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第2章 バリガンガルド編

69 リビング戦隊アマージャー参上!

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 どうも、リビングアーマの俺です。
 どうも、リビングアーマの俺その2です。
 どうも、リビングアーマの俺その3です。
 どうも、リビングアーマの俺その4です。
 どうも、リビングアーマの俺その5です。

 五人揃って全員俺です!

 おいおい。
 腕だけの俺もいるのを忘れんなよ。

 自分にツッコミを入れてる場合じゃない。
 このままじゃ意味がわからないだろう。

 ラッカムさんも五体の俺を見て目を丸くしてる。

 なにがあったのか。
 ちょっと場所を移して、時間もちょっと遡ろう。

◆◇◆◇◆

 左脚の俺は、エドと一緒に冒険者ギルドの地下室に入った。

 あ、エドってのはチェインハルト商会の会長ね。
 ギルドに冒険者用の道具を提供している大きな組織。

 そんな組織のトップのわりにまだ若い、行けすかない感じの男。

 しかし彼は俺に敵対する気はないらしい。

〈これは……〉

 俺はその地下室に並んでいるものを見て驚いた。

 そこには、今俺のパーツになっているのと同じような鎧が大量に並べられていた。

 ところどころに裏側から打ち出した畝があって、強度がアップされている。

 たしか北方鎧だっけ?
 ヴォルフォニア帝国でよく使われる鎧らしい。

 それが部屋中にびっしり。
 たぶん五十体くらいあるんじゃないかな。

「チェインハルト商会が対ドラゴン対策用に用意していた魔導鎧です」

 魔導鎧?

「ドラゴンは激しい魔響震を引き起こします。魔響震は周囲の魔力を歪め、魔法の発動を妨害するんです。この鎧はそれを防ぐ仕掛けが施してあります。まあ、まだ試作段階ではありますが」

 あ。
 ひょっとしてさっきの地震で俺が意識を失ったのってそのせい?
 俺のベースは霊体で、魔力で鎧に定着してるようなものだから。

 前にダンジョンで起きた魔響震のときはグラグラする程度だったけど。
 ドラゴンが起こすのは相当激しいってことなんだろう。

 で、この鎧はそれを防いでくれると。

 なるほど……。

〈……ん、まさか、これを使ってドラゴンを倒せとか言うんじゃないだろうな〉

「いえいえ。そんな無茶は言いませんよ」

 なんだ、よかった――。

「封印してくれればそれで構いません」

〈けっきょく戦わせるつもりなんじゃねーか!〉

 冗談じゃねえよー。
 そのドラゴン、七つの街を滅ぼしたとか言ってたよね?

〈そんなの軍隊に任せればいいじゃん〉

「無理ですね。この辺りの帝国軍をかき集めてもドラゴンを抑えるなんてとてもとても」

〈軍隊にも無理なもんをリビングアーマー一体にやらせようとすんなよ!〉

「いえ、一体だけではないでしょう」

〈んあ?〉

 どういうことだ?
 俺以外にもリビングアーマーがいるのか?

 それともエドの部下に精鋭の魔法使い集団でもいるのかな?
 そいつらがこの鎧を着て手伝ってくれるとか?

 と思ったら全然違った。

「あなたがここにある鎧を全て操ればいいんです」

〈…………はぁ?〉

 なに言ってるんだこの人。

 たしかに俺は今まで鎧の各パーツに意識を分割させて操ってきた。
 鱗状鎧のそれぞれの板とか相当な数だった。

 けど、あれはあくまで一体分の鎧を分割してたからできたのだ。

 そう告げると、エドは首を振る。

「いえ、あなたにはすでにそれ以上のことができるはずですよ」

 そう言ってエドは本を開く。

 あ、それ、俺の冒険書。
 こいつが拾っといてくれてたのか。

 ……銅貨が入ってた袋はないっぽいな。
 俺の全財産……。
 ってまあ、拾ったものだからいいんだけどさ。

 それより冒険書だ。

 エドは俺のステータスのページを開いて言ってくる。

 ちなみに俺の現在のステータスはこんな感じだ。

『リビングアーマー LV.24 名前:なし
 HP:1409/1409
 MP:756/756
 物理攻撃力:321
 物理防御力:435
 魔法攻撃力:12
 魔法抵抗力:14
 スキル:霊体感覚+3、霊体操作+5、霊体転移+2、霊体分割+1
 称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者、生還者、決死者
 称号特典:魔力習得率アップLV.2、魔力変換率アップLV.2、恐怖耐性LV.4、魔力生命力変換LV.1、生命力魔力変換LV.1』

「霊体操作が5で霊体分割も表示されています。これなら充分、ここにある鎧を全て難なく操作できますよ」
〈マジで?〉
「ええ、マジです」

 ほんとかよ……。
 全然そんな気しないんだけどな。

 でも、考えてみたら、これまで複数の鎧を動かす機会自体なかったんだよな。

 ほとんどダンジョンの中だったし。

 じゃあ……できるのか?

〈……やってみる〉

 俺は意識を集中する。

 ノリとしてはこれまで別の鎧に意識を移したり、分割してきたのと同じだ。

 目の前にある鎧を自分の身体だと思い込むようにして……。

 うっ……。

 一瞬の酩酊感。
 その後すぐに視界が切り替わった。

〈…………おお!〉

 目の前に俺の左脚パーツがある。
 同時に、左脚パーツも目の前の立派な鎧の俺を見ている。

 うわ、変な感じ。
 しかし気持ち悪さはないな。

 自分の意識が複数の身体に分かれている感覚自体は慣れてるからな。

「ほらね、できたでしょう?」

 得意げに言ってくるエドがちょっとイラッとするが、彼の言った通りだった。

〈ああ、これなら……〉

 ヒュッ、と隣の鎧に意識をコピーする。
 お、コツを掴んだからか、今度は簡単だったな。

 よし。

 ヒュッ。
 ヒュッ。
 ヒュッ――。

 と意識を次々コピーして、俺はあっという間に部屋中の鎧を自分のものにする。

 すっげー!

 部屋にある鎧全部に俺の意識が宿った。

 全部で五十四体あった。
 さっき目で見たときはざっくりとしかわからなかったのにな。

 自分の身体になると数まで簡単に把握できるようになった。
 不思議な感じだ。

 まったく、どんどん人間離れしてくな、俺……。

〈けど……これでドラゴンを倒せるのか?〉

 俺が動かせるとしても、これじゃ鎧着た普通の人間が五十四人ってのと変わらない。

 俺は魔法を使えないしな。
 軽く浮いたりはできるけど。

 戦闘訓練は受けてないのでたぶん兵士より弱いぞ。

「さっきも言いましたが、倒す必要はありません。封印してくれればいいのです」

 そうだった。
 そう言ってたな。

 でも、その封印も俺できないんだけど……。

 と思ってたら、エドはなにか大きな板を渡してきた。

 盾にするとちょうど良さそうなサイズ。
 ただ、形は真四角であまり盾っぽくない。
 そして表面になんか複雑な魔法陣が描かれてる。

〈これは?〉

「魔力を封印する術式です。これを体内にほうり込めれば、ドラゴンの魔力がこの術式に吸収され、ドラゴンはふたたび眠りにつくでしょう」

 なるほど……。

 っていやあなた、簡単に言いますけどね?
 体内に放り込むって、それ口からってことだよね?
 他にないもんね?

 それドラゴンの口の正面に立たなきゃ無理でしょ。

 ドラゴンだもん、火吐いたりするんじゃないの?
 俺そんなの浴びたくないんだけど。

 そう言うと、エドは苦笑する。

「問題ないでしょう。あなたは痛みを感じませんし、その鎧は魔法に対する抵抗力もあります。だいたい、もし一体くらい消滅したとしても困らないでしょう」

 あ、そっか。

 たしかに。
 そう考えると、人間の魔法使いより俺はずっと適役だな。

「どうです? やっていただけますか?」

 エドの言葉に、俺は頷いた。

「わかった――」
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