悪役？婚約破棄？要らないなら俺が貰いますね！

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最近社交界での噂の種は殆ど神子についてだ。

2人同時になんで前代未聞だ、とか。今までも発見されていないだけで神子は居たのではないか、とか。

そして何よりも多く噂されているのが、どちらが第1王子と結婚するかだ。

1人は伯爵家３男。少し大人しすぎる印象だが、真面目で気立てもよく、礼節を重んじている様子が評価されている。３男とはいえ伯爵家。それに加えて見目も良い。神子でなければ婚約の申し出は多かっただろう。

しかし第1王子との婚約は既に決まっているが、恋仲のような仲睦まじい様子はあまり見られない。

そして更に男ときた。神力により男でも子をなせるとはいえ出生率は女性より断然低い上に、お互いに愛し合っていなければ子は成せないとか。

もう1人は平民の女性。最近王都の学園に通いだし、明るく前向きで、見た目も可愛らしく、一部生徒から人気が高い。

しかし一方で礼儀がなっていない、学が無さすぎる、殿下に対して馴れ馴れしいなどの声も聞こえる。

血を継ぐならば女性の方が良い。しかし王家と伯爵家の関係に容易くヒビを入れる訳には行かない。重鎮の中には王族の中に平民が混ざることに良い顔をしない者も多いだろう。

なんて。

｢本人達も参加してる夜会で嫌な感じだなぁ｣

視界の端にお偉いさんと話しているアルベルトと、その半歩後ろで作り笑いを貼り付けたエルネストを捉える。少し顔色が悪いな。

あ、目が合った。

｢セシリオ様、何かおっしゃいました？｣

エルネストに集中させてた意識は霧散し、声の主に視線を向ければ、先程声をかけた女性がコテンと首を傾げる。

互いに1人参加だったので、何となく声を掛けてみたのだが、早々に他の人のことを考えるなんて彼女に失礼なことをしてしまった。

｢リアス嬢、いえ、今夜も綺麗な花が多く咲いていて美しいなと。色とりどりの花に少し酔ってしまった様です。…少し抜けませんか？｣

｢あら、私には酔いませんの？｣

彼女がコテンと小首を傾げたとき、淡い水色の髪がひと房肩から滑り落ちる。

それにそっと指を通し、口ずければ彼女は顔を赤く染める。

｢貴女は甘い香りで男を誘う花と言うより、清廉な空気を纏った月の女神の様です。その月光で、私を癒してくれますか？｣

｢ふふっ、女神だなんて、バチが当たりそう｣

｢バチが当たるどころか、貴女の美しさの前では女神も裸足で逃げ出すでしょうね｣

満更でも無さそうに顔をほころばせる彼女の腰を抱き、手近な使用人に休憩室へ案内を頼む。

愛らしい娘との言葉遊びも、何も考えずにただ熱を分かち合うだけの行為も好きだ。

期待した眼差しの人を悦ばせ、強請られればそこに与える。施している様な感覚は癖になる。


行為自体に快感を感じたことなんてないけど。