悪役？婚約破棄？要らないなら俺が貰いますね！

8 side:エルネスト

神子とは。

神からの寵愛を一身に受けた者である。

太陽の光の様に、輝く金を身に宿す者である。

全てに愛され、全てを癒す者である。


金は神に愛された証。
愛されたが故に金の瞳、金の髪で僕はこの世に生を受けた。

僕が生まれた時、父様からはこの自分にも母様にも無かった色をひどく嫌がったらしい。突然生まれた金色に、母様が王族の誰かと不貞行為を働いたのだと信じて疑わなかった。

そんな事実は無いのに、信じてもらえず、酷く罵られ、母様はショックで体調を崩してそのまま流行り病にかかり亡くなった。

神子という事でアルベルトの婚約者になるまでは、ある程度の食事と寝床は与えられたが、殆ど居ないものとして扱われていた。

ずっと1人で、愛されることを知らずに育ってきた。だが、婚約者が出来た。将来の旦那様だ。初めて愛される期待に胸が高まる。

この人は絶対に僕を愛してくれる人。僕も精一杯この人を愛そう。

人の愛し方はわからないけど、ちょっとずつ、2人で。

そう思っていたのに。

違かった。

違う金色が来たから。

大丈夫。僕は髪も瞳も金色。彼女は髪は金色だけど瞳はピンクだった。大丈夫。あんな濁り混じりに大切な人は渡さない。

彼が彼女に笑いかけても、2人で腕を組んで歩いてても、頬を染めながら見つめ合ってても。

大丈夫。

婚約者は僕だもん。

卒業したら結婚して、愛してもらえる。

もう少し我慢すれば大丈夫。

大丈夫な筈だったのに。

僕は愛されなかったし、これからも愛される事はない。

どうして？

お前さえ居なければ僕が愛されていたのに。お前は色んな人に愛されてるからいいじゃないか。何で何も無い僕から奪うんだ。僕にはアルベルト様しか居ないのに。


返して


返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返して返せ


僕は、誰に愛されてたの？

神様なんて嘘ばっかり。


もう何も信じられない。

もう捨てられたく無い。

怖いよ。

一生愛してくれるって言われても、もう分からない。

多分貴方は真剣だった。もしかしたら本当に一生愛してくれるかも知れない。

でも、ごめんなさい。

貴方の愛を信じられない。

貴方は沢山の人を愛しているでしょう？

いつか別の人を愛してしまうかも知れないでしょう？

期待するのは疲れた。




体から流れ出る大量の赤で貴方の髪を思い出したよ。

体は冷えて感覚は無くなっていくけど、何となくそれが温かいのが分かる。

貴方に包まれてるみたいでほっとする。

今が生きていた中で1番幸せかも。




なんてね。