84 / 286
第2章 バリガンガルド編
73 カメのバカ!
しおりを挟む
ドラゴンを封印するため接近を試みるリビングアーマーの俺五十四体。
それが、ドラゴンの咆哮で一斉にひび割れた。
ええええええ!?
話違くない?
十分は保つって話だったよね?
〈どういうことだよ?〉
と俺はエドに問う。
と言っても、ドラゴンに向かう鎧が、ではないよ。
バリガンガルドの城壁の上にみんなと一緒に残っている普通の鎧の俺だ。
対するエドの答え。
「十分というのは概算です。もっと保つかもしれませんし保たないかもしれません」
ダメだ!
くその役にも立たねえ!
マズいなぁ……。
前に鎧が壊れたときは、その破片は俺の意思では動かせなくなった。
細かく割れると、鎧パーツとは認識されなくなるらしいのだ。
ドラゴンの咆哮でできたひび割れはかなり細かい。
このサイズで完全に割れたら、操作はきっと不可能だ。
つまり、この鎧五十四体が一斉に役立たずになるってわけ。
そうなる前になんとかしないと……。
五十四体のオレはなるべく静かに走る。
ドラゴンを刺激しないように。
――ガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン!
……うるせえなあ!
いや自分なんだけどさ!
慣れると気にならなくなってくるんだけど。
気になるときはほんと気になるな。
ぎろり、とドラゴンがオレを睨んでくる。
あー……すみませんね。
うるさいのが気に障りましたかね?
――グオオオオオォォォォオオオオオオオオオオオアアアアアアアア!
ビシビシビシッ!
ぎゃー!
またヒビが入ったー!
何体かの腕がもげて落ちてしまった。
脚が折れてしまったのも何体か。
くそ……っ。
ほんと厄介だな。
〈仕方ねえな……〉
オレはその場に立ち止まり剣を構える。
そしてドラゴンを睨みつける。
――グオオオオオ……。
自分の目の前の鎧軍団を見て、ドラゴンは唸り声を上げる。
なんとなく、怪訝そうだ。
そりゃ不思議だろうな。
ただの人間(にしか見えないだろう)が剣で挑んできてる。
魔法を使ってくるわけでもない。
どう考えても、自分を倒せる相手じゃないんだから。
けど、実はドラゴンに向かってるのは全部おとり。
本命は、さっきヒビが入って脚が折れてしまった中の一体だ。
そいつは今、ドラゴンの背中にいる。
フヨフヨ浮きながら頭目指して直進中だ。
そう、オレはちょっとだけ空を飛ぶことができる。
飛行ってレベルじゃないけどね。
このくらいなら鎧があっても変じゃないよねってくらいの高さまでならいける。
前にもこうやってカエルと毒の沼を突破したことがあったな。
あれからまだ二日くらいしか経ってないのか?
なんか、はるか昔の話みたいに感じるな。
とにかくこの技でドラゴンの頭に接近中。
そしてこの一体は例の板を持っている。
ドラゴンを封印するための魔法陣が描かれた金属板。
これをドラゴンの口に放り込めば勝利だ。
――グオオオオオッ!
うぉ!
ドラゴンの背中が揺れた!
前脚を奮って、目の前にいる俺たちをなぎ払おうとしているのだ。
剣を構えていた俺たちはかわそうとする。
ぎゃー!
避けきれずに何体かふっとんだ。
くそ、でかいからって好き放題しやがって。
今に見てろよ。
幸いドラゴンの背中の俺は、浮いているので揺れの影響はない。
フヨフヨフヨフヨ、ドラゴンの首のところまでくる。
はっはっは。
でかいせいで、後ろにいるこのちっぽけな鎧になんて気付いてもいるまい。
――グオオオオオオオオオオッ!
イライラした様子で目の前の鎧軍団を吹っ飛ばしていくドラゴン。
ひび割れていたのがどんどんぶっ壊れていくけど、尊い犠牲だ。
最後にこの一体が頭にたどり着けばそれでいい。
――グオオオオオォォォォオオオオオオオオオオオアアアアアアアア!
ビシビシビシビシ!
やっべ、怒らせすぎた!
咆哮で一気にヒビが深くなる。
ちょっとした衝撃で今にも崩れそうだ。
しかしドラゴンの頭はもう目の前。
これならいける!
ドラゴンの背中側から迫る俺は、一気に前に回り込んだ。
手に持っていた金属板を掲げ、ドラゴンの口に放り込もうと――。
「危ない! リビタン殿!」
エルフのクラクラの声。
え、なんでクラクラがここに?
別の個体の目を向ければ、クラクラの他にも何人かがドラゴンの近くまで来ていた。
どうやら、亀モンスターたちの一部がパニクってこっちに来てしまったらしい。
それを追いかけているうちにこんな近くまで来てしまったと。
で。
その亀モンスターなんだけど。
そのうちの一体が偶然ドラゴンの頭の方に甲羅の砲台を向けていた。
〈え、ちょ……〉
ドラゴンに向けて金属板を放り込むのに集中していた俺は、避ける余裕なんかない。
――どがごおおおおおおおおおおおおおん!
キャノントータスの空気砲!
こうかはばつぐんだ!
すごい勢いの空気の塊が俺にぶち当たる。
ヒビだらけだった俺の身体は粉々に砕け散る。
ついでに、ドラゴンを封印するための金属板もバラバラになって吹き飛んだ。
………………カメのバカ!
それが、ドラゴンの咆哮で一斉にひび割れた。
ええええええ!?
話違くない?
十分は保つって話だったよね?
〈どういうことだよ?〉
と俺はエドに問う。
と言っても、ドラゴンに向かう鎧が、ではないよ。
バリガンガルドの城壁の上にみんなと一緒に残っている普通の鎧の俺だ。
対するエドの答え。
「十分というのは概算です。もっと保つかもしれませんし保たないかもしれません」
ダメだ!
くその役にも立たねえ!
マズいなぁ……。
前に鎧が壊れたときは、その破片は俺の意思では動かせなくなった。
細かく割れると、鎧パーツとは認識されなくなるらしいのだ。
ドラゴンの咆哮でできたひび割れはかなり細かい。
このサイズで完全に割れたら、操作はきっと不可能だ。
つまり、この鎧五十四体が一斉に役立たずになるってわけ。
そうなる前になんとかしないと……。
五十四体のオレはなるべく静かに走る。
ドラゴンを刺激しないように。
――ガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン!
……うるせえなあ!
いや自分なんだけどさ!
慣れると気にならなくなってくるんだけど。
気になるときはほんと気になるな。
ぎろり、とドラゴンがオレを睨んでくる。
あー……すみませんね。
うるさいのが気に障りましたかね?
――グオオオオオォォォォオオオオオオオオオオオアアアアアアアア!
ビシビシビシッ!
ぎゃー!
またヒビが入ったー!
何体かの腕がもげて落ちてしまった。
脚が折れてしまったのも何体か。
くそ……っ。
ほんと厄介だな。
〈仕方ねえな……〉
オレはその場に立ち止まり剣を構える。
そしてドラゴンを睨みつける。
――グオオオオオ……。
自分の目の前の鎧軍団を見て、ドラゴンは唸り声を上げる。
なんとなく、怪訝そうだ。
そりゃ不思議だろうな。
ただの人間(にしか見えないだろう)が剣で挑んできてる。
魔法を使ってくるわけでもない。
どう考えても、自分を倒せる相手じゃないんだから。
けど、実はドラゴンに向かってるのは全部おとり。
本命は、さっきヒビが入って脚が折れてしまった中の一体だ。
そいつは今、ドラゴンの背中にいる。
フヨフヨ浮きながら頭目指して直進中だ。
そう、オレはちょっとだけ空を飛ぶことができる。
飛行ってレベルじゃないけどね。
このくらいなら鎧があっても変じゃないよねってくらいの高さまでならいける。
前にもこうやってカエルと毒の沼を突破したことがあったな。
あれからまだ二日くらいしか経ってないのか?
なんか、はるか昔の話みたいに感じるな。
とにかくこの技でドラゴンの頭に接近中。
そしてこの一体は例の板を持っている。
ドラゴンを封印するための魔法陣が描かれた金属板。
これをドラゴンの口に放り込めば勝利だ。
――グオオオオオッ!
うぉ!
ドラゴンの背中が揺れた!
前脚を奮って、目の前にいる俺たちをなぎ払おうとしているのだ。
剣を構えていた俺たちはかわそうとする。
ぎゃー!
避けきれずに何体かふっとんだ。
くそ、でかいからって好き放題しやがって。
今に見てろよ。
幸いドラゴンの背中の俺は、浮いているので揺れの影響はない。
フヨフヨフヨフヨ、ドラゴンの首のところまでくる。
はっはっは。
でかいせいで、後ろにいるこのちっぽけな鎧になんて気付いてもいるまい。
――グオオオオオオオオオオッ!
イライラした様子で目の前の鎧軍団を吹っ飛ばしていくドラゴン。
ひび割れていたのがどんどんぶっ壊れていくけど、尊い犠牲だ。
最後にこの一体が頭にたどり着けばそれでいい。
――グオオオオオォォォォオオオオオオオオオオオアアアアアアアア!
ビシビシビシビシ!
やっべ、怒らせすぎた!
咆哮で一気にヒビが深くなる。
ちょっとした衝撃で今にも崩れそうだ。
しかしドラゴンの頭はもう目の前。
これならいける!
ドラゴンの背中側から迫る俺は、一気に前に回り込んだ。
手に持っていた金属板を掲げ、ドラゴンの口に放り込もうと――。
「危ない! リビタン殿!」
エルフのクラクラの声。
え、なんでクラクラがここに?
別の個体の目を向ければ、クラクラの他にも何人かがドラゴンの近くまで来ていた。
どうやら、亀モンスターたちの一部がパニクってこっちに来てしまったらしい。
それを追いかけているうちにこんな近くまで来てしまったと。
で。
その亀モンスターなんだけど。
そのうちの一体が偶然ドラゴンの頭の方に甲羅の砲台を向けていた。
〈え、ちょ……〉
ドラゴンに向けて金属板を放り込むのに集中していた俺は、避ける余裕なんかない。
――どがごおおおおおおおおおおおおおん!
キャノントータスの空気砲!
こうかはばつぐんだ!
すごい勢いの空気の塊が俺にぶち当たる。
ヒビだらけだった俺の身体は粉々に砕け散る。
ついでに、ドラゴンを封印するための金属板もバラバラになって吹き飛んだ。
………………カメのバカ!
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。
今年で33歳の社畜でございます
俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました
しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう
汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。
すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。
そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる