転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼

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第2章 バリガンガルド編

51 バッター、四番、トカゲウオ

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 トカゲウオの尻尾は、魚の尾びれみたいに平べったく広がってる。

 その尻尾で、あの野郎、俺が投げた小石を打ち返しやがった。

 おいおい。
 そんな当たり判定の広いバットとか反則じゃありません?

 なんてモンスター相手に言っても仕方ない。
 ここはルール無用の地獄甲子園。
 そもそも野球じゃないけどね。

〈くそっ〉

 俺は休まず小石を投げ続けるが、そのほとんどが打ち返されてしまう。
 こっちに飛んでこないのがせめてもの救いだ。
 尻尾バットはそこまで狙いが正確じゃないみたいだな。

 しかし、余裕が出てきたのか、また突進攻撃をしようとしてくる個体が現れる。

 ロロコがナイフや炎魔法で牽制するが、本当に牽制だけだ。
 トカゲウオどもは簡単にかわしてしまうので当たらない。

 それなら……。

〈ロロコ、魔法は抑えろ〉
「どうするの?」
〈俺が動きを止める。一体ずつ仕留めよう〉
「……わかった」

 ロロコは頷く。
 俺がどうするかはわからないだろうに。
 ずいぶん信用されてるもんだ。

 いいぜ。
 相棒の期待にはちゃんと応えてやらないとな。

〈おりゃ!〉

 俺はまた小石を拾って、腕を回転させる。

 ヒュゴ!

 バシッ!

 飛んできた小石を、トカゲウオの尻尾バットが打ち返す!
 と、見せかけて!

 がしっ!

 ――ボロボロボロボロ!?

 ふっふっふ。
 捕まえたぜ。

 俺は小石と一緒に、手甲を飛ばしたのだ。
 そして、尻尾に接触すると同時、それをつかんでやった。

〈ロロコ!〉
「ん」


「ファイア・アロー!」


 トカゲウオはそれをかわそうとするが、残念、俺ががっしり掴んでるんだな。
 炎の矢がトカゲウオを撃ち抜く!

 よし、いけるぞ!

 俺は即座に手甲を移動させ、元の通り腕パーツにはめる。
 そしてふたたび小石を拾って――。

 ヒュゴ!

 ――ボロボロボロボロ!

 警戒したのか、トカゲウオは打ち返さずにかわした。

 おーっとまた残念!
 今度は手甲は飛ばしてないんだな!
 オレはすかさず次の小石を投げつける!

 ヒュゴ!
 ビシッ!

 小石にぶつかって動きを止めるトカゲウオ。
 そこにロロコがふたたびファイア・アロー。

 やったぜ、二匹目!

 ふっふっふ。
 俺が毎回手甲を飛ばすといつから勘違いしていた?

 小石のサイズは様々だ。
 握った状態の手甲と見分けなどつかないだろう。

 くくく。
 どんどん行くぜ?

 手甲、小石、小石、手甲、手甲、小石。
 小石――と見せかけて、遅れて手甲!

 トカゲウオたちはフェイントに対応しきれず動きを止め、炎魔法に倒されていく。

 数も半分くらいに減って、残り十匹くらい。
 これならなんとかなるか。

 ん?

 ――ボロボロボロボロ!

 一匹のトカゲウオが、鳴き声とともに前に出てきた。

 他のやつより少し立派な背びれと尾びれを持ってる。
 この群れのボスだろうか?

 そいつは俺を見ると、尻尾を軽く振ってみせた。

 なんだ、勝負しようってのか?
 いいぜ。
 俺も元人間だ。
 スポーツマンシップにのっとって、正々堂々フェアプレイといこうじゃないか。

 俺は、手近な小石に近づくと、腕を回転させ――

 ――ボボボボボロロロロロロガアアアアア!!!

 ――ギャーーー!!

 いきなり大口開けて突っ込んできやがった!
 ちくしょう、フェアプレイするんじゃなかったのかよ!

 俺はとっさに身をかわす。

 すると。

 ――ボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロ!

 ボスを中心にひとかたまりになって。
 トカゲウオたちは一斉に逃げ出した。

〈…………あー、びっくりした〉

 どうやら、俺たちを襲うのがわりに合わないと思ったんだろう。
 ボスは、逃げる隙をつくためのフェイントだったみたいだな。

 なんにせよ、助かった……。
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