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第2章 バリガンガルド編

48 お・ぼ・れ・たー!?

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 ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる~~。

 うおおおおおおお!
 視界が超ゆれる!
 回転してる!
 目が回る!

 俺とロロコは洞窟に突然現れた激流に飲み込まれた。

 俺の手はロロコとがっちりにぎりあってるので、はぐれる心配はない。
 ただ、俺は二の腕パーツから先しかない状態。
 なので、水の勢いで、手首のところでぐるぐる回ってるってわけだ。

 視覚は手のひらにあるので、そこは回ってないんだけどね。
 気分的に、身体が回ってると、やっぱキツい。

〈ロロコ! 大丈夫か〉

 こくこくっ。

 と、俺の呼びかけにロロコは頷く。

 って、俺、なんで水中で声出せてるの!?

 ……ま、俺の声が普通じゃないのは知ってたけどね。
 明らかに、スピーカーから出てるみたいな音だもん。

 声、というか、音っていうのは振動だ。
 だから、水の中でも伝わるってのはわかる。
 普通の人間も、水中で喋って喋れないことはない。

 けど、人間は水の中じゃ呼吸できない。
 息を吸えなきゃ、それを吐いて声を出し続けるのは無理ってわけだ。

 俺はその呼吸をしてないんだよな。
 なんていうか、本体である霊体を震わせて声を出してるんだと思う。
 だから、水中でも問題なく発音できたんだ。

 つまり、俺はいくらこの激流の中にいても、溺れ死にもしないわけだ。

 けど、ロロコはそうはいかない。

 なんとか、抜け出す方法は……。

 ――ガゴンガゴンガゴン!

 ぎゃー!
 俺の腕が周りの壁にぶつかった!

 いま、この身体ヒビだらけなんだよ!
 そんな激しくぶつかったらバラバラに崩れちゃう!

 もっと、洗濯機のソフト洗いみたいに優しくして!

 ――ガンゴンガンゴンガンゴン!

 あっはい。
 無理っぽいですね……。

 くそ。
 ますます早く抜け出さないと!

 ツンツン。

〈ん? どうしたロロコっ〉

 って、ロロコと手握ってるから、手のひらの視覚じゃなにも見えねえ。

 視覚を移すか。

 前に、鱗状鎧の板を偵察に出すときに視覚を移動させたことがある。
 あの要領だ。

 ぬおおおおおおお……!

 ――よし、できた!

 手の甲側にもう一つ目ができた感じだ。

 その視覚でロロコを見る。
 彼女は、指を指している。
 その方向を見ると……。

〈水面っ!?〉

 そう。
 なんかゆらゆら揺らめいてる水面が見える。

 ということは、あそこから顔を出せば息ができる!

 だが、水の流れが速すぎて、ロロコは泳げないようだ。
 手足をばたつかせてはいるが、全然思うように動けていない。

 どうすれば……。

〈……そうだ!〉

 ロロコが「どうするの?」って顔で見てくる。

 ふっふっふ。
 こうするのだ!

 ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる~~!!

 流れでぐるぐる回転してた腕を、自分で逆に回す。

 これ、回ってたのは、二の腕パーツの付け根の部分のせいっぽいのだ。
 肩パーツとつながる部分の、軽く湾曲した、平べったい部分。
 そこが流れを受けて回ってた。

 そう。
 なんか、船のスクリューみたいじゃね?

 ってことは、俺の力で逆回転させれば、水を押し出せるってことじゃね?

 うおおおおおおおおおお!

 とは言っても、完全に流れに逆らうと効率が悪すぎる。
 激流を斜めに受け流す感じで。
 ただし、少しずつ上方へ。

 いいぞ!
 いけるいける!

 ロロコの泳ぎも、ちょっとずつ補助になってきた。

 俺とロロコは浮かび上がり――。

 ――バシャアアアアン!

 よっしゃ!
 成功!

「ぷはっ!」

 ロロコが息を吸う。
 よく頑張った!
 さあ好きなだけ呼吸しろ!

「あ」

〈あ?〉

 なんだよ。
 変わった深呼吸だな。

 と、ロロコが目を向けているほうを見る。

 そこは、ごく狭い空間だった。
 この辺りではちょっと高い位置にある。
 で、空気が溜まってることもあって、水が天井まで届かないんだろう。
 ちょっとした足場もある。

 その足場に、大量に。

 でっかいトカゲみたいなモンスターがいた。

〈――ぎゃああああああ!〉
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