のラファ。
 ちょっと前にいるのは大蛇の皆さん。

 みんなして同じ方向に逃げてます。

 べつに大蛇たちと協定を結んだわけじゃない。
 同じ方にしか逃げられないのだ。

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 穴をぴったり埋めてしまうくらいの巨大ナメクジが追ってきてる。

 ナメクジは毒持ち。
 蛇だろうがゴブリンだろうが鎧だろうが溶かしてしまう。
 そりゃ逃げるしかないでしょ。

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 ん?
 なんかナメクジの移動音が増えた気がしますね……。

「ビッグ・ポイズンスラッグが三匹に増えた」

 ラファが後ろを振り向いて言ってくる。

 やっぱりかよ!

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 いや、どんどん増えてるじゃん!
 なんなんだよ!

「やっぱりその音のせいじゃないかな」

 えー。
 そうなの?

 普段はわざわざ言ってないけどね。
 俺、動くたびにけっこう大きな音がしてる。
 まあ、金属の塊だし。
 複雑な形してるしね。
 しょうがないよね……?

 とにかく今はひたすら逃げるしかない。

 俺たちは大蛇についていく形でひたすら穴を下って、下って、下って……

 ……元の大蛇の群生地に戻ってきてしまった!

 ちくしょう!

〈うわああああ!〉

 しかも勢いがついて穴から飛び出してしまった。
 蛇の群れの上に落ちるかと思ったんだけど、普通に地面に落ちた。
 蛇さんたちどうしたの?

 俺は腕を伸ばしてラファを受け止める。

「ありがとう」
〈ああ……しかし蛇どもはどうしたんだ?〉
「ビッグ・ポイズンスラッグが嫌で逃げてるんじゃないかな」

 ああ、なるほどな。

 俺たちに続いて、巨大ナメクジが穴からぼたぼた落ちてくる。
 そのたびに蛇たちは輪を広げて遠巻きに逃げていく。

 俺たちも押しつぶされなくて済むって話だ……けど。

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 ナメクジどもは気持ち悪い音を出しながら俺たちに迫ってくる。
 対処のしようがない状況は変わってない。

 どうする?
 また腕を伸ばして穴に飛び込んでもいいかもしれないけど。
 けっきょくまたべつのナメクジに進路を塞がれるだけだ。

 ナメクジ自体をどうにかする方法を考えないと、先に進めない。

 ――にゅにゅにゅべしゃ!

 うっわ!
 いきなりなにすんの!

 ナメクジが毒液を吐いてきた。
 俺は慌てて身を引く。
 あっぶねー……。

 俺の様子を見て、毒が苦手と察したのか、ナメクジどもはなんか元気になる。

 ――にゅにゅにゅべしゃ!
 ――にゅべしゃべしゃ!
 ――べしゃべしゃべしゃ!

 ちょ、やめ、やめろって! おい!

 俺たちの足元がどんどん毒液まみれになっていく。
 くそ、前門のナメクジ、後門の大蛇。
 本当に逃げ場がなくなってしまった。

「こうなったら……」

 え?
 ラファ、なにか策があるの?

 ラファは服の懐からなんか袋を取り出すと、それを破いて中身をぶちまけた。
 白い粉。

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!?

 ナメクジの一体にそれがかかった。
 とたん、そいつはしおしおと縮んでいった。

 塩!

 そうか、ナメクジは塩に弱い。
 浸透圧で身体の水分が外に出てしまうのだ。

〈なんだ、そんな秘密兵器があるなら早く使ってくれればよかったのに〉
「塩はこれしかないの」

 おう……。
 マジかよ。

「この隙に上に逃げよう」
〈わかった〉

 俺は言われたとおり、ラファを抱えると、また腕を伸ばして穴の入り口に引っ掛ける。

 またナメクジに引き返させられるかもしれないけど、ここよりはマシだろう。

 ……と思ったら、ラファは違うことを言ってきた。

「その穴はやめよう。一か八か、べつのルートにしよう。このまま岩壁を上っていって」

 一か八か……か。

 嫌な予感しかしないけど、ここはラファを信じるしかない。

 俺は杭とゴーレムの伸びる腕を駆使して、岩壁を上っていく。
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