転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼

文字の大きさ
上 下
117 / 286
第3章 絶海の孤島ダンジョン編

100 なめくじには塩

しおりを挟む
 どうも、リビングアーマーの俺です。
 こっちはゴブリン娘のラファ。
 ちょっと前にいるのは大蛇の皆さん。

 みんなして同じ方向に逃げてます。

 べつに大蛇たちと協定を結んだわけじゃない。
 同じ方にしか逃げられないのだ。

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 穴をぴったり埋めてしまうくらいの巨大ナメクジが追ってきてる。

 ナメクジは毒持ち。
 蛇だろうがゴブリンだろうが鎧だろうが溶かしてしまう。
 そりゃ逃げるしかないでしょ。

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 ん?
 なんかナメクジの移動音が増えた気がしますね……。

「ビッグ・ポイズンスラッグが三匹に増えた」

 ラファが後ろを振り向いて言ってくる。

 やっぱりかよ!

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 いや、どんどん増えてるじゃん!
 なんなんだよ!

「やっぱりその音のせいじゃないかな」

 えー。
 そうなの?

 普段はわざわざ言ってないけどね。
 俺、動くたびにけっこう大きな音がしてる。
 まあ、金属の塊だし。
 複雑な形してるしね。
 しょうがないよね……?

 とにかく今はひたすら逃げるしかない。

 俺たちは大蛇についていく形でひたすら穴を下って、下って、下って……

 ……元の大蛇の群生地に戻ってきてしまった!

 ちくしょう!

〈うわああああ!〉

 しかも勢いがついて穴から飛び出してしまった。
 蛇の群れの上に落ちるかと思ったんだけど、普通に地面に落ちた。
 蛇さんたちどうしたの?

 俺は腕を伸ばしてラファを受け止める。

「ありがとう」
〈ああ……しかし蛇どもはどうしたんだ?〉
「ビッグ・ポイズンスラッグが嫌で逃げてるんじゃないかな」

 ああ、なるほどな。

 俺たちに続いて、巨大ナメクジが穴からぼたぼた落ちてくる。
 そのたびに蛇たちは輪を広げて遠巻きに逃げていく。

 俺たちも押しつぶされなくて済むって話だ……けど。

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 ナメクジどもは気持ち悪い音を出しながら俺たちに迫ってくる。
 対処のしようがない状況は変わってない。

 どうする?
 また腕を伸ばして穴に飛び込んでもいいかもしれないけど。
 けっきょくまたべつのナメクジに進路を塞がれるだけだ。

 ナメクジ自体をどうにかする方法を考えないと、先に進めない。

 ――にゅにゅにゅべしゃ!

 うっわ!
 いきなりなにすんの!

 ナメクジが毒液を吐いてきた。
 俺は慌てて身を引く。
 あっぶねー……。

 俺の様子を見て、毒が苦手と察したのか、ナメクジどもはなんか元気になる。

 ――にゅにゅにゅべしゃ!
 ――にゅべしゃべしゃ!
 ――べしゃべしゃべしゃ!

 ちょ、やめ、やめろって! おい!

 俺たちの足元がどんどん毒液まみれになっていく。
 くそ、前門のナメクジ、後門の大蛇。
 本当に逃げ場がなくなってしまった。

「こうなったら……」

 え?
 ラファ、なにか策があるの?

 ラファは服の懐からなんか袋を取り出すと、それを破いて中身をぶちまけた。
 白い粉。

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!?

 ナメクジの一体にそれがかかった。
 とたん、そいつはしおしおと縮んでいった。

 塩!

 そうか、ナメクジは塩に弱い。
 浸透圧で身体の水分が外に出てしまうのだ。

〈なんだ、そんな秘密兵器があるなら早く使ってくれればよかったのに〉
「塩はこれしかないの」

 おう……。
 マジかよ。

「この隙に上に逃げよう」
〈わかった〉

 俺は言われたとおり、ラファを抱えると、また腕を伸ばして穴の入り口に引っ掛ける。

 またナメクジに引き返させられるかもしれないけど、ここよりはマシだろう。

 ……と思ったら、ラファは違うことを言ってきた。

「その穴はやめよう。一か八か、べつのルートにしよう。このまま岩壁を上っていって」

 一か八か……か。

 嫌な予感しかしないけど、ここはラファを信じるしかない。

 俺は杭とゴーレムの伸びる腕を駆使して、岩壁を上っていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...