ダイヤモンド・リリー

zzz

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17.side紫桜

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体が重い。息が苦しい。

まるで何かに押さえつけられているようだ。

視界は暗く、一向に明るくなる気配はない。

藻掻いても体は思うように動かない。自分の体ではない様なその感覚に冷や汗をかいた。

自分の非力さを痛感する瞬間とは、どうしてこんなにも己を惨めにするのか。何故こんなにも恐怖感を与えてくるのか。

ただ、僕を拘束するそれは、いつかの冷たい鎖でも縄でもなく、温かく柔らかいものだった。

思い出された恐怖感とは真逆の温度に戸惑いながらも、すっと腕を動かしてみる。

拘束されているのは頭から胴にかけてのようで、手足は自由に動いた。

僕の腕が回るか回らないかくらいの拘束具。抱き枕の様な形状。しかしそれにしては硬い骨の様なものが感じられたりする。まるで人の様な。



……人の様な?


「んー…暴れるなよ…」

「~っ!?」

拘束具、もとい、四悠は僕を抱きながら、眠そうな声を発する。

間延びしたそれは、四悠が寝ぼけている事をありありと告げてくる。

叩き起こすかとも思ったが、流石に寝ている人を起こすのは酷だ。

しかも四悠は昨日この世界に来たばかりで疲れているだろうから。


先程までの恐怖感はすっかり息を潜め、今は安堵と羞恥と幸福感がごちゃ混ぜになったような感情が僕の中で渦巻いていた。


何とか首を動かして、部屋に備え付けられた時計を見るとまだ6時前。もう一眠りしよう。

四悠の胸元に頭を戻すと、丁度唇が鎖骨に付きそうだった。


「…ん、」


愛の印の残し方など知らないから、触れるだけに留める。


何故そのような愛情表現をしたかったのかはわからない。

気が緩んでいただけかもしれない。

だが、それは相手が四悠だからでなく、ましては運命の相手だという理由でもない。


ただ単純に、四悠の纏う温かな雰囲気が似ていたのだ。

紫桜の、この世で最も敬愛する────
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