58 / 286
第2章 バリガンガルド編
51 バッター、四番、トカゲウオ
しおりを挟む
トカゲウオの尻尾は、魚の尾びれみたいに平べったく広がってる。
その尻尾で、あの野郎、俺が投げた小石を打ち返しやがった。
おいおい。
そんな当たり判定の広いバットとか反則じゃありません?
なんてモンスター相手に言っても仕方ない。
ここはルール無用の地獄甲子園。
そもそも野球じゃないけどね。
〈くそっ〉
俺は休まず小石を投げ続けるが、そのほとんどが打ち返されてしまう。
こっちに飛んでこないのがせめてもの救いだ。
尻尾バットはそこまで狙いが正確じゃないみたいだな。
しかし、余裕が出てきたのか、また突進攻撃をしようとしてくる個体が現れる。
ロロコがナイフや炎魔法で牽制するが、本当に牽制だけだ。
トカゲウオどもは簡単にかわしてしまうので当たらない。
それなら……。
〈ロロコ、魔法は抑えろ〉
「どうするの?」
〈俺が動きを止める。一体ずつ仕留めよう〉
「……わかった」
ロロコは頷く。
俺がどうするかはわからないだろうに。
ずいぶん信用されてるもんだ。
いいぜ。
相棒の期待にはちゃんと応えてやらないとな。
〈おりゃ!〉
俺はまた小石を拾って、腕を回転させる。
ヒュゴ!
バシッ!
飛んできた小石を、トカゲウオの尻尾バットが打ち返す!
と、見せかけて!
がしっ!
――ボロボロボロボロ!?
ふっふっふ。
捕まえたぜ。
俺は小石と一緒に、手甲を飛ばしたのだ。
そして、尻尾に接触すると同時、それをつかんでやった。
〈ロロコ!〉
「ん」
「ファイア・アロー!」
トカゲウオはそれをかわそうとするが、残念、俺ががっしり掴んでるんだな。
炎の矢がトカゲウオを撃ち抜く!
よし、いけるぞ!
俺は即座に手甲を移動させ、元の通り腕パーツにはめる。
そしてふたたび小石を拾って――。
ヒュゴ!
――ボロボロボロボロ!
警戒したのか、トカゲウオは打ち返さずにかわした。
おーっとまた残念!
今度は手甲は飛ばしてないんだな!
オレはすかさず次の小石を投げつける!
ヒュゴ!
ビシッ!
小石にぶつかって動きを止めるトカゲウオ。
そこにロロコがふたたびファイア・アロー。
やったぜ、二匹目!
ふっふっふ。
俺が毎回手甲を飛ばすといつから勘違いしていた?
小石のサイズは様々だ。
握った状態の手甲と見分けなどつかないだろう。
くくく。
どんどん行くぜ?
手甲、小石、小石、手甲、手甲、小石。
小石――と見せかけて、遅れて手甲!
トカゲウオたちはフェイントに対応しきれず動きを止め、炎魔法に倒されていく。
数も半分くらいに減って、残り十匹くらい。
これならなんとかなるか。
ん?
――ボロボロボロボロ!
一匹のトカゲウオが、鳴き声とともに前に出てきた。
他のやつより少し立派な背びれと尾びれを持ってる。
この群れのボスだろうか?
そいつは俺を見ると、尻尾を軽く振ってみせた。
なんだ、勝負しようってのか?
いいぜ。
俺も元人間だ。
スポーツマンシップにのっとって、正々堂々フェアプレイといこうじゃないか。
俺は、手近な小石に近づくと、腕を回転させ――
――ボボボボボロロロロロロガアアアアア!!!
――ギャーーー!!
いきなり大口開けて突っ込んできやがった!
ちくしょう、フェアプレイするんじゃなかったのかよ!
俺はとっさに身をかわす。
すると。
――ボロボロボロボロ!
――ボロボロボロボロ!
――ボロボロボロボロ!
ボスを中心にひとかたまりになって。
トカゲウオたちは一斉に逃げ出した。
〈…………あー、びっくりした〉
どうやら、俺たちを襲うのがわりに合わないと思ったんだろう。
ボスは、逃げる隙をつくためのフェイントだったみたいだな。
なんにせよ、助かった……。
その尻尾で、あの野郎、俺が投げた小石を打ち返しやがった。
おいおい。
そんな当たり判定の広いバットとか反則じゃありません?
なんてモンスター相手に言っても仕方ない。
ここはルール無用の地獄甲子園。
そもそも野球じゃないけどね。
〈くそっ〉
俺は休まず小石を投げ続けるが、そのほとんどが打ち返されてしまう。
こっちに飛んでこないのがせめてもの救いだ。
尻尾バットはそこまで狙いが正確じゃないみたいだな。
しかし、余裕が出てきたのか、また突進攻撃をしようとしてくる個体が現れる。
ロロコがナイフや炎魔法で牽制するが、本当に牽制だけだ。
トカゲウオどもは簡単にかわしてしまうので当たらない。
それなら……。
〈ロロコ、魔法は抑えろ〉
「どうするの?」
〈俺が動きを止める。一体ずつ仕留めよう〉
「……わかった」
ロロコは頷く。
俺がどうするかはわからないだろうに。
ずいぶん信用されてるもんだ。
いいぜ。
相棒の期待にはちゃんと応えてやらないとな。
〈おりゃ!〉
俺はまた小石を拾って、腕を回転させる。
ヒュゴ!
バシッ!
飛んできた小石を、トカゲウオの尻尾バットが打ち返す!
と、見せかけて!
がしっ!
――ボロボロボロボロ!?
ふっふっふ。
捕まえたぜ。
俺は小石と一緒に、手甲を飛ばしたのだ。
そして、尻尾に接触すると同時、それをつかんでやった。
〈ロロコ!〉
「ん」
「ファイア・アロー!」
トカゲウオはそれをかわそうとするが、残念、俺ががっしり掴んでるんだな。
炎の矢がトカゲウオを撃ち抜く!
よし、いけるぞ!
俺は即座に手甲を移動させ、元の通り腕パーツにはめる。
そしてふたたび小石を拾って――。
ヒュゴ!
――ボロボロボロボロ!
警戒したのか、トカゲウオは打ち返さずにかわした。
おーっとまた残念!
今度は手甲は飛ばしてないんだな!
オレはすかさず次の小石を投げつける!
ヒュゴ!
ビシッ!
小石にぶつかって動きを止めるトカゲウオ。
そこにロロコがふたたびファイア・アロー。
やったぜ、二匹目!
ふっふっふ。
俺が毎回手甲を飛ばすといつから勘違いしていた?
小石のサイズは様々だ。
握った状態の手甲と見分けなどつかないだろう。
くくく。
どんどん行くぜ?
手甲、小石、小石、手甲、手甲、小石。
小石――と見せかけて、遅れて手甲!
トカゲウオたちはフェイントに対応しきれず動きを止め、炎魔法に倒されていく。
数も半分くらいに減って、残り十匹くらい。
これならなんとかなるか。
ん?
――ボロボロボロボロ!
一匹のトカゲウオが、鳴き声とともに前に出てきた。
他のやつより少し立派な背びれと尾びれを持ってる。
この群れのボスだろうか?
そいつは俺を見ると、尻尾を軽く振ってみせた。
なんだ、勝負しようってのか?
いいぜ。
俺も元人間だ。
スポーツマンシップにのっとって、正々堂々フェアプレイといこうじゃないか。
俺は、手近な小石に近づくと、腕を回転させ――
――ボボボボボロロロロロロガアアアアア!!!
――ギャーーー!!
いきなり大口開けて突っ込んできやがった!
ちくしょう、フェアプレイするんじゃなかったのかよ!
俺はとっさに身をかわす。
すると。
――ボロボロボロボロ!
――ボロボロボロボロ!
――ボロボロボロボロ!
ボスを中心にひとかたまりになって。
トカゲウオたちは一斉に逃げ出した。
〈…………あー、びっくりした〉
どうやら、俺たちを襲うのがわりに合わないと思ったんだろう。
ボスは、逃げる隙をつくためのフェイントだったみたいだな。
なんにせよ、助かった……。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる