転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼

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第2章 バリガンガルド編

59 リビングアーマーだとバレました

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「お、おのれ亀ども! よくもリビタン殿を!」

 怒りの声をあげて立ち止まろうとするクラクラを、ロロコが止める。

「な、なぜ止めるのだロロコ殿! そなたの仲間が殺されたのだぞ!」

 と腕に抱えた俺の兜を無念そうに抱くクラクラ。

 まあそうなるよな。
 俺がリビングアーマーだということは、クラクラには言いそびれていた。
 それで、頭が亀の空気砲で吹っ飛べば、死んだと思うだろうな。

「落ち着いて、クラクラ」

 とロロコが言う。

「リビタンは死んでない」
「死んでない? バカな! こんな状態で生きていられるわけが――」
〈あ、どうも〉
「ぎゃあああああああ!?」

 頭なしの身体で彼女と並走して、手を上げてみせると、彼女は絶叫した。

「ゆ、ゆゆゆゆ幽霊!」
〈いや、違うから〉
「落ち着いてクラクラ。リビタンはリビングアーマー」
「リリリリリビングアーマーだとっ!?」

 俺とロロコの説得に、ますます混乱していくクラクラ。

 たしかこの世界では、人間みたいに喋れるリビングアーマーはいないんだっけ?
 まあ俺だって、あの亀たちが突然しゃべりだしたらビビるもんなぁ……。

「し、死んでないならよかったが、リビタン殿がモンスターだったとはっ」

 クラクラは抱えた兜と、兜のない俺を交互に見ながら戸惑っている。

「いったい私はどうすれば……」
「とりあえず逃げる」
〈異議なし〉

 ロロコと俺は口々に告げる。
 なにしろキャノントータスは相変わらず空気砲をバカスカ撃ってきてるからな。
 クラクラも、その様子を見て頷いた。

 俺たち三人は全力疾走で森の中に飛び込んだ。

◆◇◆◇◆

「このへんまでくればもう大丈夫だろう」

 クラクラが砂浜のほうを振り返りつつ言った。

 確かにもう空気砲の攻撃はないし、亀たちも追ってはこなかった。

〈助かった……〉
「亀の肉、手に入れられなかった。残念」

 ロロコは相変わらずだな……。

〈ところでクラクラ。俺の兜を返してもらっていいか〉

 兜はずっと彼女が抱えたままだった。
 けっこうぎゅっと抱えてるので、胸の感触がずっと頭にある感じ。

「あ、わ、す、すまぬっ!」

 クラクラは兜を返してくれる。
 胸の件は気づいてないっぽいな。
 言わないでおこう。

「…………(じっ)」
〈ど、どうしたロロコ〉
「……べつに」

 ……不満そうだ。
 自分の胸が小さいのが気になるのか。
 俺が顔に出てたのか――ってそんなわけないな。
 いや、ロロコならリビングアーマーの俺の顔色もわかるかもしれない……。

「落ち着いたところで、改めて問おう。リビタン殿、そなたは何者なのだ」

 クラクラが言ってきた。
 よかった、話題がそれる。

 クラクラは言葉どおり、かなり落ち着いた様子だ。
 これなら話しても大丈夫か。

 俺はごく大雑把に自分のことを説明する。
 元は人間だったが、いろいろあってリビングアーマーになってしまった――と。

 転生やら異世界やらって話はしなかった。
 前にロロコに説明しようとしたけど、通じなかったしな。

「なるほど……」

 クラクラは俺の話を聞き終わると、そう呟いた。

〈あまり驚かないんだな〉
「いや、驚いてはいる。ただ、事実は事実として受け入れるしかなかろう」

 よかった……。
 これで『魔物め叩き斬ってやる!』とか言われたらどうしようかと思った。

「ところで、リビタン殿はやはり、人間に戻る方法を探して旅をしているのか?」
〈え……?〉

 問われて、俺は返事に窮してしまった。

 んーどうなんだろ。
 戻りたいかって言われたら人間に戻りたいとは思う。
 ただ、積極的にその方法を探すとなると、別に……って気持ちもあるな。
 どうせ異世界だし。
 この身体で困ってるわけでもないし。

 そもそも、そんなことを考える余裕が今までなかったからな。
 ずっと洞窟さまよって、魔物に追われ続けてたわけだし。

〈わかんないな……とりあえず、街に着いたら考えようと思う〉

「そうか……我らに手伝えることがあれば何でも言ってくれ」
〈わかった……なんかあったら、遠慮なく頼らせてもらうぜ〉

 ん?
 ロロコが不意に視線を動かした。
 耳もピコピコ動いてるな。

〈どうしたロロコ?〉
「音が聞こえる」
〈亀の次はなんだ? すっぽんか? トカゲか?〉
「ううん。これは――馬車の音」

 なぁんだ馬車か……。

 …………。
 ………………馬車!?

 ってことは――人が近くにいる!
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