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第3章 絶海の孤島ダンジョン編

91 鎧は着るためにある

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 どうも、リビングアーマーの俺です。

 ――ずぞぞぞぞぞぞ。

 俺とロロコとアルメルとラファの四人。
 絶海の孤島ダンジョンを攻略中なんだけど。

 ――ずぞぞぞぞぞぞぞぞ。

 行手を遮るのは大量の芋虫。
 正しくはヴァイン・キャタピラーとケイヴ・キャタピラーとノンアーマー・バグ……。

 じゃなくて、ええと、アーマー・ノンアーマー・バグ、でもなくて。

 ――ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ!

 ああもう、うっせえな!
 とにかく芋虫と芋虫と芋虫!
 それが群れをなして、俺たちがいる穴に向かって壁を這い登ってきてる。

〈これは、俺たちに気づいてるのか?〉
「どうだろうね」

 俺の疑問にラファが答える。

「あいつらはそんなに頭が良くないし、目もそんなに見えてない。動くものには反応するけどね。臭いに釣られることもそんなにないし」

「じゃあここを狙ってるわけじゃないかもしれない?」
「うん」

 ロロコの問いにはそう言って頷く。

「で、でももし狙ってるとしたらマズいですよ」

 焦った口調で言うアルメル。

「そうだね、引き返そうか」

 とラファがそう言ったときだ。

 ――ずぞぞぞぞぞもももも!

 うぉ!
 芋虫の一匹が穴に突っ込んできた。
 危ねえな!

 こいつは……ヴァイン・キャタピラーかな?
 さっき見たのと同じ形をしている。

 ――ずぞぞぞぞぞもももも!
 ――ずぞぞぞぞぞもももも!

 続けて第二、第三の芋虫も出現!
 それぞれべつの種類の芋虫だ。

 なるほど……見分け方がわかってきたぞ。

 ケイヴ・キャタピラーは俺が前にいた世界にいた芋虫とほとんど同じ形だ。
 それを巨大にした感じ。

 ヴァイン・キャタピラーはケイヴ・キャタピラーにそっくりだけど、尻尾がついてる。
 細くて長いそれは、たぶん植物の根っこの名残りなんだろう。

 ノンアーマー・アーマー・バグはよく見るとあまり芋虫っぽくない。
 どっちかというとワラジムシやダンゴムシに近い形。
 ただし、殻がないので、表面の質感は芋虫的だ。

 ってまー今はそんな違いはどうでもいいんだけど!
 逃げろ逃げろ逃げろ!

 芋虫たちはどんどん穴の中に進入してくる。
 地面と言わず壁と言わず天井と言わず這い回り、どんどん突っ込んでくる。

「うわーいやー!」

 アルメルの悲鳴が洞窟に響き渡る。

 幸いなことに芋虫たちの移動速度はそこまで速くない。
 とはいえ、全力で逃げても引き離せない程度。

 芋虫たちが大人しくなるのが先か、俺たちの体力が尽きるのが先か……。

「あ、やば……」

 ちょっとラファさん?
 不吉な呟きやめてくれませんかねえ!

「道間違えたっぽい。こっちもさっきの空間に通じてる」

 えーと。
 ってことはつまり。

 ――ずぞぞぞぞぞもももも!

 やっぱり!
 正面からも芋虫どもが迫ってきた。
 挟み撃ちだ。

「ぎゃー! やだー!」

 やだって言ってもしょうがないでしょ!

 どうする?
 俺はまあ芋虫に押しつぶされてもなんとかなるかもしれない。
 けどロロコとアルメルとラファはまずい。
 あのサイズの芋虫の大群じゃ、圧死したっておかしくない。

「リビタンさん!」

 それまで悲鳴を上げていたアルメルが急にしっかりした声で言ってきた。

〈なんだ!?〉
「ラファさんを鎧の中に入れてください!」

 ……そうか!
 うっかりしてた。
 俺、鎧じゃん。
 鎧はそもそも人が着るもの。
 リビングアーマーで中身が空っぽの俺には、一人分の避難スペースがある。

〈でもロロコとアルメルは!?〉
「私とロロコさんはちゃんと身を守ります。ロロコさんの炎魔法が必要なんです」
〈……わかった〉

 ロロコを見ると、彼女は無言で頷いた。
 アルメルを信じる。
 目がそう語っていた。

 詳しく聞いている時間はなさそうだ。
 俺は鎧パーツの内側に手を突っ込んで胴体パーツと腰パーツを繋いでいる革ベルトを外した。
 そして上下に分離すると、ラファを抱えて鎧の中に放り込んだ。

「え? どうなってるのこれ? 中空っぽじゃん!」

 俺の正体を知らなかったラファは混乱中。
 こんなことならさっさとリビングアーマーだって言っておきゃよかったな。

〈説明は後だ!〉

 俺はそう言って、革ベルトをふたたびつなげる。
 これでラファは安全なはずだ。

 ――ずぞぞぞぞぞもももも!
 ――ずぞぞぞぞぞもももも!
 ――ずぞぞぞぞぞもももも!

 芋虫たちが迫ってくる。
 一気に視界を埋め尽くし、すごい圧力が俺の身体にかかる。


「フレイム!」


 ロロコが炎魔法を放つ声が聞こえた。

 同時に、ものすごい爆発音と衝撃と火薬の臭いがして。

「うわあああああ!」

 俺の身体はゴロゴロ転がって落下していった。
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