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第2章 バリガンガルド編
47 洞窟ダンジョン(難しめ)
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リビングアーマー(右腕だけ)の俺と人犬族のロロコは、洞窟内を歩いてる。
いや、俺はフヨフヨ飛行してますけどね。
まー、いつまでもグダグダ悩んでてもしょうがないし。
幸い、目的だけはある。
この洞窟に落ちる直前、ロロコがラッカムに、
『帝国でここから一番近い冒険者ギルドに向かう』
と伝えたのだ。
まあちゃんと聞こえたかどうかはわからないけどね。
とりあえず、そこが目標地点ってことで。
先のことは、着いてから考える!
あ、ちなみにラッカムってのは、ロロコたちの集落の近くの街の住人。
で、その街の自警団長をやってる人。
ロロコたち人犬族にも、いろいろ気を配ってくれてたらしい。
脱走した人犬族たちは、ナントカの森の北にあるナントカ帝国を目指してる。
ラッカムなら、彼らをそこに連れていくか、その手配をしてくれるだろうと。
そういう期待もある。
そんなわけで、俺たちの目的地は、冒険者ギルドがある街……。
名前は、ええと……。
〈……なんだっけ〉
「バリガンガルド」
〈そうそう、バリバンバルド〉
「バリガンガルド」
〈ガリバンガッ――〉
ちくしょう!
なんで舌もないのにうまく発音できないんだ!
たぶん、ちゃんと正確に覚えてないからなんだろうな。
俺の発音って、頭に浮かべた文字が自動で出力される、みたいな感じだから。
「バリガンガルドは、ヴォルフォニア帝国最南端の都市」
〈そうだ、ヴォルフォニア帝国だ〉
「ヴェルターネックの森の手前にあって、森や洞窟ダンジョンで活動する冒険者の拠点」
〈そうだそうだ〉
ヴェルターネックの森ね。
その辺は覚えてきたぞ。
とにかく、そのなんとかガルドに向かいたいわけだ。
なんだけど……。
〈……また行き止まりだな〉
これで十回目か?
「十二回目」
そんなにか……。
そう。
この洞窟、やたらに複雑なのだ。
前にいたところはそこまででもなかったんだけどな。
後半のは、ワームが掘り進んでできた迷路だったから、ちょっと別だし。
今歩いてるあたりは、ワームの縄張りってわけでもないっぽい。
なんか、すごい硬い岩なんだよね。
これはワームも掘ったりできないだろう。
「ダイヤモンド・ワームっていうのもいるけど」
〈なんかすごそうだな〉
「歯がダイヤモンドだから、硬い岩も掘り進める」
〈マジかよっ!?〉
そんなのがいるんだったら、ここもその可能性が……?
「それはないと思う」
ロロコは首を横に振る。
「ダイヤモンド・ワームは帝国の北の土地にしかいない」
〈なら安心だな……〉
いや待てよ。
今まで、こんな感じの会話した直後に、モンスターが現れるってパターンあったよな。
〈…………〉
俺はちょっと停止し、身構える。
……なにも聞こえないな。
〈ふー〉
「どうしたの?」
〈フラグなのかと思って〉
「? 旗がどうかした?」
〈いや、気にしないでくれ〉
どうやら、今回は本当に出てこないらしいな。
〈……って、また行き止まりか〉
これで十三回目か?
本当に出口あるんだろうな。
「弱いけど、風が吹いてるから、出口はあるはず」
それならいいんだが……。
――ゴオオオオオオオ。
ん?
「なにか聞こえる」
ロロコが犬耳を動かしながら言う。
俺も聞こえた。
まさか、やっぱりワームが現れるんじゃ……。
「違う。これは、水の音」
〈水?〉
……水だって?
……洞窟で?
そんなの、嫌な予感しかしないじゃないか!
〈逃げるぞ!〉
「どこへ?」
〈どこへって、そりゃ――〉
えーと……どこでしょう?
――ゴオオオオオオオブワシャアアア!
〈ぎゃー!〉
水!
それもすごい勢い!
しかも、俺たちの背後は行き止まり。
逃げる場所なんかあるか!
〈ロロコ!〉
「ん」
俺は慌ててロロコと手をつないだ。
こんなところではぐれたら堪ったもんじゃない。
そして、次の瞬間。
俺たちは凄まじい勢いの激流に飲み込まれた。
いや、俺はフヨフヨ飛行してますけどね。
まー、いつまでもグダグダ悩んでてもしょうがないし。
幸い、目的だけはある。
この洞窟に落ちる直前、ロロコがラッカムに、
『帝国でここから一番近い冒険者ギルドに向かう』
と伝えたのだ。
まあちゃんと聞こえたかどうかはわからないけどね。
とりあえず、そこが目標地点ってことで。
先のことは、着いてから考える!
あ、ちなみにラッカムってのは、ロロコたちの集落の近くの街の住人。
で、その街の自警団長をやってる人。
ロロコたち人犬族にも、いろいろ気を配ってくれてたらしい。
脱走した人犬族たちは、ナントカの森の北にあるナントカ帝国を目指してる。
ラッカムなら、彼らをそこに連れていくか、その手配をしてくれるだろうと。
そういう期待もある。
そんなわけで、俺たちの目的地は、冒険者ギルドがある街……。
名前は、ええと……。
〈……なんだっけ〉
「バリガンガルド」
〈そうそう、バリバンバルド〉
「バリガンガルド」
〈ガリバンガッ――〉
ちくしょう!
なんで舌もないのにうまく発音できないんだ!
たぶん、ちゃんと正確に覚えてないからなんだろうな。
俺の発音って、頭に浮かべた文字が自動で出力される、みたいな感じだから。
「バリガンガルドは、ヴォルフォニア帝国最南端の都市」
〈そうだ、ヴォルフォニア帝国だ〉
「ヴェルターネックの森の手前にあって、森や洞窟ダンジョンで活動する冒険者の拠点」
〈そうだそうだ〉
ヴェルターネックの森ね。
その辺は覚えてきたぞ。
とにかく、そのなんとかガルドに向かいたいわけだ。
なんだけど……。
〈……また行き止まりだな〉
これで十回目か?
「十二回目」
そんなにか……。
そう。
この洞窟、やたらに複雑なのだ。
前にいたところはそこまででもなかったんだけどな。
後半のは、ワームが掘り進んでできた迷路だったから、ちょっと別だし。
今歩いてるあたりは、ワームの縄張りってわけでもないっぽい。
なんか、すごい硬い岩なんだよね。
これはワームも掘ったりできないだろう。
「ダイヤモンド・ワームっていうのもいるけど」
〈なんかすごそうだな〉
「歯がダイヤモンドだから、硬い岩も掘り進める」
〈マジかよっ!?〉
そんなのがいるんだったら、ここもその可能性が……?
「それはないと思う」
ロロコは首を横に振る。
「ダイヤモンド・ワームは帝国の北の土地にしかいない」
〈なら安心だな……〉
いや待てよ。
今まで、こんな感じの会話した直後に、モンスターが現れるってパターンあったよな。
〈…………〉
俺はちょっと停止し、身構える。
……なにも聞こえないな。
〈ふー〉
「どうしたの?」
〈フラグなのかと思って〉
「? 旗がどうかした?」
〈いや、気にしないでくれ〉
どうやら、今回は本当に出てこないらしいな。
〈……って、また行き止まりか〉
これで十三回目か?
本当に出口あるんだろうな。
「弱いけど、風が吹いてるから、出口はあるはず」
それならいいんだが……。
――ゴオオオオオオオ。
ん?
「なにか聞こえる」
ロロコが犬耳を動かしながら言う。
俺も聞こえた。
まさか、やっぱりワームが現れるんじゃ……。
「違う。これは、水の音」
〈水?〉
……水だって?
……洞窟で?
そんなの、嫌な予感しかしないじゃないか!
〈逃げるぞ!〉
「どこへ?」
〈どこへって、そりゃ――〉
えーと……どこでしょう?
――ゴオオオオオオオブワシャアアア!
〈ぎゃー!〉
水!
それもすごい勢い!
しかも、俺たちの背後は行き止まり。
逃げる場所なんかあるか!
〈ロロコ!〉
「ん」
俺は慌ててロロコと手をつないだ。
こんなところではぐれたら堪ったもんじゃない。
そして、次の瞬間。
俺たちは凄まじい勢いの激流に飲み込まれた。
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