26 / 286
第1章 大洞窟ダンジョン編
23 ダンジョンごはん、ふたたび
しおりを挟む
『リビングアーマー LV.16 名前:なし
HP:557/887(546/673)
MP:329/553(265/356)
物理攻撃力:185(98)
物理防御力:176(112)
魔法攻撃力:3(3)
魔法抵抗力:3(2)
スキル:霊体感覚、霊体操作
称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者
称号特典:魔力習得率アップLV.1、魔力変換率アップLV.1、恐怖耐性LV.2』
◆◇◆◇◆
どうも、リビングアーマーです。
大コウモリ軍団を倒したら、レベルがまたアップしました。
称号と称号特典も増えたぜ!
でも習得率とか変換率とかよくわからないから詳しい解説が聞きたいな。
ねえ、ロロコさん?
――グツグツグツグツ。
「…………(じーっ)」
……ダメだ。
完全に料理に集中してる。
ここはふたたび、洞窟らしい洞窟のなか。
大コウモリの巣の底にあった針の山から逃げて、俺たちはここにいた。
いまどの辺なんだろうなー。
あの変な建物から、ネズミの群れに追われて階段を転げ落ちて。
大カマキリに追われて坂道を転げ落ちて。
大コウモリに追われて巣を落下して。
……追われて落ちてばっかだな。
ともかく、けっこう深いところまできてしまってる。
ちゃんと地上に出られるんだろうか……?
てな感じにリビングアーマーの俺が心配してる横で、犬耳っ娘のロロコは料理ですよ!
しかも君、いつの間に大コウモリの肉なんかゲットしてたの!?
したたかだなぁ。
――グツグツグツグツ。
けっこう本格的な料理っぽい。
1.コウモリの爪を削って作った器に水を入れ、下に炎魔法を発生させて熱します。
2.その間に、コウモリの肉を羽の皮膜で包んでおきます。
3.水が沸騰したら、2を入れて煮込みます。
3の煮込み時間が重要みたいだな。
ロロコは真剣な顔でコウモリ肉包みを取りだして、皿に盛っていく。
やがて、全部の包みが煮上がったらしい。
ロロコはそれをつまんで口に放る。
「…………!」
うわ、なんだこの幸せそうな顔。
〈そんなにうまいのか?〉
「爪から溶け出したエキスが煮汁に詰まってる。皮膜を噛むと、肉の食感と一緒にそれが口の中に広がる。最高」
うわ、なにそれ超うまそう!
水餃子みたいな感じなのかね。
ちくしょう、俺も食いたい!
この身体、食べる必要がないのはいいけど、食べたくても食べれないのはきついな。
ううー。
俺が物欲しそうな顔をしている横で、ロロコはコウモリ餃子をパクパク食べていく。
「そういえば、さっきなにか言ってた?」
はい!
何度も話しかけてましたよ!
ずっとスルーされてたけど。
「仕方ない。魔法使ったあとはお腹がすく」
へー、そういうもんなのか。
魔法使いって肉体労働なのね。
それはそれとして、俺はようやく聞きたいことを聞く。
まずは称号だ。
〈初級冒険者っていうのは?〉
「初級冒険者は、LV.15以上の冒険者の称号」
なるほど。
あれだけ倒して、ようやく駆け出し卒業ってわけか。
次は称号特典について。
〈魔力習得率アップっていうのは?〉
「魔力習得率アップは、モンスターを倒したときの、魔力を得る量が増える」
〈ん? どういうことだ?〉
「? 冒険者は近くで死んだモンスターの魔力を得てレベルアップする。知らない?」
〈知らなかった……〉
そうか。
それで、自分で倒してないモンスターの分もレベルが上がったりしてたのか。
〈じゃあ、戦ってないのに魔力を得てレベルが上がるなんてこともあるのか〉
「…………(こくこく)」
口に入れすぎだ……。
「巨竜が死んだ近くの村人が、全員冒険者になれるくらい強くなった伝説もある」
〈すげえな〉
つまり、全員竜退治と同等の経験値を得たってことだもんな。
〈それなら、世界中の人間が簡単にレベルアップしちゃいそうだけど〉
「それはない」
〈なんで?〉
「モンスターは基本、ダンジョンにしかいない」
そういうもんなのか。
「たまに魔響震の影響で外に出てくるときはあるけど、たいていは出てこない」
魔響震は、空気中に満ちてる魔力の揺れのことだったな。
そっか。
あの館にいた大ネズミたちも、それでダンジョンから出てきちゃったのか?
〈じゃあ、こっちの魔力変換率アップってのは〉
「それは魔力を魔法に変換する効率が上がる」
〈やっぱりか〉
前にその話を聞いてたから、そんな気がしてたんだよな。
〈じゃあ、ひょっとしてこれが上がれば、俺も魔法が使えるようになったり?〉
「もしかしたら。でも、魔法攻撃力と魔法抵抗力が低すぎるから、きびしい」
〈やっぱりか……〉
それじゃあ、なんのために魔力変換率アップがあるのかわからんな。
「ごちそうさまでした」
手を合わせるロロコ。
煮汁まできっちりいただいていた。
しかしすごいサバイバル能力だ。
今の料理、自分で用意したのは、水筒に持ってた水だけだもんな。
見たところ彼女の持ち物はその水筒と小さなナイフだけっぽい。
まあ、長期間の冒険ってつもりじゃなかったみたいだしな。
ちなみに俺の持ち物は――。
・冒険書
・銅貨っぽいコイン30枚
・ダンゴムシの装甲3枚
・鱗状鎧の板たくさん
って感じだ。
最後のは持ち物っていうか、身体の一部認定だけど。
けど、簡単に元通り鎧の形にはできないので、重ねて鎧の中にしまってある。
逆に、ダンゴムシ装甲は身体に取りつけてるけど、身体認定されない。
加工されてるかどうかが分かれ目みたいだな。
本当はいろいろ装着したりして試してみたいんだけど。
今はそんな状況でもない。
〈ところで――いま、俺たちどこにいるんだろうな〉
「わからない」
〈どうやったら、ダンジョンから出られるかな〉
「わからない」
〈…………困ったな〉
「困った」
ロロコは全然困ってるように聞こえない口調で言う。
ダンジョンの中。
俺たちは、完全に迷子になっていた。
◆◇◆◇◆
『プテラマウス
平均HP:650
平均MP:451
平均物理攻撃力:583
平均物理防御力:287
平均魔法攻撃力:25
平均魔法抵抗力:195
解説:洞窟に生息する、コウモリのようなモンスター。鋭い爪を備えた羽は魔法耐性がある。獲物を巣に追い込み、地面に落として餌にし、余った部分を産卵場の材料にする習性を持つ。』
HP:557/887(546/673)
MP:329/553(265/356)
物理攻撃力:185(98)
物理防御力:176(112)
魔法攻撃力:3(3)
魔法抵抗力:3(2)
スキル:霊体感覚、霊体操作
称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者
称号特典:魔力習得率アップLV.1、魔力変換率アップLV.1、恐怖耐性LV.2』
◆◇◆◇◆
どうも、リビングアーマーです。
大コウモリ軍団を倒したら、レベルがまたアップしました。
称号と称号特典も増えたぜ!
でも習得率とか変換率とかよくわからないから詳しい解説が聞きたいな。
ねえ、ロロコさん?
――グツグツグツグツ。
「…………(じーっ)」
……ダメだ。
完全に料理に集中してる。
ここはふたたび、洞窟らしい洞窟のなか。
大コウモリの巣の底にあった針の山から逃げて、俺たちはここにいた。
いまどの辺なんだろうなー。
あの変な建物から、ネズミの群れに追われて階段を転げ落ちて。
大カマキリに追われて坂道を転げ落ちて。
大コウモリに追われて巣を落下して。
……追われて落ちてばっかだな。
ともかく、けっこう深いところまできてしまってる。
ちゃんと地上に出られるんだろうか……?
てな感じにリビングアーマーの俺が心配してる横で、犬耳っ娘のロロコは料理ですよ!
しかも君、いつの間に大コウモリの肉なんかゲットしてたの!?
したたかだなぁ。
――グツグツグツグツ。
けっこう本格的な料理っぽい。
1.コウモリの爪を削って作った器に水を入れ、下に炎魔法を発生させて熱します。
2.その間に、コウモリの肉を羽の皮膜で包んでおきます。
3.水が沸騰したら、2を入れて煮込みます。
3の煮込み時間が重要みたいだな。
ロロコは真剣な顔でコウモリ肉包みを取りだして、皿に盛っていく。
やがて、全部の包みが煮上がったらしい。
ロロコはそれをつまんで口に放る。
「…………!」
うわ、なんだこの幸せそうな顔。
〈そんなにうまいのか?〉
「爪から溶け出したエキスが煮汁に詰まってる。皮膜を噛むと、肉の食感と一緒にそれが口の中に広がる。最高」
うわ、なにそれ超うまそう!
水餃子みたいな感じなのかね。
ちくしょう、俺も食いたい!
この身体、食べる必要がないのはいいけど、食べたくても食べれないのはきついな。
ううー。
俺が物欲しそうな顔をしている横で、ロロコはコウモリ餃子をパクパク食べていく。
「そういえば、さっきなにか言ってた?」
はい!
何度も話しかけてましたよ!
ずっとスルーされてたけど。
「仕方ない。魔法使ったあとはお腹がすく」
へー、そういうもんなのか。
魔法使いって肉体労働なのね。
それはそれとして、俺はようやく聞きたいことを聞く。
まずは称号だ。
〈初級冒険者っていうのは?〉
「初級冒険者は、LV.15以上の冒険者の称号」
なるほど。
あれだけ倒して、ようやく駆け出し卒業ってわけか。
次は称号特典について。
〈魔力習得率アップっていうのは?〉
「魔力習得率アップは、モンスターを倒したときの、魔力を得る量が増える」
〈ん? どういうことだ?〉
「? 冒険者は近くで死んだモンスターの魔力を得てレベルアップする。知らない?」
〈知らなかった……〉
そうか。
それで、自分で倒してないモンスターの分もレベルが上がったりしてたのか。
〈じゃあ、戦ってないのに魔力を得てレベルが上がるなんてこともあるのか〉
「…………(こくこく)」
口に入れすぎだ……。
「巨竜が死んだ近くの村人が、全員冒険者になれるくらい強くなった伝説もある」
〈すげえな〉
つまり、全員竜退治と同等の経験値を得たってことだもんな。
〈それなら、世界中の人間が簡単にレベルアップしちゃいそうだけど〉
「それはない」
〈なんで?〉
「モンスターは基本、ダンジョンにしかいない」
そういうもんなのか。
「たまに魔響震の影響で外に出てくるときはあるけど、たいていは出てこない」
魔響震は、空気中に満ちてる魔力の揺れのことだったな。
そっか。
あの館にいた大ネズミたちも、それでダンジョンから出てきちゃったのか?
〈じゃあ、こっちの魔力変換率アップってのは〉
「それは魔力を魔法に変換する効率が上がる」
〈やっぱりか〉
前にその話を聞いてたから、そんな気がしてたんだよな。
〈じゃあ、ひょっとしてこれが上がれば、俺も魔法が使えるようになったり?〉
「もしかしたら。でも、魔法攻撃力と魔法抵抗力が低すぎるから、きびしい」
〈やっぱりか……〉
それじゃあ、なんのために魔力変換率アップがあるのかわからんな。
「ごちそうさまでした」
手を合わせるロロコ。
煮汁まできっちりいただいていた。
しかしすごいサバイバル能力だ。
今の料理、自分で用意したのは、水筒に持ってた水だけだもんな。
見たところ彼女の持ち物はその水筒と小さなナイフだけっぽい。
まあ、長期間の冒険ってつもりじゃなかったみたいだしな。
ちなみに俺の持ち物は――。
・冒険書
・銅貨っぽいコイン30枚
・ダンゴムシの装甲3枚
・鱗状鎧の板たくさん
って感じだ。
最後のは持ち物っていうか、身体の一部認定だけど。
けど、簡単に元通り鎧の形にはできないので、重ねて鎧の中にしまってある。
逆に、ダンゴムシ装甲は身体に取りつけてるけど、身体認定されない。
加工されてるかどうかが分かれ目みたいだな。
本当はいろいろ装着したりして試してみたいんだけど。
今はそんな状況でもない。
〈ところで――いま、俺たちどこにいるんだろうな〉
「わからない」
〈どうやったら、ダンジョンから出られるかな〉
「わからない」
〈…………困ったな〉
「困った」
ロロコは全然困ってるように聞こえない口調で言う。
ダンジョンの中。
俺たちは、完全に迷子になっていた。
◆◇◆◇◆
『プテラマウス
平均HP:650
平均MP:451
平均物理攻撃力:583
平均物理防御力:287
平均魔法攻撃力:25
平均魔法抵抗力:195
解説:洞窟に生息する、コウモリのようなモンスター。鋭い爪を備えた羽は魔法耐性がある。獲物を巣に追い込み、地面に落として餌にし、余った部分を産卵場の材料にする習性を持つ。』
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる