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第2章 バリガンガルド編
76 パーティ結成……できない?
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ドワーフ謹製のニュー鎧を手に入れた俺。
その鎧を提供してくれた鍛治師のアルメル。
二人はバリガンガルドの街を歩いて冒険者ギルドへ向かう。
あちこち地震で壊れているが、みんな元気に復興作業をしている。
「リビタンさん、おはよう」
〈あ、おはようございます〉
「リビタン、今日出発するんだっけ?」
〈あ、はい。お世話になりました〉
街を歩いていると、あちこちから声をかけられる。
みな、俺がドラゴンを追い払ったと思っているのだ。
どうもチェインハルト商会のエドがそんな話を広めたらしい。
余計なことをしやがって……。
いや、別に困らないというか、むしろありがたいんだけどね。
多くの人は俺がリビングアーマーであることを知らない。
なので「なんか事情があって全身鎧を常に身に纏っている」ということにしてある。
普通だったらかなり不審がられるだろうな。
だから、こうしていいイメージで認識してもらえているのは助かる。
けど、ちょっと照れくさいよな。
それに後ろめたくもある。
ドラゴンは実際には勝手に立ち去っただけだからな……。
ちなみにそのエドはすでにバリガンガルドにいない。
仕事があるとかで別の街に旅立ってしまった。
さすが大商会の会長は多忙だな。
◆◇◆◇◆
冒険者ギルドに着いた。
と言っても仮設のバラックだ。
ギルドの建物は地震で崩れちゃったからな。
有り合わせの道具で体裁だけ整えたようなロビーでロロコが待っていた。
ラッカムさんも一緒だ。
さらに、チェインハルト商会のクーネアさんもいた。
メガネ美人の彼女は、エドの部下らしい。
エドと入れ替わりでこの街にやってきた。
街の復興作業を手助けすることになったようだ。
「おはようございます。リビタン様、アルメル様」
クーネアさんが挨拶してくる。
俺の名前は完全にリビタンで定着してしまったな……。
まあ、べつにいいんだけど。
〈おはようございます。今日はよろしくお願いします〉
俺は彼女に頭を下げる。
なにをお願いしているのかというと……。
ババン!
俺は冒険書を取り出す。
実は、この冒険書を新バージョンに変えられないか相談していたのだ。
冒険書はいわば端末だ。
本の形の端末は一世代前の代物らしい。
まあ、ダンジョンで拾ったものだしね。
現在使用されているのは、腕輪型。
そちらだと、モンスターの情報が初めから入っているなど、利点が多い。
俺の冒険書をそれに変えたかったのだ。
もう一つは、ロロコとアルメルとのパーティ編成だ。
冒険書にはパーティ編成機能があるらしい。
といっても、手続き自体はギルドでする必要があるそうだけど。
パーティになると、いくつか利点がある。
冒険書同士での近距離通信。
お互いの位置情報の確認。
登録情報の共有。
などなど……。
クラクラを助けるためドラゴンに挑もうというのだ。
そんな利点があるなら、利用しない手はないだろう。
というわけで、俺は冒険書をクーネアさんに渡す。
……って、なんでそんな申し訳なさそうな顔をしてるんですかあなた。
「申し訳ありません。結論から申しますと、現状ではリビタン様の冒険書を新しいものに変更することはできません」
え?
そうなの?
「冒険書を開発している魔法使いに問い合わせたのですが、本型と腕輪型では使われている術式が大きく異なるため、情報の移し替えはできないらしいのです。それを可能にするような術式の開発を要請しましたので、近いうちに可能になるとは思いますが、今は残念ながら……」
なるほど。
互換性的な話かな。
PS4でPS2のソフトは遊べない、みたいな。
え、じゃあひょっとして。
「パーティ編成もできなかったりする?」
「いえ、それは」
なんだ、そっちは大丈夫なのか。
けど、その割にはクーネアさん浮かない表情だな。
「その機能自体はあるのですが、リビタン様とパーティ編成を行うには、ロロコ様とアルメル様も旧型の冒険書に登録する必要があります」
お、おう。
クーネアさんは冒険書を二冊取り出す。
「幸い、旧型の冒険書がここの地下倉庫に残っておりましたので、登録は可能ですが……正直、腕輪型のものに比べ、こちらはかなり不便です」
まあな。
遭遇するまでモンスターの情報はわからないし。
いちいち開いてみないといけないし。
「どうなさいますか? もしこちらの冒険書で登録された場合、術式の開発が完了するまで、腕輪型に変更することはできませんが……」
と二人に問うクーネアさん。
そうだなぁ。
不便なのは困るよなぁ。
なんて思ってると、ロロコはクーネアさんの手から冒険書を取った。
〈ロロコ?〉
「別にどっちでもいい。リビたんと同じパーティかどうかの方が重要」
おう……。
言葉少なながら、すごい熱意が伝わってくるぜ。
俺はちょっと泣きそうになる。
涙でないけどな!
ほんと、この世界に来て最初にあったのがロロコでよかったぜ。
アルメルは小さく吐息して、やはり本型の冒険書を受け取った。
「私もこちらで構いません。冒険者になりたいわけではないですし、交換ができるようになったらすればいいんですよね」
クーネアさんは頷いた。
「ありがとうございます……術式の開発グループには作業を急がせますので」
いや、その、あまり現場を追い詰めないであげてほしいんだけど。
ともかくこれで、パーティ結成だ!
その鎧を提供してくれた鍛治師のアルメル。
二人はバリガンガルドの街を歩いて冒険者ギルドへ向かう。
あちこち地震で壊れているが、みんな元気に復興作業をしている。
「リビタンさん、おはよう」
〈あ、おはようございます〉
「リビタン、今日出発するんだっけ?」
〈あ、はい。お世話になりました〉
街を歩いていると、あちこちから声をかけられる。
みな、俺がドラゴンを追い払ったと思っているのだ。
どうもチェインハルト商会のエドがそんな話を広めたらしい。
余計なことをしやがって……。
いや、別に困らないというか、むしろありがたいんだけどね。
多くの人は俺がリビングアーマーであることを知らない。
なので「なんか事情があって全身鎧を常に身に纏っている」ということにしてある。
普通だったらかなり不審がられるだろうな。
だから、こうしていいイメージで認識してもらえているのは助かる。
けど、ちょっと照れくさいよな。
それに後ろめたくもある。
ドラゴンは実際には勝手に立ち去っただけだからな……。
ちなみにそのエドはすでにバリガンガルドにいない。
仕事があるとかで別の街に旅立ってしまった。
さすが大商会の会長は多忙だな。
◆◇◆◇◆
冒険者ギルドに着いた。
と言っても仮設のバラックだ。
ギルドの建物は地震で崩れちゃったからな。
有り合わせの道具で体裁だけ整えたようなロビーでロロコが待っていた。
ラッカムさんも一緒だ。
さらに、チェインハルト商会のクーネアさんもいた。
メガネ美人の彼女は、エドの部下らしい。
エドと入れ替わりでこの街にやってきた。
街の復興作業を手助けすることになったようだ。
「おはようございます。リビタン様、アルメル様」
クーネアさんが挨拶してくる。
俺の名前は完全にリビタンで定着してしまったな……。
まあ、べつにいいんだけど。
〈おはようございます。今日はよろしくお願いします〉
俺は彼女に頭を下げる。
なにをお願いしているのかというと……。
ババン!
俺は冒険書を取り出す。
実は、この冒険書を新バージョンに変えられないか相談していたのだ。
冒険書はいわば端末だ。
本の形の端末は一世代前の代物らしい。
まあ、ダンジョンで拾ったものだしね。
現在使用されているのは、腕輪型。
そちらだと、モンスターの情報が初めから入っているなど、利点が多い。
俺の冒険書をそれに変えたかったのだ。
もう一つは、ロロコとアルメルとのパーティ編成だ。
冒険書にはパーティ編成機能があるらしい。
といっても、手続き自体はギルドでする必要があるそうだけど。
パーティになると、いくつか利点がある。
冒険書同士での近距離通信。
お互いの位置情報の確認。
登録情報の共有。
などなど……。
クラクラを助けるためドラゴンに挑もうというのだ。
そんな利点があるなら、利用しない手はないだろう。
というわけで、俺は冒険書をクーネアさんに渡す。
……って、なんでそんな申し訳なさそうな顔をしてるんですかあなた。
「申し訳ありません。結論から申しますと、現状ではリビタン様の冒険書を新しいものに変更することはできません」
え?
そうなの?
「冒険書を開発している魔法使いに問い合わせたのですが、本型と腕輪型では使われている術式が大きく異なるため、情報の移し替えはできないらしいのです。それを可能にするような術式の開発を要請しましたので、近いうちに可能になるとは思いますが、今は残念ながら……」
なるほど。
互換性的な話かな。
PS4でPS2のソフトは遊べない、みたいな。
え、じゃあひょっとして。
「パーティ編成もできなかったりする?」
「いえ、それは」
なんだ、そっちは大丈夫なのか。
けど、その割にはクーネアさん浮かない表情だな。
「その機能自体はあるのですが、リビタン様とパーティ編成を行うには、ロロコ様とアルメル様も旧型の冒険書に登録する必要があります」
お、おう。
クーネアさんは冒険書を二冊取り出す。
「幸い、旧型の冒険書がここの地下倉庫に残っておりましたので、登録は可能ですが……正直、腕輪型のものに比べ、こちらはかなり不便です」
まあな。
遭遇するまでモンスターの情報はわからないし。
いちいち開いてみないといけないし。
「どうなさいますか? もしこちらの冒険書で登録された場合、術式の開発が完了するまで、腕輪型に変更することはできませんが……」
と二人に問うクーネアさん。
そうだなぁ。
不便なのは困るよなぁ。
なんて思ってると、ロロコはクーネアさんの手から冒険書を取った。
〈ロロコ?〉
「別にどっちでもいい。リビたんと同じパーティかどうかの方が重要」
おう……。
言葉少なながら、すごい熱意が伝わってくるぜ。
俺はちょっと泣きそうになる。
涙でないけどな!
ほんと、この世界に来て最初にあったのがロロコでよかったぜ。
アルメルは小さく吐息して、やはり本型の冒険書を受け取った。
「私もこちらで構いません。冒険者になりたいわけではないですし、交換ができるようになったらすればいいんですよね」
クーネアさんは頷いた。
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