転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼

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第2章 バリガンガルド編

EX8 盗賊とエルフの国の話

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「兄貴、やっぱ戻りましょうよぅ」

 ヴェルターネックの森のなか。
 あたりを不安げに見回しながらさまよい歩く男たちがいた。

 人数は四人。
 一人がリーダー格らしく、ちょっと立派な服装だ。
 と言っても、似たり寄ったりのボロ布ではあったが。

 リーダー格らしい男は、兄貴と呼んできた相手にぶっきらぼうに返す。

「戻ってどうするんだよ」
「そりゃあ、謝れば、許してくれますって」
「空き巣に入った上、牢を脱走したことをか?」

 実質なにも盗る前に捕まってしまったし、脱走の際に誰かを傷つけたわけでもない。
 それでも刑罰が厳しい土地なら、死罪もありうる。

「やっぱ盗賊なんて無茶だったんだよ……」

 別の男がぼやく。

 それに同意するように、最後の一人が頷いた。

「魔力がなくて冒険者になれないからってなぁ」
「こうやってさまよってるんじゃ冒険者と変わらないもんなぁ」
「だいたい、あの変な建物に入ったのがまずかった」
「ああ。喋るリビングアーマーなんてのがいて」
「やっぱ町のほうが安全だって話になって」
「空き巣に入った街の自警団の団長が、あのラッカムだもんな」
「たまったもんじゃねえよ」

「……言っとくがな」

 と、二人の部下の会話に、リーダーが青筋を浮かべて呻く。

「あの建物でリビングアーマーなんて見つけたのはおめえらだからな!」

 そう言われた部下の二人は顔を見合わせながら、

「だってあん時は兄貴が」
「そうだぜ、なんとしても金目のものを見つけてこいって言うから」

「あーうるせえうるせえ! おい」

 とリーダーはもう一人の部下に言う。

「街道はどっちなんだ」
「そんなのわかりませんよぅ」
「なんでわかんねえんだっ。お前マッパーだろ」
「マッパーだからって、来たことない場所で、どこに何があるかわかるわけないじゃないですかぁ」
「くそっ」

 リーダーは腹立ち紛れに足元の石を蹴飛ばした。

 ――ゲコゲコ。

「ん?」

 石が飛んでいった草むらが揺れて、のそりと。

 巨大なカエルが姿を現した。

「ぎゃあああ!」
「魔物だあああああ!」
「なななななんでダンジョンでもないのに!」

「おおお落ち着けお前ら! たかがカエルぐらい同時にかかればなんとか――」

 ――べしゃ!

 じゅうううううううう……。

 とカエルが吐いた毒液が足元の草を溶かしていく。
 それを見て、盗賊たちは一斉に青ざめる。

「逃げろおおおお!」
「待ってくれ兄貴いいいいい!」
「置いてかないでくれええ!」
「うわあああああ!」

 情けない悲鳴をあげながら、盗賊たちはひたすら走り続ける。

◆◇◆◇◆

 そうしてひたすら森をさまよい歩き、数日が経った。
 時には動物を狩り。
 時には木の実をかじり。
 時には魔物に襲われて。

「お、俺はもうだめだよぅ」
「バカ言え! 諦めるんじゃねえ!」
「俺ももう限界だ……」
「くそっ、冗談じゃねえぞ」
「俺もダメだ。集落の幻が見えてきた……」
「しっかりしろ! 集落なんかどこにも――ん?」

 と、リーダーは顔を上げる。

「む、村だ……」

 幻ではなかった。
 森が途切れた先に、それなりの規模の集落があった。

「おいお前ら、ここで休んでろ。いま水と食料を分けてもらってきてやる」

 一番体力の残っているリーダーは、単身村へと向かって歩いていく。

 よそ者に快く分けてもらえるとは限らない。
 だが、仲間のためなら、たとえ奪ってでも手に入れる。
 その決意を固めて、彼は懐のナイフを握りしめた。

 ――もう二度と、あんな目に遭うのはごめんだからな。

 一瞬だけよぎる過去。
 飢えて死んでいく家族の顔を思い出し、すぐにそれを振り払う。

 そして彼は村に踏み込んだ。

 井戸の近くに村人が数人いた。
 彼は、まずは穏やかに声をかけようとして――。

「きゃっ!?」

 彼を見て、村人が悲鳴を上げた。

 ――エルフだと!?

 その尖った耳や特徴的な顔立ちから、すぐにそう分かった。

 ――マズい。エルフは排他的だし、人間を嫌ってる。食料なんか分けてもらえるはずがねえ。

 彼はとっさに判断して、手近にいる女エルフを人質にしようと決める。

 懐からナイフを抜き放ち、反対の手で女を捕まえようと――

「しまっ……」

 足元の石に躓いてバランスを崩した。
 空腹でなければ避けられただろうミス。

 態勢を立て直そうとした時には手遅れだった。
 彼はそのまま地面に倒れ伏す。

 そして。

「なんだ!」
「何事だ!」

 さっきの悲鳴を聞きつけたのだろう。
 村の奥から男エルフたちが駆けつけてきた。

 ――くそ、まずったな……。

 彼は歯噛みする。

 部下たちが見つからなければいいが……と願いながら。

 最後の緊張の糸が切れ、彼は意識を失った。
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