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第1章 大洞窟ダンジョン編
23 ダンジョンごはん、ふたたび
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『リビングアーマー LV.16 名前:なし
HP:557/887(546/673)
MP:329/553(265/356)
物理攻撃力:185(98)
物理防御力:176(112)
魔法攻撃力:3(3)
魔法抵抗力:3(2)
スキル:霊体感覚、霊体操作
称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者
称号特典:魔力習得率アップLV.1、魔力変換率アップLV.1、恐怖耐性LV.2』
◆◇◆◇◆
どうも、リビングアーマーです。
大コウモリ軍団を倒したら、レベルがまたアップしました。
称号と称号特典も増えたぜ!
でも習得率とか変換率とかよくわからないから詳しい解説が聞きたいな。
ねえ、ロロコさん?
――グツグツグツグツ。
「…………(じーっ)」
……ダメだ。
完全に料理に集中してる。
ここはふたたび、洞窟らしい洞窟のなか。
大コウモリの巣の底にあった針の山から逃げて、俺たちはここにいた。
いまどの辺なんだろうなー。
あの変な建物から、ネズミの群れに追われて階段を転げ落ちて。
大カマキリに追われて坂道を転げ落ちて。
大コウモリに追われて巣を落下して。
……追われて落ちてばっかだな。
ともかく、けっこう深いところまできてしまってる。
ちゃんと地上に出られるんだろうか……?
てな感じにリビングアーマーの俺が心配してる横で、犬耳っ娘のロロコは料理ですよ!
しかも君、いつの間に大コウモリの肉なんかゲットしてたの!?
したたかだなぁ。
――グツグツグツグツ。
けっこう本格的な料理っぽい。
1.コウモリの爪を削って作った器に水を入れ、下に炎魔法を発生させて熱します。
2.その間に、コウモリの肉を羽の皮膜で包んでおきます。
3.水が沸騰したら、2を入れて煮込みます。
3の煮込み時間が重要みたいだな。
ロロコは真剣な顔でコウモリ肉包みを取りだして、皿に盛っていく。
やがて、全部の包みが煮上がったらしい。
ロロコはそれをつまんで口に放る。
「…………!」
うわ、なんだこの幸せそうな顔。
〈そんなにうまいのか?〉
「爪から溶け出したエキスが煮汁に詰まってる。皮膜を噛むと、肉の食感と一緒にそれが口の中に広がる。最高」
うわ、なにそれ超うまそう!
水餃子みたいな感じなのかね。
ちくしょう、俺も食いたい!
この身体、食べる必要がないのはいいけど、食べたくても食べれないのはきついな。
ううー。
俺が物欲しそうな顔をしている横で、ロロコはコウモリ餃子をパクパク食べていく。
「そういえば、さっきなにか言ってた?」
はい!
何度も話しかけてましたよ!
ずっとスルーされてたけど。
「仕方ない。魔法使ったあとはお腹がすく」
へー、そういうもんなのか。
魔法使いって肉体労働なのね。
それはそれとして、俺はようやく聞きたいことを聞く。
まずは称号だ。
〈初級冒険者っていうのは?〉
「初級冒険者は、LV.15以上の冒険者の称号」
なるほど。
あれだけ倒して、ようやく駆け出し卒業ってわけか。
次は称号特典について。
〈魔力習得率アップっていうのは?〉
「魔力習得率アップは、モンスターを倒したときの、魔力を得る量が増える」
〈ん? どういうことだ?〉
「? 冒険者は近くで死んだモンスターの魔力を得てレベルアップする。知らない?」
〈知らなかった……〉
そうか。
それで、自分で倒してないモンスターの分もレベルが上がったりしてたのか。
〈じゃあ、戦ってないのに魔力を得てレベルが上がるなんてこともあるのか〉
「…………(こくこく)」
口に入れすぎだ……。
「巨竜が死んだ近くの村人が、全員冒険者になれるくらい強くなった伝説もある」
〈すげえな〉
つまり、全員竜退治と同等の経験値を得たってことだもんな。
〈それなら、世界中の人間が簡単にレベルアップしちゃいそうだけど〉
「それはない」
〈なんで?〉
「モンスターは基本、ダンジョンにしかいない」
そういうもんなのか。
「たまに魔響震の影響で外に出てくるときはあるけど、たいていは出てこない」
魔響震は、空気中に満ちてる魔力の揺れのことだったな。
そっか。
あの館にいた大ネズミたちも、それでダンジョンから出てきちゃったのか?
〈じゃあ、こっちの魔力変換率アップってのは〉
「それは魔力を魔法に変換する効率が上がる」
〈やっぱりか〉
前にその話を聞いてたから、そんな気がしてたんだよな。
〈じゃあ、ひょっとしてこれが上がれば、俺も魔法が使えるようになったり?〉
「もしかしたら。でも、魔法攻撃力と魔法抵抗力が低すぎるから、きびしい」
〈やっぱりか……〉
それじゃあ、なんのために魔力変換率アップがあるのかわからんな。
「ごちそうさまでした」
手を合わせるロロコ。
煮汁まできっちりいただいていた。
しかしすごいサバイバル能力だ。
今の料理、自分で用意したのは、水筒に持ってた水だけだもんな。
見たところ彼女の持ち物はその水筒と小さなナイフだけっぽい。
まあ、長期間の冒険ってつもりじゃなかったみたいだしな。
ちなみに俺の持ち物は――。
・冒険書
・銅貨っぽいコイン30枚
・ダンゴムシの装甲3枚
・鱗状鎧の板たくさん
って感じだ。
最後のは持ち物っていうか、身体の一部認定だけど。
けど、簡単に元通り鎧の形にはできないので、重ねて鎧の中にしまってある。
逆に、ダンゴムシ装甲は身体に取りつけてるけど、身体認定されない。
加工されてるかどうかが分かれ目みたいだな。
本当はいろいろ装着したりして試してみたいんだけど。
今はそんな状況でもない。
〈ところで――いま、俺たちどこにいるんだろうな〉
「わからない」
〈どうやったら、ダンジョンから出られるかな〉
「わからない」
〈…………困ったな〉
「困った」
ロロコは全然困ってるように聞こえない口調で言う。
ダンジョンの中。
俺たちは、完全に迷子になっていた。
◆◇◆◇◆
『プテラマウス
平均HP:650
平均MP:451
平均物理攻撃力:583
平均物理防御力:287
平均魔法攻撃力:25
平均魔法抵抗力:195
解説:洞窟に生息する、コウモリのようなモンスター。鋭い爪を備えた羽は魔法耐性がある。獲物を巣に追い込み、地面に落として餌にし、余った部分を産卵場の材料にする習性を持つ。』
HP:557/887(546/673)
MP:329/553(265/356)
物理攻撃力:185(98)
物理防御力:176(112)
魔法攻撃力:3(3)
魔法抵抗力:3(2)
スキル:霊体感覚、霊体操作
称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者
称号特典:魔力習得率アップLV.1、魔力変換率アップLV.1、恐怖耐性LV.2』
◆◇◆◇◆
どうも、リビングアーマーです。
大コウモリ軍団を倒したら、レベルがまたアップしました。
称号と称号特典も増えたぜ!
でも習得率とか変換率とかよくわからないから詳しい解説が聞きたいな。
ねえ、ロロコさん?
――グツグツグツグツ。
「…………(じーっ)」
……ダメだ。
完全に料理に集中してる。
ここはふたたび、洞窟らしい洞窟のなか。
大コウモリの巣の底にあった針の山から逃げて、俺たちはここにいた。
いまどの辺なんだろうなー。
あの変な建物から、ネズミの群れに追われて階段を転げ落ちて。
大カマキリに追われて坂道を転げ落ちて。
大コウモリに追われて巣を落下して。
……追われて落ちてばっかだな。
ともかく、けっこう深いところまできてしまってる。
ちゃんと地上に出られるんだろうか……?
てな感じにリビングアーマーの俺が心配してる横で、犬耳っ娘のロロコは料理ですよ!
しかも君、いつの間に大コウモリの肉なんかゲットしてたの!?
したたかだなぁ。
――グツグツグツグツ。
けっこう本格的な料理っぽい。
1.コウモリの爪を削って作った器に水を入れ、下に炎魔法を発生させて熱します。
2.その間に、コウモリの肉を羽の皮膜で包んでおきます。
3.水が沸騰したら、2を入れて煮込みます。
3の煮込み時間が重要みたいだな。
ロロコは真剣な顔でコウモリ肉包みを取りだして、皿に盛っていく。
やがて、全部の包みが煮上がったらしい。
ロロコはそれをつまんで口に放る。
「…………!」
うわ、なんだこの幸せそうな顔。
〈そんなにうまいのか?〉
「爪から溶け出したエキスが煮汁に詰まってる。皮膜を噛むと、肉の食感と一緒にそれが口の中に広がる。最高」
うわ、なにそれ超うまそう!
水餃子みたいな感じなのかね。
ちくしょう、俺も食いたい!
この身体、食べる必要がないのはいいけど、食べたくても食べれないのはきついな。
ううー。
俺が物欲しそうな顔をしている横で、ロロコはコウモリ餃子をパクパク食べていく。
「そういえば、さっきなにか言ってた?」
はい!
何度も話しかけてましたよ!
ずっとスルーされてたけど。
「仕方ない。魔法使ったあとはお腹がすく」
へー、そういうもんなのか。
魔法使いって肉体労働なのね。
それはそれとして、俺はようやく聞きたいことを聞く。
まずは称号だ。
〈初級冒険者っていうのは?〉
「初級冒険者は、LV.15以上の冒険者の称号」
なるほど。
あれだけ倒して、ようやく駆け出し卒業ってわけか。
次は称号特典について。
〈魔力習得率アップっていうのは?〉
「魔力習得率アップは、モンスターを倒したときの、魔力を得る量が増える」
〈ん? どういうことだ?〉
「? 冒険者は近くで死んだモンスターの魔力を得てレベルアップする。知らない?」
〈知らなかった……〉
そうか。
それで、自分で倒してないモンスターの分もレベルが上がったりしてたのか。
〈じゃあ、戦ってないのに魔力を得てレベルが上がるなんてこともあるのか〉
「…………(こくこく)」
口に入れすぎだ……。
「巨竜が死んだ近くの村人が、全員冒険者になれるくらい強くなった伝説もある」
〈すげえな〉
つまり、全員竜退治と同等の経験値を得たってことだもんな。
〈それなら、世界中の人間が簡単にレベルアップしちゃいそうだけど〉
「それはない」
〈なんで?〉
「モンスターは基本、ダンジョンにしかいない」
そういうもんなのか。
「たまに魔響震の影響で外に出てくるときはあるけど、たいていは出てこない」
魔響震は、空気中に満ちてる魔力の揺れのことだったな。
そっか。
あの館にいた大ネズミたちも、それでダンジョンから出てきちゃったのか?
〈じゃあ、こっちの魔力変換率アップってのは〉
「それは魔力を魔法に変換する効率が上がる」
〈やっぱりか〉
前にその話を聞いてたから、そんな気がしてたんだよな。
〈じゃあ、ひょっとしてこれが上がれば、俺も魔法が使えるようになったり?〉
「もしかしたら。でも、魔法攻撃力と魔法抵抗力が低すぎるから、きびしい」
〈やっぱりか……〉
それじゃあ、なんのために魔力変換率アップがあるのかわからんな。
「ごちそうさまでした」
手を合わせるロロコ。
煮汁まできっちりいただいていた。
しかしすごいサバイバル能力だ。
今の料理、自分で用意したのは、水筒に持ってた水だけだもんな。
見たところ彼女の持ち物はその水筒と小さなナイフだけっぽい。
まあ、長期間の冒険ってつもりじゃなかったみたいだしな。
ちなみに俺の持ち物は――。
・冒険書
・銅貨っぽいコイン30枚
・ダンゴムシの装甲3枚
・鱗状鎧の板たくさん
って感じだ。
最後のは持ち物っていうか、身体の一部認定だけど。
けど、簡単に元通り鎧の形にはできないので、重ねて鎧の中にしまってある。
逆に、ダンゴムシ装甲は身体に取りつけてるけど、身体認定されない。
加工されてるかどうかが分かれ目みたいだな。
本当はいろいろ装着したりして試してみたいんだけど。
今はそんな状況でもない。
〈ところで――いま、俺たちどこにいるんだろうな〉
「わからない」
〈どうやったら、ダンジョンから出られるかな〉
「わからない」
〈…………困ったな〉
「困った」
ロロコは全然困ってるように聞こえない口調で言う。
ダンジョンの中。
俺たちは、完全に迷子になっていた。
◆◇◆◇◆
『プテラマウス
平均HP:650
平均MP:451
平均物理攻撃力:583
平均物理防御力:287
平均魔法攻撃力:25
平均魔法抵抗力:195
解説:洞窟に生息する、コウモリのようなモンスター。鋭い爪を備えた羽は魔法耐性がある。獲物を巣に追い込み、地面に落として餌にし、余った部分を産卵場の材料にする習性を持つ。』
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