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2人目の神子が学園に通い始めてから1ヶ月が経った。
当初は礼儀がなってない平民に対する風当たりが強かったが、ひたむきで明るく、可愛らしい彼女に惹かれる人は多かった。男女問わず。
しかもアルベルトに気に入られているのは周知の事実だ。
愛称で呼び合う事も、傍にいることも、触れ合う事さえアルベルトは許しているのだ。それは皮肉にも、婚約者のエルネストが彼女の振る舞いに苦言を呈した時に公になった。
エルネストより、ベネデッタを庇ったことも。
暇さえあれば寄り添い合い、小声で笑い合う。平民と王子の叶わぬ恋。頭の固い老人貴族と違い、身分や伝統への固執が薄れつつある現代では、応援したくなる気持ちも分かる。
けど。
「アルベルト様、」
「はぁ…、なんだ、エルネスト。風紀云々の話なら聞き飽きたぞ。」
これは。
「けれど、アルベルト様の婚約者は私です。」
「だから何だ。務めは果たす。婚約は国が決めた事だからな。……学生の内くらい好きにさせてくれ。会話を楽しんでいるだけだ。」
余りにも酷い。
以前なら周りの目も気にしていたアルベルトがこんなにあからさまにエルネストの事を邪険にする事はなかった。
「会話を楽しんでるだけなら僕だって何も言いません!アルベルト様に腕が触れる程近づくのは無礼だと言ってるんです!!学園内でそんな娼婦のような真似をするなんて、」
アルベルトの口から、先程より重々しいため息が零れる。
「無礼なのはどちらだ。」
アルベルトは指でエルネストの顎を少し上に傾けさせ、強制的に目線を合わさせる。
「二度と俺の愛しい人を侮辱するな」
逆鱗に触れるとはこの事で。
守るようにベネデッタの肩を抱いて去っていくアルベルトに、エルネストは何も言えなかった。
あからさまな怒りを向けられた事が恐ろしくて。
アルベルトに嫌われてしまった事実が受け入れられなくて。
死ぬまで一生、自分が愛される事は無いんだと分かってしまった。
それ以降エルネストがアルベルトに直接何か言うことは無くなった。
当初は礼儀がなってない平民に対する風当たりが強かったが、ひたむきで明るく、可愛らしい彼女に惹かれる人は多かった。男女問わず。
しかもアルベルトに気に入られているのは周知の事実だ。
愛称で呼び合う事も、傍にいることも、触れ合う事さえアルベルトは許しているのだ。それは皮肉にも、婚約者のエルネストが彼女の振る舞いに苦言を呈した時に公になった。
エルネストより、ベネデッタを庇ったことも。
暇さえあれば寄り添い合い、小声で笑い合う。平民と王子の叶わぬ恋。頭の固い老人貴族と違い、身分や伝統への固執が薄れつつある現代では、応援したくなる気持ちも分かる。
けど。
「アルベルト様、」
「はぁ…、なんだ、エルネスト。風紀云々の話なら聞き飽きたぞ。」
これは。
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「だから何だ。務めは果たす。婚約は国が決めた事だからな。……学生の内くらい好きにさせてくれ。会話を楽しんでいるだけだ。」
余りにも酷い。
以前なら周りの目も気にしていたアルベルトがこんなにあからさまにエルネストの事を邪険にする事はなかった。
「会話を楽しんでるだけなら僕だって何も言いません!アルベルト様に腕が触れる程近づくのは無礼だと言ってるんです!!学園内でそんな娼婦のような真似をするなんて、」
アルベルトの口から、先程より重々しいため息が零れる。
「無礼なのはどちらだ。」
アルベルトは指でエルネストの顎を少し上に傾けさせ、強制的に目線を合わさせる。
「二度と俺の愛しい人を侮辱するな」
逆鱗に触れるとはこの事で。
守るようにベネデッタの肩を抱いて去っていくアルベルトに、エルネストは何も言えなかった。
あからさまな怒りを向けられた事が恐ろしくて。
アルベルトに嫌われてしまった事実が受け入れられなくて。
死ぬまで一生、自分が愛される事は無いんだと分かってしまった。
それ以降エルネストがアルベルトに直接何か言うことは無くなった。
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