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第1章 大洞窟ダンジョン編

13 はじめての勝利

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 ――シャアアアアアア!

〈ぬお!〉

 ガシャンガシャンガシャン!

 大カマキリの鎌攻撃をかわし、逆に上半身と下半身でプレス攻撃を加える。
 ダンゴムシ装甲で大カマキリの腕や身体をへし折ってやる。

 五匹の大カマキリと、リビングアーマーである俺の戦いは佳境を迎えていた。
 大カマキリの攻撃を俺は変則的な動きでかわす。
 カマキリのほうも宙を飛んだりして三次元的な攻撃を加えてくる。

 しかし、ボスらしき一匹の鎌を最初に折ってやったのがきいてるっぽい。
 どことなく、警戒しながらのアタックになってる。
 おかげで、五匹同時攻撃といえど、かわせないほどではなかった。

 ――ギシャアアアアアアア!

〈ほっ! はっ! そいやっ!〉

 ガシャアアアン!

 中国のドラみたいな音を鳴らして、胴体を叩き潰す。
 これで大カマキリは三匹が戦闘不能。死んでるかもしれない。
 一匹は生きてるが、脚を折ってやったので、地面にへたりこんでいる。

 残るは一匹――ひときわ大きいボスカマキリだ。

〈…………〉

 俺はカマキリの赤い目とにらみ合う。
 ボスカマキリはボスだけあって、肝が座ってるっぽい。
 鎌を片方折られながらも、戦意はまるで喪失していない。
 それでいて、冷静さもまだ保っている。
 身構え、こちらへ突っ込んでくるタイミングをはかっている。
 一瞬でも気を抜けば、やられるだろう。

〈…………〉

 っ!
 動いた!

 迷いのない一直線の動き。
 鎌は左下から斜めに振り上げてくる。

 チッ!
 たしかにそれは、俺が避けにくい軌道だ。
 もしかしたら、他の四匹との戦いを見て、それを学んだのかもしれない。
 やるじゃないか。
 だが――!

 俺は身体全体を倒して、鎌の攻撃をかわす。
 地面に完全に寝転がるような体勢になるので、次の動作は遅れる。
 カマキリは、それを狙っていたかのように、俺に覆い被さってくる。
 鎌をすぐにひるがえして、俺の身体に突きたてようと振り下ろしてくる!

 ニヤ、とカマキリの目が笑うように歪んだ気がした。

〈ぬおおおおおおおおお!〉

 けど、俺は狙っていたのだ。
 ここまで接近するチャンスを!

 俺は、左の肘パーツに引っ掛けていたダンゴムシールドを外す。
 それを、フリスビーみたいに回転させながら、目の前のカマキリの腹に投げつける!

 ――ギジャアアアアアアアアアア!?

 カマキリが悲鳴をあげた。
 俺は即座に這いずって後退する。

 ダンゴムシールドは、カマキリの胴にざっくりと突き刺さっていた。
 ぼたぼたぼた!
 と、緑色の液体が地面に落ちる。
 これで決まっただろ――

 ――ギュウオオオオオオオアアアア!

 マジかよっ!
 ボスカマキリは最後の力を振り絞って鎌を振り回してくる。

 もう自分が死ぬことはわかってるだろう。
 それでも、テリトリーへの侵入者を排除しようという精神力。
 本能のなせるわざだろうか。
 ちょっと、すげえと思った。

 けど、だからってやられてやるわけにはいかない。

〈おりゃあああああ!〉

 俺は上半身と下半身を分割。
 下半身が、鎌をよけながらスライディング。
 そして下半身に取り付けたダンゴムシ装甲で体当たりをする。
 ボスカマキリの胴に刺さったダンゴムシールドがさらに押し込まれる。

 ――ギジャアアアアアアアアアア…………。

 ボスカマキリの悲鳴は途中で途絶えた。
 その胴体は、完全に真っ二つになって、地面に転がっていた。

 勝った……。
 俺も胴体真っ二つだが、俺は元に戻る。
 モンスターといえど、普通の生き物はそうはいかないようだ。
 いや、本当に普通かどうかは知らんけどね。

 ボスカマキリはそのまま動かなくなった。
 俺は身体を元に戻すと、ダンゴムシールドを拾う。
 そして脚を折って動けなくなっていた最後の一匹も倒した。
 恨みはないけど、仲間を呼ばれたりしたら困るしね。

〈はぁ、はぁ……〉

 俺は浅めの呼吸を繰り返す。
 べつに息は上がってないんだけど。

 ……やった。
 ついに、自分の手でモンスターを倒した。
 これまではぶっちゃけ、偶然近くで死んでただけだったからね。

 目の前に横たわるカマキリたちの死体。
 達成感と。
 高揚感と。
 ほんのわずかな恐怖心。
 それらが混ざり合って、経験したことのない精神状態を生んでいた。

『モンスターの情報が追加されました』
『レベルが上がりました』
『変化したステータスを表記しました』

 お。
 冒険書の声が聞こえた。

 俺は息を吐く。
 いつまでも放心してるわけにもいかん。
 カマキリたちの仲間がやってくるかもしれないしな。
 それに、カマキリたちの血?で汚れた身体を綺麗にしたかった。

 ちょっと離れた湖岸で鎧を洗ってから、ステータスを確認することにしよう。

◆◇◆◇◆

『リビングアーマー LV.11 名前:なし
 HP:546/673(398/443)
 MP:265/356(260/325)
 物理攻撃力:98(65)
 物理防御力:112(75)
 魔法攻撃力:3(3)
 魔法抵抗力:2(1)
 スキル:霊体感覚、霊体操作
 称号:駆け出し冒険者、魔物討伐者
 称号特典:恐怖耐性LV.1』
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