27 / 28
27
しおりを挟む
俺達は今、4人で仲良く机を囲んでいた。
「えーと、お2人は知り合いで?」
少し苦めの、温かいお茶を頂いている。
「……」
「……」
影玄はジッと蕾を凝視したままで、口を動かす気配はない。
蕾は蕾で、そんな影玄の視線に耐えられないとでも言うように、顔を赤らめながらうつむくばかりだった。
「お~い?」
「昔、」
やっと影玄が口を開く。
「何処かで会った。……気がする。」
大丈夫かこの人。
「あ、そうです!あの!俺……えっと、影玄様に助けて頂いたことがあって、ええと……」
緊張のせいか、何を言っているかよくわからなかったが、おおよそこんな事を言っていた。(実際は全く呂律が回っていなかった)
「ああ、そうだ。北のほうの村の子供だったな。……すまなかった」
「何故謝るんですか、影玄様のお陰で俺は、」
「何それ、僕知らないんだけど?」
蕾の言葉を少年が遮る。
「単独任務で行った所だ。丁度俺が冒険者になって初めての長期クエに行った時だな」
その当時の話になり、ついていけなくなった俺は手持ち無沙汰だ。
適当に足をぶらぶらさせてみる。
そう言えば、この少年の名は何だろう。
影玄との関係も気になる。
───ステータス見るか。
蕾のも見たいなと思いつつ、心の中でステータスオープンとつぶや……こうとした。
「ちょっと!」
「うお!?」
少年が目と鼻の先に棍棒の様な物を突きつけてくる。
「今、何かしようとした?」
少年に問い詰められる。我々の業界ではご褒美です。
「イエ、ナニモ」
何故か気づかれてしまったので、ステータスが見られなかった。使えねぇとか思ってないからな。
「取り敢えず、クエストの先で助けたとかよくある事だし、それが冒険者の役目なんだから、そんな事で一々親しげにされても困るわけ。帰って。」
「少年、名前なんて言うんだ?」
見れなかったら直接聞けばいいじゃないって俺の中の女王様が言っているので、ナンパよろしく聞いてみる。
「親しげにされても困るって言ってるでしょ!?」
怒ってても可愛いぞと思いつつ茶を啜る。
「ムツネだ」
思いがけず影玄が教えてくれたので驚いた。ムツネというらしい少年は「勝手に教えないでよ!」とご立腹である。
「影玄様とムツネさんはどういった御関係ですか!?」
声をひっくり返しながらも蕾が尋ねる。
よく聞いてくれた。
「教えない。帰って。」
「……親密な関係?」
「だから勝手に教えないでって……ああ、もう、いいや。そういう事だから、影玄に付きまとうのはもうやめてくれる?特にあんたね!」
そう指をさされた蕾はショックに打ちのめされていた。
そりゃ好きな人に"親密な関係"の相手がいたら誰だってそうなるか。
すっかり抜け殻になってしまった蕾を抱え、俺はお暇する事にした。
居場所はわかったんだし、紫桜からのおつかいは成功だ。多分。相手に警戒されてしまったが。
「えーと、お2人は知り合いで?」
少し苦めの、温かいお茶を頂いている。
「……」
「……」
影玄はジッと蕾を凝視したままで、口を動かす気配はない。
蕾は蕾で、そんな影玄の視線に耐えられないとでも言うように、顔を赤らめながらうつむくばかりだった。
「お~い?」
「昔、」
やっと影玄が口を開く。
「何処かで会った。……気がする。」
大丈夫かこの人。
「あ、そうです!あの!俺……えっと、影玄様に助けて頂いたことがあって、ええと……」
緊張のせいか、何を言っているかよくわからなかったが、おおよそこんな事を言っていた。(実際は全く呂律が回っていなかった)
「ああ、そうだ。北のほうの村の子供だったな。……すまなかった」
「何故謝るんですか、影玄様のお陰で俺は、」
「何それ、僕知らないんだけど?」
蕾の言葉を少年が遮る。
「単独任務で行った所だ。丁度俺が冒険者になって初めての長期クエに行った時だな」
その当時の話になり、ついていけなくなった俺は手持ち無沙汰だ。
適当に足をぶらぶらさせてみる。
そう言えば、この少年の名は何だろう。
影玄との関係も気になる。
───ステータス見るか。
蕾のも見たいなと思いつつ、心の中でステータスオープンとつぶや……こうとした。
「ちょっと!」
「うお!?」
少年が目と鼻の先に棍棒の様な物を突きつけてくる。
「今、何かしようとした?」
少年に問い詰められる。我々の業界ではご褒美です。
「イエ、ナニモ」
何故か気づかれてしまったので、ステータスが見られなかった。使えねぇとか思ってないからな。
「取り敢えず、クエストの先で助けたとかよくある事だし、それが冒険者の役目なんだから、そんな事で一々親しげにされても困るわけ。帰って。」
「少年、名前なんて言うんだ?」
見れなかったら直接聞けばいいじゃないって俺の中の女王様が言っているので、ナンパよろしく聞いてみる。
「親しげにされても困るって言ってるでしょ!?」
怒ってても可愛いぞと思いつつ茶を啜る。
「ムツネだ」
思いがけず影玄が教えてくれたので驚いた。ムツネというらしい少年は「勝手に教えないでよ!」とご立腹である。
「影玄様とムツネさんはどういった御関係ですか!?」
声をひっくり返しながらも蕾が尋ねる。
よく聞いてくれた。
「教えない。帰って。」
「……親密な関係?」
「だから勝手に教えないでって……ああ、もう、いいや。そういう事だから、影玄に付きまとうのはもうやめてくれる?特にあんたね!」
そう指をさされた蕾はショックに打ちのめされていた。
そりゃ好きな人に"親密な関係"の相手がいたら誰だってそうなるか。
すっかり抜け殻になってしまった蕾を抱え、俺はお暇する事にした。
居場所はわかったんだし、紫桜からのおつかいは成功だ。多分。相手に警戒されてしまったが。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
堕ちた英雄
風祭おまる
BL
盾の英雄と呼ばれるオルガ・ローレンスタは、好敵手との戦いに敗れ捕虜となる。
武人としての死を望むオルガだが、待っていたのは真逆の性奴隷としての生だった。
若く美しい皇帝に夜毎嬲られ、オルガは快楽に堕されてゆく。
第一部
※本編は一切愛はなく救いもない、ただおっさんが快楽堕ちするだけの話です
※本編は下衆遅漏美青年×堅物おっさんです
※下品です
※微妙にスカ的表現(ただし、後始末、準備)を含みます
※4話目は豪快おっさん×堅物おっさんで寝取られです。ご注意下さい
第二部
※カップリングが変わり、第一部で攻めだった人物が受けとなります
※要所要所で、ショタ×爺表現を含みます
※一部死ネタを含みます
※第一部以上に下品です
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません
八神紫音
BL
やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。
そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる