86 / 286
第2章 バリガンガルド編
75 ドワーフ謹製ニュー鎧
しおりを挟む
突如現れたドラゴンは、突如東の空に飛び去った。
そしてバリガンガルドの街には平和が戻ったのでした。
めでたしめでたし!
いや、全然めでたくねえよ……。
エルフのクラクラがドラゴンにさらわれてしまったのだ。
ついでに俺の腕パーツも。
まあ俺のパーツはわりとどうでもいい。
ここは街なので、鎧の代わりは調達できるからな。
問題はクラクラだ。
ドラゴンがなんのつもりで彼女を拐っていったのかはよくわからない。
単純に考えれば食料なんだろうが。
どうも、そんな感じではなかった。
ドラゴンは彼女を見て『ライレンシア』と呼んでいた。
そして『変わらず美しい』とも。
完全に人違いだとは思うけど。
ともかくあいつは、クラクラを一個人として認識していた。
だとしたら、拐ってすぐに殺すこともないと思う。
え?
腕パーツで様子を探りゃいいじゃんって?
うん、もちろん俺もそうしようとしたさ。
けどドラゴンが空飛んでる途中で咆哮したせいで、また意識が喪失してしまった。
そして、それを境に、腕パーツと連絡が取れなくなってしまったのだ。
たぶん、距離が開きすぎたせいだと思う。
パーツ同士が離れても平気な距離は、ちゃんと確かめておいた方が良さそうだな。
とにかくそんなわけで、当面の目標はドラゴンの捜索。
そしてクラクラの救出だ。
しかし俺はなかなか困った状態だ。
エドから借りた鎧は全部ドラゴンの咆哮でバラバラ。
元々の身体も、ドラゴンに腕パーツがさらわれてしまった。
これじゃドラゴンの創作どころか、街を歩くのもままならん。
そんなわけで!
造ってもらいました!
ドワーフ謹製鎧!
そう。
このバリガンガルドの街の冒険者ギルドで偶然知り合ったドワーフ嬢のアルメル。
彼女はこの街でも優秀な鍛治師でもあったのだ。
というか、ギルドの受付嬢の方が副業っぽい。
といっても一から造ってもらう時間は流石にない。
なので、在庫を少し打ち直して改良してもらった。
「どうですか? 着心地……っていうのかわかりませんけど」
〈うん。すごく快適だ〉
アルメルの鍛治工房。
受付嬢のときとは全然違う、鍛治師っぽいワイルドな格好のアルメルに俺は答える。
ほんと、すごくいい感じ。
これまでの鎧が『合わないサイズを無理やり着ていた』と感じられるくらいだ。
「本来なら防御優先で、矢が刺さらないよう塞ぐところも少し開けて、全体的に可動域を大きくしてあります。同じように、薄くしても問題ないところは薄くして、重量も軽くなっています。強度は落とさないように工夫しました」
素晴らしい。
事実、鎧としての性能は落ちていないようだ。
久しぶりに冒険書のステータスを確認してみよう。
『リビングアーマー LV.25 名前:なし
HP:2108/2165(1409/1409)
MP:976/980(756/756)
物理攻撃力:687(321)
物理防御力:589(435)
魔法攻撃力:17(12)
魔法抵抗力:19(14)
スキル:霊体感覚+4、霊体操作+6、霊体転移+3、霊体分割+4
称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者、生還者、決死者
称号特典:魔力習得率アップLV.2、魔力変換率アップLV.2、恐怖耐性LV.4、魔力生命力変換LV.1、生命力魔力変換LV.1』
全ての数値が上昇していた。
しかも最高記録!
まあ、それもそうだよな。
これまでの鎧は人間が中にいること前提の鎧だ。
当たり前だけど。
しかし今回はアルメルの手によって、いわば「リビングアーマー専用」に改造された。
つまり、これが俺の本来の実力……というか性能と言える。
ちなみに、スキルもちょこちょこ上昇してるな。
霊体感覚が+3から+4に。
霊体操作が+5から+6に。
霊体転移が+2から+3に。
霊体分割が+1から+4に。
ついでにいうとレベルも24から25に上がっていた。
……正直に言うと、ちょっとガッカリした気持ちだ。
だってドラゴンだよ?
あの巨体だよ?
あんなのと戦ったわりには、レベル一つだけ?
討伐してないので、手に入れるべき魔力が放出されなかったってことなんだろうけど。
つまり、このレベルアップは周りで倒されてたキャノントータスの分。
そういうことなんだろうね。
と、そうだそうだ。
確認しとかなきゃな。
〈今回は、魔響震対策の術式は間違えてないよね?〉
「大丈夫です。他のドワーフにも確認してもらってますから」
二重チェックが行われてるなら安心……かな?
〈でも、代金は本当に払わなくていいの?〉
「もちろんです」
俺の問いに、アルメルは大きく頷く。
「前の鎧であんなご迷惑をおかけして……それに、街を救ってくれた英雄からお金なんて取れませんよ」
〈英雄ねぇ……〉
俺は結局なにもしてないんだけどな。
〈まあ、それならお言葉に甘えるよ〉
そもそも俺金持ってないしな。
銅貨が入ってた袋は地震のときギルドの建物に埋まってしまった。
「はい。そのうち、一からの注文を待ってますから」
しっかりしてるなぁ!
まあ、どこで宝箱とかゲットしたらな。
で、最後に確認しておくべきことを俺は聞いた。
〈で……本当についてくるつもりか?〉
そう。
アルメルは、なんとクラクラを助けに行く俺についてくると言い出したのだ。
あんなにリビングアーマーや、ドラゴンのことを怖がってたのに。
どういう心境の変化だ……。
「当然です! その鎧のメンテナンス、誰がするんですか!」
突然鼻息荒く言ってくるアルメル。
「前の鎧なんて、サビサビのボロボロだったじゃないですか! あんなんでドラゴンと戦おうだなんて無茶・無理・無謀ですよ!」
テンション変わりすぎでしょこの人……。
しょうがないじゃん、あの鎧、ダンジョンで拾ったやつなんだから。
しかし身体にしてた俺ですら気付かなかったが、あれはひどい状態だったらしい。
サビがあちこちに出てて。
接続用のベルトやなんかもボロボロで。
ドワーフの鍛治師としては気になって仕方なかったらしい。
「それに……クラクラさんだってこの街を助けるために戦ってくれたんです。見捨てるなんて、できませんよ」
…………まったく。
なんだかんだいっていい人なんだな。
しかしすっかりクラクラって名前が定着しつつある。
ちゃんとした名前なんだっけ……?
………………えーと。
ま、まあいいや。
そろそろ冒険者ギルドに行こう。
ロロコの方の準備もできてるはずだ。
そしてバリガンガルドの街には平和が戻ったのでした。
めでたしめでたし!
いや、全然めでたくねえよ……。
エルフのクラクラがドラゴンにさらわれてしまったのだ。
ついでに俺の腕パーツも。
まあ俺のパーツはわりとどうでもいい。
ここは街なので、鎧の代わりは調達できるからな。
問題はクラクラだ。
ドラゴンがなんのつもりで彼女を拐っていったのかはよくわからない。
単純に考えれば食料なんだろうが。
どうも、そんな感じではなかった。
ドラゴンは彼女を見て『ライレンシア』と呼んでいた。
そして『変わらず美しい』とも。
完全に人違いだとは思うけど。
ともかくあいつは、クラクラを一個人として認識していた。
だとしたら、拐ってすぐに殺すこともないと思う。
え?
腕パーツで様子を探りゃいいじゃんって?
うん、もちろん俺もそうしようとしたさ。
けどドラゴンが空飛んでる途中で咆哮したせいで、また意識が喪失してしまった。
そして、それを境に、腕パーツと連絡が取れなくなってしまったのだ。
たぶん、距離が開きすぎたせいだと思う。
パーツ同士が離れても平気な距離は、ちゃんと確かめておいた方が良さそうだな。
とにかくそんなわけで、当面の目標はドラゴンの捜索。
そしてクラクラの救出だ。
しかし俺はなかなか困った状態だ。
エドから借りた鎧は全部ドラゴンの咆哮でバラバラ。
元々の身体も、ドラゴンに腕パーツがさらわれてしまった。
これじゃドラゴンの創作どころか、街を歩くのもままならん。
そんなわけで!
造ってもらいました!
ドワーフ謹製鎧!
そう。
このバリガンガルドの街の冒険者ギルドで偶然知り合ったドワーフ嬢のアルメル。
彼女はこの街でも優秀な鍛治師でもあったのだ。
というか、ギルドの受付嬢の方が副業っぽい。
といっても一から造ってもらう時間は流石にない。
なので、在庫を少し打ち直して改良してもらった。
「どうですか? 着心地……っていうのかわかりませんけど」
〈うん。すごく快適だ〉
アルメルの鍛治工房。
受付嬢のときとは全然違う、鍛治師っぽいワイルドな格好のアルメルに俺は答える。
ほんと、すごくいい感じ。
これまでの鎧が『合わないサイズを無理やり着ていた』と感じられるくらいだ。
「本来なら防御優先で、矢が刺さらないよう塞ぐところも少し開けて、全体的に可動域を大きくしてあります。同じように、薄くしても問題ないところは薄くして、重量も軽くなっています。強度は落とさないように工夫しました」
素晴らしい。
事実、鎧としての性能は落ちていないようだ。
久しぶりに冒険書のステータスを確認してみよう。
『リビングアーマー LV.25 名前:なし
HP:2108/2165(1409/1409)
MP:976/980(756/756)
物理攻撃力:687(321)
物理防御力:589(435)
魔法攻撃力:17(12)
魔法抵抗力:19(14)
スキル:霊体感覚+4、霊体操作+6、霊体転移+3、霊体分割+4
称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者、生還者、決死者
称号特典:魔力習得率アップLV.2、魔力変換率アップLV.2、恐怖耐性LV.4、魔力生命力変換LV.1、生命力魔力変換LV.1』
全ての数値が上昇していた。
しかも最高記録!
まあ、それもそうだよな。
これまでの鎧は人間が中にいること前提の鎧だ。
当たり前だけど。
しかし今回はアルメルの手によって、いわば「リビングアーマー専用」に改造された。
つまり、これが俺の本来の実力……というか性能と言える。
ちなみに、スキルもちょこちょこ上昇してるな。
霊体感覚が+3から+4に。
霊体操作が+5から+6に。
霊体転移が+2から+3に。
霊体分割が+1から+4に。
ついでにいうとレベルも24から25に上がっていた。
……正直に言うと、ちょっとガッカリした気持ちだ。
だってドラゴンだよ?
あの巨体だよ?
あんなのと戦ったわりには、レベル一つだけ?
討伐してないので、手に入れるべき魔力が放出されなかったってことなんだろうけど。
つまり、このレベルアップは周りで倒されてたキャノントータスの分。
そういうことなんだろうね。
と、そうだそうだ。
確認しとかなきゃな。
〈今回は、魔響震対策の術式は間違えてないよね?〉
「大丈夫です。他のドワーフにも確認してもらってますから」
二重チェックが行われてるなら安心……かな?
〈でも、代金は本当に払わなくていいの?〉
「もちろんです」
俺の問いに、アルメルは大きく頷く。
「前の鎧であんなご迷惑をおかけして……それに、街を救ってくれた英雄からお金なんて取れませんよ」
〈英雄ねぇ……〉
俺は結局なにもしてないんだけどな。
〈まあ、それならお言葉に甘えるよ〉
そもそも俺金持ってないしな。
銅貨が入ってた袋は地震のときギルドの建物に埋まってしまった。
「はい。そのうち、一からの注文を待ってますから」
しっかりしてるなぁ!
まあ、どこで宝箱とかゲットしたらな。
で、最後に確認しておくべきことを俺は聞いた。
〈で……本当についてくるつもりか?〉
そう。
アルメルは、なんとクラクラを助けに行く俺についてくると言い出したのだ。
あんなにリビングアーマーや、ドラゴンのことを怖がってたのに。
どういう心境の変化だ……。
「当然です! その鎧のメンテナンス、誰がするんですか!」
突然鼻息荒く言ってくるアルメル。
「前の鎧なんて、サビサビのボロボロだったじゃないですか! あんなんでドラゴンと戦おうだなんて無茶・無理・無謀ですよ!」
テンション変わりすぎでしょこの人……。
しょうがないじゃん、あの鎧、ダンジョンで拾ったやつなんだから。
しかし身体にしてた俺ですら気付かなかったが、あれはひどい状態だったらしい。
サビがあちこちに出てて。
接続用のベルトやなんかもボロボロで。
ドワーフの鍛治師としては気になって仕方なかったらしい。
「それに……クラクラさんだってこの街を助けるために戦ってくれたんです。見捨てるなんて、できませんよ」
…………まったく。
なんだかんだいっていい人なんだな。
しかしすっかりクラクラって名前が定着しつつある。
ちゃんとした名前なんだっけ……?
………………えーと。
ま、まあいいや。
そろそろ冒険者ギルドに行こう。
ロロコの方の準備もできてるはずだ。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。


最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。
今年で33歳の社畜でございます
俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました
しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう
汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。
すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。
そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる